シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

続・発達障害のことを誰も知らなかった社会には、もう戻れない

anond.hatelabo.jp 5月29日にはてな匿名ダイアリーに投稿された『発達障害やグレーゾーンの人の適職って?』という記事*1に、たくさんのはてなブックマークが付いていた。 文中で挙げられている"逐一支持しても単純作業しかできない人(もしくは単純作業も難…

4月5月は"やっている感"のハイシーズン(だからしんどい)

日本社会では成果よりも「みんなと一緒に」という美徳が信頼の源泉になっている。 | Books&Apps books&appsさんに、"やっている感"について寄稿させていただいた。 「みんな一緒に」の同調圧力が強まりやすい職場や現場では、仕事の効率や成果とは別に、みん…

「釣りの終焉」と「フェイクの時代」

インターネットスラングに「釣り」というものがあった。たとえば00年代の2ちゃんねるでは、「釣り」「釣り乙」という言葉がしばしば用いられた。釣りを釣りだと理解していることは、ちょっとしたネットのリテラシーだったものだ。昔の2ちゃんねるの管理人…

新型コロナウイルスと、呪術で戦っていませんでしたか

※今日、書くことはエビデンスを踏まえたものではありません。感染対策に貢献するものでもありません。私のエッセイ、いや思いつきでしかないことをあらかじめ断っておきます。※ (※出典:『肥後国海中の怪』(京都大学附属図書館所蔵)) 人々は、新型コロナウ…

親が教師のかわりに教えることと、親子のソーシャルディスタンス

今が人生でいちばんハッピーなんじゃ。|こゆるぎさん|note リンク先のnoteには、在宅勤務になって子どもと過ごす時間が増え、コミュニケーションがたくさんできるようになった喜びが記されている。こうした在宅勤務がなくなって元の勤務体制が戻ってくるの…

現代人の超自我と、逃れられない「こころ」の問題

最近は見かけることも少なくなったが、かつては神経症とかノイローゼとかいった「こころ」の病名をよく見かけた。 これらはフロイト以来の精神分析にかかわる「こころ」の病名で、おおざっぱにいえば「こころ」の内面の葛藤やこじれに関するものだった。1990…

あの頃のネットは貧しい土地で、俺らは火事花みたいなものだった

パイオニア樹種、という言葉をご存じだろうか。 パイオニア樹種とは、まだ植物が地面を覆っていない空き地や荒地にいち早く適応する、そういう樹木のことだという。火事の跡地などをいち早く緑で覆うのはこのタイプの植物だ。しかし、土地が緑でいっぱいにな…

書籍を作り終えて憂鬱になり、「何者かという問い」に呪われている

6月に出す新著についての作業工程がだいたい終わって、脱力状態になった。新しい本が発売される前の一か月ほどは、いつもこんな感じだ。少し憂鬱にもなる。 そうしたなか、手斧アイコンの方のはてなブログで「何者かという問いは呪いである。」という文章を…

ゲームの想像や妄想に溺れながら生きるのは(中年には)難しい

「昔のゲームの方が想像力を刺激されて良かった」は本当か|てっけん|note 俺たちは、ゲームを遊ぶ時に何を「想像」していたのか: 不倒城 ゲームをよく知っている人たちが、ゲームを遊ぶ時の想像・想像力について文章を書いてらっしゃった。 ここで私がゲー…

熊代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』第一章(下)を公開します

熊代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』第一章(上)を公開します - シロクマの屑籠の続きです。 【「誰が救済されるべきマイノリティなのか」という問題】 もうひとつは、こうした救済の対象は、医療や福祉が可視化したもの、ある…

熊代亨『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』第一章(上)を公開します

健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて作者:熊代 亨発売日: 2020/06/17メディア: 単行本(ソフトカバー) 6月17日発売予定の『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』の第一章を公開する許可をいただいたので、公開し…

男性役割、いや、競争社会や上昇志向から「降りる」ことの難しさ

男性の役割から降りても救いはない 「男性の役割から降りても救いはない」という匿名ダイアリーの記事を読み、早口で喋りたい気持ちになったので書いてみる。 筆者は男性役割から降りた・障害者となった、と記しているが、この「男性役割」という言葉を「競…

今のネットでアニメ辛口批評なんてできたもんじゃない

オタクが軟弱化して辛めの批評を書かなくなったから、最近のオタクコンテンツはひたすらヒロインが可愛いだけの薄っぺらい作品ばっかりになってるんだろうが。定型文と画像で褒め合うクソみたいな学級会文化をやめろ。辛口批評を書きまくって仲間のオタクと…

なめらかな社会、繊細な秩序にあなたはついていけるのか

昭和の日、繊細になりゆく令和の秩序について考える - シロクマの屑籠 先日の記事には、はてなブックマークで様々なコメントをいただき、進みゆく秩序について(はてなブックマークの)皆さんがどんな風に考えているのか参考になった。それらを記憶にとどめ…

「こわいのは、コロナより世間」

私の交際範囲のなかでは、こんな言葉が流行っている。 「こわいのは、コロナより世間」 高齢者や基礎疾患を持っている人にとって、COVID-19は命にかかわる疾患だ。とはいえ私の年齢、私の子どもの年齢なら、これが命取りになる可能性はそこまで高くない。こ…

