シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

2020年に出会ったすごく良かったワインたち

 

 
ワインを飲み歩いて約10年、いわゆる定番ワインのことは結構わかるようになった。ところがワインの世界はまだまだ広く、「どうしてこんなワインがこんな値段で?」と思ってしまうことはよくある。今年になって出会った、コストの割にいけているワインたちをズラズラ挙げていこうと思う。
 
 
・クズマーノ "ディズエーリ" ネロダヴォラ 2018 (シチリア・赤)
【1992】Cusumano "Disueri" Nero d'Avola 2018 - 北極の葡萄園
 

 
シチリアは安旨ワインと安いだけのワインの宝庫だけど、このワインは値段がクオリティの水準を大きく上回っていると思う。クズマーノはシチリアの大手メーカーで、お手頃なワインをたくさん売っている。で、このワイン、値段が高くないにもかかわらず「いかにも葡萄酒然としたぶどうらしさ」と「森の下草みたいなオーガニックな雰囲気」が漂っている。舌ざわりがしっとりしているのも良い。それでもタンニンが無いわけではないので、結果としてこしあんみたいな飲み心地になることもある。シチリアの土着品種の赤ワインを試してみるなら、こいつは良い入口になると思う。
 
このワインには、工業生産品としてのワインでなく、農産物としてのワインらしさがあるのだけど、一般に、ワインからそういう雰囲気を感じ取るためには3000円以上出さないと難しい。ところがこのワインは1600円ほどで買えるのでリピート。
 
 
・マックマニス・ファミリー ジンファンデル 2018
【1983】McManis Family Vineyards Zinfandel 2018 - 北極の葡萄園
 

 
カリフォルニアの赤ワイン品種・ジンファンデルのなかでもバランスがとれていて、しかも1000円台!
 
こいつは、甘さと果実味で押すワインなのだけど、苦み・梅系酸味といった赤ワインの味の土台となる部分をおろそかにしていない。甘さと果実味で押す安ワインの駄目なやつは、だいたい、土台をおろそかにしているので飲み飽きる。ところがこれは飲み飽きない! 価格を考えると信じられないほど細かいところに目配りされたワイン。これより値段が高く、上っ面だけ美しくした赤ワインはいくらでもある。
 
カリフォルニアワインは値段とクオリティが比例するため、この価格帯で納得のいく品を探すのは非常に難しい。そんななか、マックマニス・ファミリーはかなり頑張っていると思う。以前から白ワインのクオリティには驚いていたけど、今年、赤ワインを発見してこれまたびっくりしてしまった。
 
 
・エミリオ・ブルフォン シャリン 2018
【2073】Emilio Bulfon Scialin 2018 - 北極の葡萄園
 

 
はじめに断っておくと、これはゴージャスな白ワインやリッチな白ワインが欲しい人には向いていない。「白ワインの味の土台は酸味」という基本原則からも逸脱している。模範的な白ワインとはいえない。
 
このワインのいいところは、白ワインにも関わらず、落ち着いた飲み心地で、なんだか重低音の効いたワインと感じられる点。こういう特徴はボルドーの赤ワインにはよくあるけれど、白ワインではあまり多くない。私は白ワインが好きなのだけど、飲むと頭がヒートアップしてメチャクチャになってしまうので最近は控えめ。ところがこのワインは静かな気持ちで飲めた。白ワインをある程度飲み慣れていて、変わり種を飲みたい人、静かな気持ちで飲みたい人におすすめ。シャリンはこのメーカーぐらいしか作っていないイタリア北東部の土着品種なので、話のタネにもどうぞ。
 
 
・ロシュバン ブルゴーニュ・ピノ・ノワール ヴィエイユ・ヴィーニュ 2016
【1972】Domaine de Rochebin Bourgogne Pinot Noir Vielles Vignes 2016 - 北極の葡萄園
 

 
ブルゴーニュの赤ワインは異常に値上がりしていて、新型コロナウイルスがやってきても全然値下がりしない。そんななか、2000円を切った価格で流通しているこのワインはお買い得の部類。ブルゴーニュの赤ワインとしては低価格帯なのに、ちゃんと化粧箱みたいな香りがあって香り映えがする。
 
