シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

裏日本出身者から見た東海道新幹線の車窓風景

 
裏日本出身者から見た東海道新幹線の車窓風景の感想を一言でまとめると、「どこも豊かですね」となる。
 
 

  
ビジネスで大阪と東京の間を行ったり来たりしている人にとって、東海道新幹線の車窓風景なんて一生懸命に眺めるものではあるまい。ありふれた風景がどこまでも続く、退屈きわまりないものだろう。
 
が、それは表日本の出身者にとってのこと。裏日本出身者から見た東海道新幹線の車窓は、いろいろ刺激的だ。率直に言って、うらやましい景色でもある。人口の集中、鉱工業の発展、肥沃な耕作地と温暖な気候、そして富士山をはじめとする風光明媚な景観。
  
同じ日本でも、裏日本と表日本には風景に違いがある。そういう違いを前提に、東海道新幹線の車窓風景についてちょっとだけ。
 
 

静岡、浜松、大津にのぞみは止まらない

 
東海道新幹線に乗る人には当たり前すぎることだけど、静岡、浜松、大津にはのぞみは止まらない。そもそも滋賀県には県庁所在地に新幹線の駅が無いのだ。遠距離を結ぶ新幹線であるのぞみが、東京に比較的近い静岡県の大都市に停まらないのは当たり前といえば当たり前かもしれないが、それでもすごみのあることだ。裏日本の県庁所在地よりずっと人口規模の大きな都市を、のぞみは何食わぬ顔で通過していく。
 
でもって、東海道新幹線の車窓の風景は、とにかく、家、家、家、だ。
 
今にもゴジラが上陸してきて踏み荒らしそうな神奈川県の景色をはじめ、東海道新幹線の沿線の景色にはほとんど常に、家々が連なっていて例外は少ない。北陸新幹線・上越新幹線・東北新幹線の沿線に比べると、圧倒的過疎地をみかけることがほとんどない。
 
そして人が寄り集まっているエリアの大部分が平地から成り、特に大都市周辺では丘陵地帯までもが宅地になっている。どこにゴジラが上陸しても破壊するものには事欠かないだろう。人口規模と人口密度が裏日本と比べて圧倒的に高い。
 

 

肥沃にして風光明媚

 
そうした平地の豊かさを象徴するように、東海道新幹線では何度となく大河川を通過する。淀川、揖斐川、長良川、揖斐木曾川、天竜川、大井川、富士川、等々。北陸、特に富山県には大河川があるとみなされているけれども、実際にはそれほど大した河川があるわけではない。信濃川を例外として、びびるほど大きな川は裏日本では見かけない。
 
治水には大変な苦労があっただろう。けれども、そうした河川と広大な平野部が大きな人口を養ったのだろうし、裏日本と比べて温暖で雪の少ない土地は過ごしやすかっただろうなとも思う。
 
じゃあ、住宅地や耕作地ばかり多いのかと言ったら、そうでもないのが東海道新幹線の沿線風景。
 
この文章のはじめに貼ったように、神奈川県から静岡県に入ると富士山の威容が目に入る。清水市の街並みを背に凄む感じの富士山も、富士市あたりから望む稜線のなだらかな富士山も素晴らしい。外国人観光客たちが、一生懸命に富士山を撮影していたりする。
 
浜松市を通過すると今度は浜名湖だ。
 

 
でかい。広い。浜名湖ボートレース場を通過するのも趣深い。そうしてしばらくすると今度は大名古屋だ。
 

 
名古屋を、大きな地方都市と呼ぶ人がいる。名古屋駅から大阪方面に向かう際には、割とすぐに田園風景が見えてくるから、なるほどそうかもと思える。でも、名古屋から東京に向かう際には「名古屋の都市圏ってでかいなぁ」って気持ちになる。少なくとも裏日本の都市圏のレベルじゃない。地下鉄や名鉄を乗り回して名古屋じゅうをうろつくと、裏日本者を圧倒するぐらいの都会感はある。
 
濃尾平野を横切り、ちょっと景色に飽きてきたかと思った頃に、今度は関ケ原、近江連山、琵琶湖などが見えてくる。京都を過ぎると、淀川の手前と向こう側の住宅街が途方もない広がりをみせ、時折、JR西日本や関西私鉄の列車が視線を横切っていく。すべて、東海道新幹線の車窓を見慣れている人にはどうってことはない景色でも、裏日本出身者には楽しくうつる。
 
 

確かに表日本、裏日本、なのだと思う

 
この文章のタイトルを「日本海側出身者~」とせず「裏日本出身者~」としたのは、東海道新幹線の車窓から見える太平洋側の風景が、どう考えても日本海側よりも豊かで、人がたくさんいて、発展しているからだ。その豊かさ・その繁栄っぷりを日本海側のそれと比べたら、太平洋側を表日本、日本海側を裏日本と評した人の気持ちがわかる気がする。そのうえ太平洋側は温暖で冬も晴れていることが多い、日本海側の冬はひたすら曇っているか雪が降っている。
 
「北陸地方もそれなり豊かだ」と指摘する人もいるだろうし、ある程度までわかる話ではある。だけど、それでも東海道の風景と北陸道の風景、東海道新幹線の風景と北陸新幹線の風景を見比べれば、どちらが日本の表で、どちらが裏であるかがいやがおうにも思い知らされる。
 
だからどうした、という話ではあるのだけど、日本海側の人間には、東海道新幹線の車窓の風景は退屈しない・見どころの多いものだと思うので、ぜひお楽しみくださいと今日は書きたかったので書きました。