昭和の日、繊細になりゆく令和の秩序について考える

今日は昭和の日だが、最近、私のツイッタータイムラインには昭和時代の漫画表現のおおらかさ、フリーダムさに驚いている投稿がよく飛び込んでくる。 48年前の少年ジャンプに載ってた『漫画ドリフターズ』を読んでたんだけど、最高に表現が自由すぎる。 pic.t…

FGOの最新クエストはまさにビジュアルノベルだった

先日、Fate Grand Order (FGO) は、2000万ダウンロード記念のキャンペーンを発表した。良くも悪くも90年代~00年代のオタクのノリがちりばめられたソーシャルゲームがこんなにヒットするとは驚きだ。そして嬉しい。ひいきの野球チームが優勝するのを見るのに…

ノイズを避けるコミュニケーション──言葉も、においも、ウイルスも

人間どうしのコミュニケーションは不潔でなるべく避けるべきという規範が定着してほしい— 正しさ (@verygoodreality) 2020年4月14日 少し前、たぶん新型コロナウイルス感染症でソーシャルディスタンスが求められている状況を踏まえた、皮肉めいたツイートを…

ディストピア弁当を売っているスーパーがもっとディストピアになった

お店の名前は言えないが、私の生活圏には殺伐とした弁当が殺伐と並んでいるスーパーマーケットがあり、数年前からその店のことをディストピアスーパーと呼んでいる。 「弁当なんて、どこで売られているものも同じじゃないか」と言う人もいるかもしれない。確…

『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』を出版します

健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて作者:熊代亨発売日: 2020/06/17メディア: 単行本(ソフトカバー) 書影が間に合っていませんが、シロクマこと熊代亨の新しい本の情報が出ました。数年前から構想し、書き続けてきた現代社会(とそこ…

在宅勤務でも昼間から酒を飲むのはやめたほうがいい

gigazine.net 在宅勤務が増えるアメリカ合衆国では、在宅勤務者の3人に1人が飲酒しているというニュースを知った。私は精神科医としてはいい加減なほうだし、ワインが好きなので飲酒についてもうるさくないつもりでいる。でも、平日の昼間からアルコールを飲…

「世界のワインを飲んで応援」する

この写真は、3月10日に「北イタリアのワインを飲んで北イタリアを応援する」とツイッターに書いて投稿したときのものだ。当時は、私の好きなワイナリーがたくさんある北イタリアが感染の渦中にあったので、ファンとしては飲んで応援しよう、みたいな気持ちに…

ボイスチャットから聞こえてくるリテラシーの欠如

最近は、いままで以上に家に閉じこもってゲームをしている。本当はPS4で発売されている『十三機兵防衛圏』を遊びたいし「遊びたいゲームが発売されているゲームハードを買う」はゲーオタの本懐だけど、PS5のリリースが近づいているこの時期にPS4となれば尻込…

アメフラシを触ってきて癒された

先日、大きな街に出かける気分にはなれなくて、日本海側の僻地に出かけてきた。アメフラシを触るためだ。 アメフラシは生物学では重要な生き物で、確か、記憶の研究分野ではものすごく役に立っていたと記憶している。さておき、アメフラシはとてもかわいい。…

世間、マスク、道徳。

世間に負けているので外出時は私もマスクしているのだけれど、騒動の初めの頃は信仰や御守りとしてのマスクだったように思うが、何だか最近は他者や世間様へ迷惑をかけないようにする公衆衛生への配慮としてのマスクになりつつある、気がするな。後者の方が…

「はてなダイアリー」の気持ちを思い出したい

こんな時だからこそ多くの人に日記を書いてほしい……ウェブ日記に日々の淡々とした記録を、言葉を残すんや……今はSNSとちゃう、インターネット日記の言葉が状況に合うんや……ほんまやで……— 平民金子 (@heimin) 2020年4月1日 そうですね。こんな時だからこそ日記…

アマゾンPrimeでPSHYCHO-PASSシーズン3を観た

前編(Ziggurat Capture Part 1)メディア: Prime Video 3月27日から、アマゾンPrimeで『PSYCHO-PASS』のシーズン3、その完結編にあたる(Ziggurat Capture Part 1~3)が視聴できるようになったので、さっそく視聴した。 完結編が公開される前のシーズン3は…

"「萌え」の時代から「推し」の時代へ"について

オタクの"界隈"で「萌える」という言葉を見かけなくなって久しい。 かわりに、「推し」という言葉を見かけるようになった。 このことについてtwitterの片隅で幾つかの意見を見かけ、私も何か書き残したくなったので、先週の続きとして書いてみる。 「推し」…

ウイルスまみれの世界でグローバル化とは何だったのかを考える

今日は不安な気持ちを言語化して、頭のなかを整理しようと思う。 新型コロナウイルス感染症がパンデミックとみなされて、いくらかの時間が経った。この間、人の行き来は少なくなってマーケットは素人にはよくわからないことになっている。実体経済はきっと冷…

キャラクターにときめいていられるのは若いうちだけ(だったのでは)

今週と来週は、「萌える」という、使われなくなったオタクのスラングについて書く。 昔、オタクの"界隈"には「萌える」という言葉があった。 自分の好きなキャラクターに対し、思慕が高まったり胸がときめいたり心を寄せたくなるような、そういった気持ちを…