シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。現在、忙しいうえブログは実験モードに移行しています。

記念日のワインを誰かに薦めるとしたらこんなワイン

 
#はてな村 のソムリエ、シロクマ先生 @twit_shirokuma に公開質問状を送る! - 玖足手帖-アニメブログ-
 
こんにちは。公開質問状などと書かれ、ぎょっとしてしまいました。また、そのような文言で送られた文章にリアクションを行うべきか迷いました。nuryougudaさんとは長くインターネットを共にしているわけですが、最近、インターネットにおいて誰とどのように・どこまで言葉を交わすのが良いのかわからなくなっておりまして。
 
さておき、(自分の、ではなく他の人にお勧めする)記念になる酒とはどういうものでしょう。この場合、ワインをご指名なので記念になるワインとなると何が良いのか。
 
これは、どういう人が・どういう状況で・どう飲むのかによってベストが変わってくる問題です。いや、この場合、ワインはおまけで記念日のほうが重要なので、本当はなんでもいいのです。記念になる出来事があって、慌ててワインを買いに行ったらもう店がほとんど閉まっていて、コンビニで売られている一番値段の高いワインをたまたま買ったなら、そのワインが記念日の思い出ワインで本当はいいのだと思います。
 
ワインに限らず、お酒ってそういう偶然の出会いとかタイミングが大事なのだと私は思っています。たまたまその瞬間に掴めたお酒ってのがすごく大事。それが思い出になり、それがお酒のジャンル開拓の礎になったりするのでしょう。
 
ということは、こうやって質問いただいたのもひとつの縁なので、ちょっと緊張しております。それでも以下にいくつか候補を挙げてみましたので、ご覧になってください。
 
 

記念日にふさわしいワインについて、幾つかオススメしてみる

 
さきにも書きましたが、記念日にふさわしいワインといっても色々です。すぐに飲むのか、この日を胸にしまうべく長く所蔵するのか。1人で飲むのか複数名で飲むのか。優れたグラスが手元にあるのかそうでもないのか。ワインを飲み慣れている人なのかそうとも言えないのか。
 
nuryougudaさんの文章によれば、以前、シャンパンのテタンジェに巡り合っておいしかったとのことなので、だったらテタンジェでもいいように思います。テタンジェはおいしく、円満かつ華やかで、楽天で買い求めるぶんには価格にも無理がありません。でもって、シャンパンはどう飲んでも美味いものです。
 
ここはひとつ、30年の記念として超高いテタンジェなどはどうでしょう。こういう上位シャンパンは熟成させたほうが良いという意見があり、それもまあわかるのですが、すぐ飲んでも悪いものじゃありません。ワインを飲み慣れていない人でも、漬物系のフレーバーがそれほど強くないシャンパンならトラブってしまうリスクは少ないといえます。
 
テタンジェ コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン [2005]
 
とはいえ、自宅に届いた当日に飲むのはやめましょう。長旅の後は「ワインが疲れている」ので、少なくとも一週間、できれば一か月ほど休ませるのが得策です。日程的に難しい場合、暑くない日に近くの大規模リカーショップ・ワイン専門店・デパートなどで10000~20000円ぐらいのシャンパンを買い求めたほうが安全かと思います。
 
なお、シャンパンは一日で必ず飲み切ったほうがいいとは限りません。一日で飲むのが難しい場合、封をして冷蔵庫に残しておくのも楽しいです。翌日のシャンパンは泡が微炭酸になっていて、泡に隠されていた味わいが露出しかえって旨味があっていいって人もいるぐらいです。
 
 
泡物ではない赤ワイン・白ワインなら何がオススメでしょうか。
実は、似たような予算で記念品としてワインをプレゼントする相談をソムリエさんにしたことが何度かあったのですが、返事はだいたい以下のようなものでした──記念品として赤/白ワインを渡すのは難しい、特に相手がワイン好きでどんなジャンルが好きなのかわかっているのでない限りは。
 
私もそう思います。1万~3万円の赤ワインや白ワインとなると、ワイン好きにはたまらないワインがいろいろ連想されますが、それらは良くも悪くもワイン好きが飲んだ時に感動や感銘が起こるものが大半で、ワインを飲み慣れていない人が飲んでも「えぐみが強くて飲みにくい」とか「人の飲むものじゃないようなにおいがする」といった否定的な気持ちを引き起こす可能性もあるのです。この点、シャンパンは(比較的にせよ)安全牌で、ワインを飲み慣れていない人をも喜ばせる力があるように思います。
 
