シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

飲むと元気が出るワインについて、ダラダラ書いてみる

 
 
 
 
 今週から来週にかけて、すごく忙しいせいで元気が出ない。
 だから今日は、飲んだら元気が出そうなワインが飲みたい。
 
 以前、「くたびれた金曜日に呑みたいワイン」というブログ記事を書いたことがあった。そこで紹介したワインは金曜日の夜をグダグダに過ごすには十分で、そのうえお手頃なものだった。
 
 ただし、あくまでくたびれた金曜日をグダグダに過ごすためのワインであって、土曜朝のコンディションはお察しである。そうじゃなくて、今欲しいのは飲んだら元気が出るワイン、飲む者に活気をもたらしてくれるワインだ。いわば、「アガるワイン」が欲しい。
 
 ワインもアルコールである以上、基本的には元気を奪うものであるはずだ。アルコールは酩酊状態をもたらすから、飲んでいる最中は安酒でさえ「アガる」と体感されやすい。しかし肝臓に負荷をかけるうえ、体内にアセトアルデヒドを発生させて全身にも負荷をかけているわけだから、翌日、グニャグニャになっているリスクは高いと言わざるを得ない。
 
 だから、どれほど活気をもたらしてくれるワインでも、沢山飲んでしまえば元気が奪われる。原則、飲まないほうが元気が出ると言って構わない。飲んだら元気が出るワインという言葉も、「適量を飲むぶんには元気が出るワイン」と書くべきなのだろう。
 
 適量を飲むぶんには元気が出るワインは、実際存在すると思う。少なくとも私にとってはそうだ。そういうワインが恋しくなってきたので、私にとっての「飲んだら元気が出るワイン」を、ダラダラ書いて気分転換してみる。
 
 
カビッキオーリ ランブルスコ ロッソ アマビーレ
 まずは定番のランブルスコ。パルマハムの里でつくられた微発砲赤ワインのなかでは、この、カビッキオーリという作り手のアマビーレが群を抜いて元気が出る。似たような価格のいろんなワインが売られているけれども、滋養があって悪酔いしにくいという点では、こいつが群を抜いている。
 
 ランブルスコにはちょっと甘口の品が多くて、こいつもちょっと甘口なんだけど、こってりとしているおかげか、甘口が嫌味には感じられない。飲むヨーグルトのような不思議な爽やかさもある。悪いランブルスコは、飲めば飲むほど甘さがクドなり、生臭さすら漂ってくるけれども、こいつはそれが無い。ちなみに倍の値段を払えば「高級品のランブルスコ」も買えるけれども、これを2本買って1本ストックしたほうがたぶん幸せ。
 
 
ピエロパン ソアーヴェクラシコ カルヴァリーノ
 これも、前に紹介したことの白ワイン。チリやカリフォルニアで作られた濃厚白ワインを油絵に例えるなら、ソアーヴェは水彩画。ただ、コンビニで売られているソアーヴェだと疲れがぜんぜん取れないし、ソアーヴェの高級路線のなかには、濃厚白ワインっぽくて飲み疲れるやつがある。高級な濃厚系って、疲れていない日に呑むぶんには楽しいけれども、疲れた日には呑めたもんじゃない。
 
 で、このカルヴァリーノは、水彩画にたとえたくなる淡い飲み心地そのままに、襟を正したような端正さがある。風味に奥行きがあるおかげで飽きにくく、ソアーヴェならではのホンワリとした飲み心地のおかげで、風味の奥行きを押し付けてくる鬱陶しさも無い。カリフォルニアやフランスの高級ワインは、しばしば、風味の奥行きを押し付けてくるから疲れた日には敬遠したくなるが、こいつにはそういう心配をしなくていい。楽しい日にも、悲しい日にも、そっと寄り添ってくれるワインだと思う。
 

マックマニスファミリー ピノ・グリージョ
 ピノ・グリージョという品種でつくられた、カリフォルニア産のワイン。カリフォルニアのお手頃白ワインって、だいたい濃くてクドくて飲みにくくて、翌日に元気が出る感じじゃないけれども、ピノ・グリージョは割と例外。もともと、イタリアでたくさん作られていた日常品種だからか、安くてもおいしい。高級ワインに期待するような「リッチな雰囲気」には程遠いけれども、酸がさわやかで、台所洗剤みたいな匂いがパーッと開いて、くどくなくて、それでいて味がスカスカになることもない。
 