もちろん、化粧箱みたいな香りの漂うワインは他にもあるし、同じブルゴーニュの赤ワインでも5000円出せばもっともっと薫り高いワインは手に入る。とはいえ、1000円台でそういう雰囲気を出してきているのはえらい。1000円台のブルゴーニュの赤ワインは結構辛いものも多いから。なお、私がリピートしたのは2016年産で、2017年産や2018年産も同じ雰囲気なのかはこれから確認してみる予定。ここに張ったリンク先は2017年。
 
 
・ネグラール アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ モンティゴーリ 2016
【2024】Montigolo Amarone della Valpolicella 2016 - 北極の葡萄園
 

 
アマローネは、一般的な赤ワインに比べて甘みが強めなので、正統な赤ワインとは雰囲気が違う。だけど甘みが強いおかげで「子ども時代にイメージした葡萄酒」に限りなく近い味がするように思う。舌触りが少しザラザラッとしていて果実フレーバーが強烈なのも葡萄酒っぽいイメージを駆り立てる。葡萄酒らしい葡萄酒をワイン初心者が飲むなら、一般的な赤ワインは避けてアマローネを買ったほうが納得できると思う。
 
ところがアマローネはちょっとした高級ワインジャンルなので、マトモに買おうとすると痛い出費になる。にもかかわらず、このワインは2600円とめちゃくちゃ安い。10000円ほどのアマローネに比べるとさすがに粗いと感じる部分はあるにせよ、ちゃんとアマローネらしさは揃っているのでありがたい。
 
 
グレネリー グラスコレクション カベルネ フラン 2016
【1942】Glenelly "Glass Collection" Cabernet Franc 2016 - 北極の葡萄園
 

 
南アフリカのワインは、全体的に価格の割に美味いものが多いのだけど、そうしたなかでこのワインは1700円ほどもする(※値上がりした!今は2800円ほど)。なので「南アフリカのワインにしては高価」なのだけど、それだけのことはある。このワインの品種はカベルネフランといって主にフランス中部でつくられているものだけど、フランスの同価格帯の品に比べて味の輪郭がくっきりしていて、愛嬌があるというか、人をひるませる要素が少ない。
 
サクランボみたいな果実フレーバーと鉛筆・牧草みたいな香りがしっかりと香り、渋みはそれほど厳しくないので、ぶどうでつくられたお酒を飲んでいる感を感じやすい品だと思う。街で見かけたら保護したい。
 
 
・バンフィ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ "プラチド" 2005
【2074】Banfi "Placido" Brunello di Montalcino 2005 - 北極の葡萄園
 

 
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノはイタリア中部で作られる高級ワインなのだけど、こいつはその割には価格が抑えめ。普通、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは安くて6000円程度、高くなると15000円程度はする。しかも10年ほど寝かせておきたいので買うのも飲むのも大変。ところがこのワインは4000円を切っていて、2005年と十分に熟成もしている。
 
このワインの特徴は、干し柿やオレンジの皮みたいな香りが香ってくるところ。この香りのおかげか、ワインに包容力があり、飲むにつれ温かい気持ちになってくる。トマトスープや腐葉土のような香りがよぎることもあって、飲み応えは抜群、リッチ、これだけの味と香りのワインは、倍は出さないと普通は飲めない。
 
これは、在庫放出か何かなんだろうか? とにかく滅茶苦茶美味くてまた買いたくなってしまう。じきに在庫が無くなって終わりになるだろうから、つい、ストックしてしまう。なくなるまでリピートする予定。
 
 

手堅いフランスワインばかり買うのはやめよう

 
この、最後に挙げたプラチドや最初に挙げたディズエーリなど、今年はイタリアワインでコストパフォーマンスのおかしいワインに何度も出会い、その個性、その豊かさにびっくりさせられた。2015年頃から私は「一定クオリティ以上のワインを買うなら、結局フランスワインを買ったほうが手堅い」なんて思っていたのだけれど、これらのワインをリピートして「フランスの手堅いワインばかり買っているのは良くない、ちゃんと他所のお買い得品を探し回ろう」と思い直した。
 
それと、ワインを知ったつもりになっていて、まだまだ知らないぶどう品種、知らない味があるとも思った。ワインが趣味のひとつになって10年ぐらいになるけれども、来年は初心にかえって、いろいろな地域のワインをまんべんなくトライしてみよう、と思う。