シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

Xで見かける「45歳狂う説」について私が思ったこと

togetter.com 最近、「45歳狂う説」なる言説をSNSで見かける。 曰く、45歳まで独身だと狂ってしまう、いやいや、既婚でも狂ってしまう、等々。 だいたい「45歳で」「狂う」ってなんだ? って話ではある。「狂う」とは世間の言葉で、精神医療のテクニカルター…

人間が政治や権力に弱い動物であるさまは、ツイッターを見ればよくわかる

twitterがXに変わってから1年以上が経った。 Xのタイムラインを眺めていると、政治家や政府広報や大企業のステートメントが流れてくる。とりわけ、リポストをとおしてドナルド・トランプ氏やイーロン・マスク氏のそれが目にうつると、「ここは政治の舞台なん…

私が経験した縦の旅行/横の旅行(らしきもの)

先日、books&appsさんに寄稿した『エリートたちには「縦の旅行」が足りない | Books&Apps』という文章ははてなブックマークだけにとどまらない反響があり、それを読んで糧にした。ただ、こんなに読まれた理由はタイトルのおかげもあったのだろう。私の寄稿記…

インターネットで民主主義が加速して良かったですね

ビバ! デモクラシー! 兵庫県知事選、結果はどうあれ投票率の高さを鑑みれば民主主義が終わったどころか、真の民主主義が高らかに産声を上げたと言っていいだろう。あらかじめ地盤・看板・カバンを備えた既得権益者が勝つ時代は終わった。これからはblog、S…

『犬の日本史』をとおして自己家畜化と文化を振り返る

少し前に、ある人から拙著『人間はどこまで家畜か』に関連した話題として「犬の自己家畜化」の話と「日本社会・日本文化の進展」の話について、いろいろなご意見をうかがう機会があった。 犬は日本人にとって身近な動物だ。 しかし、その犬は日本でいつ頃か…

精神科状態像についてのまとめ

そういえば、日本の精神医療では頻出ワードだけれど世間ではあまり知られていない「状態像」について、ちょっと資料づくりしたくなったので、はてなの有料記事スペースを使ってできるだけ簡潔にまとめてみようと思います。常連読者の方以外が読むものではな…

無礼にならずに「なめる/なめられる」から降りるのは難しい

p-shirokuma.hatenadiary.com 昨日の「なめる/なめられる」についての雑談は多くの人に読んでいただき、はてなブックマーク等で多くのコメントをいただき、勉強になりました。ただ、そこを眺めていて「なめる/なめられる」の構図から降りていると言ってい…

なめる/なめられる についての話

blog.tinect.jp 上掲リンク先の記事は、刺激的なタイトルのためか、はてなブックマークでも喧々諤々の様子になっている。私個人としては、海外でコミュニケーションをする際には、日本の標準的な構えよりも自己主張を強めにするとちょうど良い、逆に、日本の…

ネトフリガンダム、しっかりガンダムしていて良かった

www.youtube.com ネットフリックスでフルCGオリジナルガンダムが公開されたと聞いたので、急遽、課金をした。ベーシックプランの月額加入料は980円で、この作品は全6話だから、それだけ観てもおつりが来るぐらいだろう。SNSでの評判も良さそうなので、週末に…

それは「知性」と「わかりやすさ」のパラダイムシフトだった

先日リリースされた『ないものとされた世代のわたしたち』について、お手紙をいただきました。読んでくださった方々に、改めてお礼申し上げます。色々なご指摘・ご感想をいただいていますが、そのなかに「知性」の変化についてお話があったので、拙著に書い…

元気のない時は気に入ったアニメを再視聴する

info.b-sideproject.jp 以前、podcastでお世話になったB-sideさんから、「世界メンタルヘルスデー」の企画として「自分のトリセツ」について一言寄せてとご依頼いただきました。 このコーナーでは、自分で自分のメンタルをメンテするのにいい方法*1を挙げて…

『東大ファッション論集中講義』が読みやすかった

東大ファッション論集中講義 (ちくまプリマー新書)作者:平芳裕子筑摩書房Amazon ファッションの本は色々な方向性・難易度のものがあってとっつきにくい。 大きな書店の、ファッションのジャンルの棚を探せば望みの本に出会える気がするかもしれない。が、な…

2024年に全力疾走したが体力が限界だ

2024年も残り3か月。短い、という人もいようけど、私は全力疾走してきたので、やっと2024年が終わってくれる、という感覚のほうが強い。今年はとにかくやった。がんばった。気張った。しかし人には限界というものがある。2024年、特に中盤のペースで活動し…

ないことにされたくないロスジェネ・オタク差別・web2.0の記憶

ないものとされた世代のわたしたち作者:熊代亨イースト・プレスAmazon 10月4日に発売される拙エッセイ『ないものとされた世代のわたしたち』は、「ないことにされたくない記憶」のまとまりになった。 というか、ほっといたら忘れられてしまったらなかったこ…

「市場に出ない」「理想の異性」について考える際の視点

これから書くのは、できるだけ理想に近い異性とパートナー関係になりたい人に本来必要な視点なのに、世間では語られることの少ない(=たぶん人気もない)視点だ。そういう異性とパートナー関係になりたいけどどうすればいいのかわからない人に、こういう視…