 この品種、フランス産*1やイタリア産もあるんだけど、フランス産は美味いけど呑み疲れる品がチラホラ。イタリア産はチープをきわめすぎていることが稀によくあるので、カリフォルニア産が安全牌じゃないかなーと思ったりもする。チープで構わないなら安いイタリア産でも可。
 
 
リースリング セレクション ド ヴィエイユ ヴィーニュ [2014]
【トリンバック】 リースリング キュヴェ フレデリック エミール [2007]
 フランスはアルザス地方でつくられた、リースリングという品種の白ワイン。ワインをいくらか知っている人だと、リースリングってドイツの甘口ワインを連想するかもだし、あれはあれでいいものだけど、自分の場合、ドイツの(しばしば高級な)甘口白ワインはつい「鑑賞」してしまいがちで、かえって疲れてしまう。甘すぎるのもちょっと。
 
 その点、アルザス産のリースリングは甘口ってわけじゃないし、まだしも気楽に飲める。ここに挙げた銀ラベルと金ラベルは、並品より味も香りも多彩で、それでいて押し付けがましいほどでもない。スッスッと飲みたいなら銀ラベル、ちょっと欲張りたいなら金ラベルか。ただし、金ラベルはお値段が。
 
 
ジゴンダス オー・リュー・ディ [2012] ドメーヌ・サンタ・デュック
 フランス南部、ローヌ地方でつくられた「濃い」赤ワイン。濃い赤ワインの常として、たくさん飲むとしんどくなるので、3日以上かけて飲むのがちょうど良いと思う。で、これも濃い赤ワインの常として、ある程度赤ワイン慣れしているというか、渋みがOKな人じゃないとこいつは飲めない。
 
 赤ワインが飲める人には、果実味がしっかりして飲み応えのあるワインだ。価格の割に香りの多様性に恵まれていて、ときどき、香木のような目を見張る香りがしたり、ビーフジャーキーみたいな肉系の香りが混じったりして、「おお、畑でつくられた良いワイン飲んでるぜ!」って気持ちが高鳴ってくる。赤ワインの高級路線は欲張るときりがないし、値段が気になって「鑑賞モード」に入ってしまうおそれがあるので、疲れている日には適さない。疲れている日に呑むなら、値段の割に風味が豊かで、しかも栄養を飲んでいるような感覚を伴ったワインがいいと思う。ボルドーやブルゴーニュの赤ワインだと、お値段や品種の関係もあって、こうした条件が揃いにくい。開拓するならローヌ地方の赤ワインじゃないかなと。私はローヌ地方のジゴンダス地区のものを贔屓しています。高騰するフランスワインのなかではマシ。
 
 
フェヴレ モンテリ 一級 レ・デュレス 2013

 あとは「値段のあまり高くない、マイナーな地区のブルゴーニュ」もいいかも。
 
 この、モンテリという地区のワインは、威張るようなワインからはかけ離れていて、軽い飲み心地で滋味がわりとあって、ワインを飲む際に緊張を強いるところがない。本来、ワインなんて緊張しながら飲むようなモンじゃなく、「高級ワインと真剣勝負!」みたいな飲み方のほうがどうかしているのだと思う。モンテリには「果し合い」を迫るところが乏しく、『艦これ』でいうならしばふ絵のような芋っぽさ、いや、包容力がある。パチパチの美人に例えたくなるワインより、「おかん」に例えたくなるワインのほうが、疲れた日にはふさわしい。
 
 
 あと、ボルドーはあんまり飲んでないけれどもシャトー ラネッサンは割と穏やかに楽しめて良かった。ボルドーの1000円台の赤ワインは気持ちが落ち着くけれども、飲む人を楽しませてくれるサービス精神に乏しいものも多いので、元気が出るワインは少ないかも。あと、ごく一部、やたら風味が濃くて、エキスを飲んでいるみたなボルドーワインも、呑み疲れやすいので疲れた日に向かない。
 
 「味や香りが強いワイン」は「おいしいワイン」としばしばみなされるけれど、こと、疲れた日に元気を出すには向かないと思う。味や香りが多彩なのは良いことだけど、押しが強いとワインに押されてしまう。そういうワインは、元気な時に呑みたい。
 
 だらだら書いてちょっと気持ちが落ち着いたので、今日はこのなかから一本選んで飲もうかと思います。おわり。
 
 

*1:フランスではピノ・グリと呼ばれる