加えて、1万~3万円の赤ワインや白ワインは飲み頃を判断するのが面倒で、しかも立派なグラスを要求することが多かったりします。ボルドーやブルゴーニュの赤ワイン、高級なシャルドネといった面々は味よりも香りで楽しむもので、これを楽しむには立派なグラスがほとんど必須です。
 
リーデル スーパーレジェーロ ブルゴーニュ・グラン・クリュ
 
こうした制約を考えると、自分なら、今回のnuryougudaさんの記念品として赤ワインや白ワインは避けたいところです。どうしても赤ワインや白ワインでなければならない!って場合はカリフォルニア産の1~3万円の有名どころをトライしてください。カリフォルニア産は値段と品質が比例しやすく、取り扱いも比較的雑で構わず、ワインに慣れていない人でも割といけるテイストにまとまっていることが多いのでアリだと思います。
 
あと、チビチビ飲んでいただけるなら、ごつくて甘めのアマローネならアリかもしれない。
 
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラシコ 2016
 
アマローネは赤玉ポートワインほど甘くはありませんが、ほんのり甘く、チョコレート+ジャムのような香りがして、鼻息が荒いです。このアッレグリーニのアマローネは舌ざわりが良いのでついつい飲んでしまうかもしれませんが、数日に分けて飲んだほうが健康的です*1
 
 
ワインde記念品でシャンパンと並んで有力なのは、甘口ワイン勢です。甘口ワイン勢のいいところは、冷暗所に保存しておけば非常に長期にわたって熟成することです*2。すごく息が長いので、結婚や出産の記念に買い求め、飲むあてもなく大事にとっておき、20年目、40年目といった折に抜栓するにはうってつけです。複数本を用意し、今年飲み、10年後に飲み、20年後に飲んでみるのもいいですね。味的にも、赤玉スイートワインやラム酒に慣れている人に向いていると思います。
 
シャトーディケム 2006 ハーフ
 
たとえばこのソーテルヌの有名どころ、シャトーディケムなんかは買ったら50年くらい寝かせておけるので、記念品としては最高だと思います。2021年の品を買い求められるのはまだ先ですが、2021年を選んで死蔵するのは大アリでしょう。1991年という年を意識するなら、

シャトーディケム 1991年 ハーフボトル
 
これなんか良いんじゃないでしょうか。1991年のソーテルヌはたぶん当たり年ではないと思いますが、シャトーディケムの品なら中身は健在のはず(というより飲むのが早いぐらいかもしれない)。これはハーフボトルですが、375mlを一日で飲み尽くすような品ではなく、数日に分けていただきましょう。ブレンデーやラムの香りがお好きなら、ソーテルヌの香りには陶然とするはずです。まして、このメーカーなら間違いないはず。
 
シャトーリューセック 2009
 
フルボトルがお望みならこちらを。でも、このワインも今年抜栓するのはたぶんもったいなくて、自分ならあと10年ぐらいは待ってみたいところです。リューセックなら2、3本買って一本だけ抜栓するのもアリかも。これらソーテルヌ系はびっくりするほど甘いので、フルボトルを抜栓したら一か月ほどかけてゆっくり飲むのがいいと思います。
 
この手の甘口超熟ワインは、本当はものすごく候補があり、甘口ドイツワインもいいですし、たとえば
 
 
マディラ ペレイラ ドリヴェイラ マルヴァジア[1991]
 
このマデイラ酒やポートワインなど、南の地方でつくられる甘口ワインも良いものです。私はこのあたりのワインはあまり経験がありませんが、見聞した範囲では、ワインの生存性の長さ、香りや風味の豊かさにかけて立派なものだと思います。
 
 

この季節のワインは必ずクール便で

 
以上が私のおすすめする記念品ワインですが、この時期にワインを買う際には「高温」に対する警戒が必要不可欠です。25度以上から少し怪しく、30度を超えるといよいよワインが痛みます。なので、楽天などで良いワインを買う場合には必ずクール便指定にしてください。どんなに高いワインでも、高温にさらされて変質してしまえばさっぱり駄目です(甘口ワイン、ポートワイン、マデイラワインなどは暑さ耐性に優れるといいますが、自分ならクール便指定にしてみます)。ご注意を。
 
良いワインで、良い生活を。ワインはすぐ飲む楽しみだけでなく、記念日のアクセントとしての楽しみ、熟成をのんびり待つ楽しみもあるので、普段は買わないワインを手に入れたら好きなように楽しんでください。
 
 

*1:アマローネはアルコール度数がワインのなかでもアルコール度数が高いので、一日で飲もうとするのは甚だ勧められません

*2:注:保存する場合はボトルを縦に保存するのでなく、横に保存してください。