『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』から始める歯切れの悪い意見

この文章は、歯切れが悪い話として受け取っていただきたいし、少なくとも私はそう読んでもらえたらと願いながらこれを書いている。 歯切れの悪い話とは、アニメや漫画に登場する、なにやら依存症や精神疾患に当該しそうな登場人物の描写について色々と言う人…

低感情社会、皆がニコニコしていなければならない社会

p-shirokuma.hatenadiary.com 先週、怒鳴り声がどんどん社会のなかでストレスフルなものとみなされるようになり、他人に害をなすものとして浮かび上がってくる話をした。昭和時代には怒鳴り声、ひいては大きな声が溢れていたが、令和時代の日本社会はそうで…

「怒鳴り声に無神経な年長者と繊細な年少者」問題について

togetter.com この話は私の見聞きしている状況、特に我が家の子どもが感じていることとも一致していると感じた。 「自分が怒鳴られているわけでなくても、誰かが怒鳴っているのを見るだけでストレスがきつい」、という話だ。 このtogetterに対して、たくさん…

推しと宗教はどこまで同じで、どこから同じでないか

www.4gamer.net 少し前に、推しと宗教の共通性について宗教学の先生がお話している文章を読んだ。私はそれを読んである程度は納得できると同時にある程度からは納得できないものだった。ただし、くだんの先生は、私を説得するために「推しと宗教の共通性」に…

『ないものとされた世代のわたしたち』が出版されます

ないものとされた世代のわたしたち作者:熊代亨イースト・プレスAmazon題 名:『ないものとされた世代のわたしたち』 発 売:2024年10月4日 社 名:イースト・プレス リンク:https://amzn.asia/d/gtdLcAr このたび、イーストプレスさんから『ないものとされ…

『人間はどこまで家畜か』関連の講演が松本市であります

『人間はどこまで家畜か』というテーマにふさわしいポスターをつくっていただきました。この拙著に沿った講演を信州自遊塾さんからご依頼いただき、お引き受けした次第です。 日時:2024年8月31日(土) 14:00-16:30(開場13:30) 松本市中央公民館 一般500円 (※…

Xのスケールの大きさと、ファクト・秩序・平穏の生産過程について思うこと

fujipon.hatenablog.com 「四十代最後の夏が終わろうとしている」というブログ記事を書くつもりでしたが、fujiponさんの上掲記事を読んで、何か鳴き声をあげたくなったのでクマーとさけぶことにしました。 fujiponさんが上掲記事でおっしゃっているように、S…

「若者よ、欲しいの全部手に入れろ」(有料記事)

人間の命と能力では、この世のすべてを手に入れることなどできない。 たとえばオリンピックで金メダルを取り、なおかつなんらかの分野でノーベル賞を取るのはたぶん無理だ。 それでも人間の可能性と学習能力は高い。デッキの組み方次第ではかなり広い範囲の…

『パーティーが終わって、中年が始まる』にかこつけて日本社会を語ってみる

2024年7月は複数の原稿・ご依頼が重なり合い、生きた心地がしなかった。でも、phaさんの『パーティーが終わって、中年が始まる』には目を通してみたくなって、頑張った私へのご褒美として週末に読んだ。この文章では、前半で同エッセイについて簡単に紹介し…

現代人がSNSの影響を受けるといっても色々で……

20240704 - 退屈なエピローグはつづく 2024年初頭、まだ寒い京都のカフェで私は上掲リンクの筆者、ちろきしんさんにお会いする機会を得た。その前には、ちろきしんさんの同人誌制作を少しお手伝いするご縁もあって、その同人誌は90~10年代ぐらいにかけての…

RE:郊外都市には文化が無い (……本当に?)

anond.hatelabo.jp 「郊外都市には文化が無い」、というタイトルの文章がはてな匿名ダイアリーを読んだ。 タイトルが、なんだか大きな釣り針だ。ただし、この名古屋近郊に住んでいる筆者はあるていど誠実だ。というのも、 この街の文化と呼べるものに触れ合…

「向精神薬で自意識や虚無感の悩みが治る?」&「近代に根ざした自意識や虚無感は時代遅れでは?」

物語のパターンは既に出尽くしてる問題に絡めてだけど、近代に流行した鬱屈とした自意識や虚無感、20世紀後半にいい薬がたくさん発明されたおかげで「心療内科にいってお薬を飲めばいいのに」で解決してしまって、物語としての強度を保てなくなってる。— 小…

わかってもわからなくても、信仰は生活のなかにあるよ

blog.tinect.jp 黄金頭さんが、books&appsにて「おれたち日本人には『信仰』がわかるのだろうか」というタイトルの文章を寄稿してらっしゃった。そこに登場する宗教の話は、前半はドーキンスや無神論とその周辺の話、後半は吉本隆明や鈴木大拙などを引用した…

良いところも悪いところもあった映画『トラペジウム』

※この文章は映画『トラペジウム』のネタバレを平然と含んでいます。心配な人はブラウザバックしてください※ 『トラペジウム』、褒めてる人もみんな微妙に褒め方違うし、違うのにみんな凄く思い入れと自信があるし、なんか感想がだんだん自分語りっぽくなっち…

「ひきこもり」は現在も増え続けているのか?

最近、忙しくてブログがなかなか書けないなか、面白そうな話題がTLを駆け抜けていった。togetterに、それがまとめられている。 togetter.com 「昔の方が暴力が横溢していたのに、なぜ今になって不登校やひきこもりが増えているのか」について、いろんな人が…