ゆうべ、遊たろうさんというブロガーの方から、以下のような質問をいただいた。
@twit_shirokuma 初めまして、いつもブログ楽しく読ませていただいています。突然すみません、よろしければ教えてください。シロクマさんのような、文章主体で自分オリジナルの思いや考えを綴るブログが好きなのですが、シロクマさんがご自身の書き方と似ていると感じるブログはありますでしょうか?
— 遊たろう (@yutaro446) 2018年2月24日
これに対して、「強いて似ているといえば、しんざきさんの『不倒城』」や、Books`Apps に投稿しているブロガーじゃないでしょうか」と答えたけれど、その後、考えが変わったので、以下にまとめてみた。
長続きしているブログは、お互いに「あまり似ていない」
考えてみれば、Books&Appsに投稿している人々のブログスタイルはやっぱり違う。
テキストサイトの芸風で長文を書く人もいれば、書籍を引用しながら日常の感慨を書き綴るスタイルの人もいる。また、ゲームと社会適応のことを書くという点では、前述の「不倒城」とこのブログは共通しているけれども、方向性はだいぶ違っていると思う。
結局、わりと近く感じるブログですら、似ている点よりも違っている点のほうが多くて、他人に「『シロクマの屑籠』はここと似ています」と紹介するのは難しい。
そもそも、ブログを書いている人それぞれの、書きたいと思う動機や興味、ブログの人生に対する位置づけみたいなものが皆違っているように感じられる。
自分が知っている面白いブログは全員、書きたいと思う動機や関心がまちまちだ。みんな書きたいように書いていて、誰かの真似をして書いている感じがしない。これは、2018年の現在においてそうだというだけでなく、もう10年ぐらい前から生き残っているブログは10年前からそうだった。もちろん、私のブログ『シロクマの屑籠』も、自分が書きたいと思う動機や興味のままに書き綴っている。
書きたいと思う動機や関心が違っていれば、そのブログは、他とは違ったものに自ずとなっていくと思う。
だからもし、何か他とは違ったユニークなブログが書きたい人がいたら、その人が書きたいと思う動機や関心がユニークであったほうがいいのだろう、と思う。いや、ちょっと違うか。最初はそれほどユニークである必要すらないのかもしれない。ただ、動機や関心が何年も積み重なっていくと、小さなユニークネスも蓄積効果によって大きなユニークネスになり得る。だから自分がブログを書きたいと思う動機や、ブログに書き記したいものへの関心がしっかりしていれば、「ユニークさ×継続時間」によってそのブログは珍しいものになっていくのかもしれない。
コピーするなら「ブログ」ではなく「本」では
一方で、ブロガーが何も参照にしていないとは思わない。
自分が知る限りでは、ブロガーは、よそのブログやウェブサイトを参考にする以上に、本や作家を参考にしているように思う。
たとえば、LINEに移って「やまもといちろうブログ」に改名してしまった旧・切込隊長は、「写経」が役にたったとおっしゃっている。
[参考]:「切込隊長が、やまもといちろうになるまで」--ウェブ時代の文章読本より : Blog @narumi
やまもと:していないです。それも変わらないです。書くということのスタイルはこの時点で。もっと前にパソコン通信をやっていたんですね。その時もある程度長文を書いたりというのに慣れていたのと、当時から結構本の虫だったので、筒井康隆とかの写経をずっとやっていたんです。
佐々木:好きな小説を選んで?
やまもと:選んで、頭から全部、何遍も書くというのをやってました。どんな作品かは言いませんけど、そういう文体とかリズムとかいうのを自分に叩き込もうというのはかなり当時から、中学高校からやってたという。
竹内:それすごい効くらしいんですよ。いろんな書き手の方が仰ってました。
いちる:僕もやりますよ、写経。
こういう話は、やまもといちろうさんに限った話ではない。自分の記憶が間違っていなければ、他にも似たようなことを言っていたブロガーがいたはずだ。そうでなくても、私がよく知っているブロガーは皆、本をよく読んでいる。あるいは、特定の本をよく読み、文体やリズムや構成の参考にしている。
かくいう私も、昔は田中芳樹の文章をお手本にしていたきらいがあるし、ここ10年くらいは、たぶん以下の二冊から文体やリズムの影響を受けてきたと思う。
- 作者: ジャンボードリヤール,Jean Baudrillard,今村仁司,塚原史
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 1995/02
- メディア: 単行本
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- 作者: マットクレイマー,Matt Kramer,阿部秀司
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どちらも訳本なので、正確には翻訳者の文体やリズムの影響も受けているってことだろう。
これらに加えて、自分自身が気に入ったフレーズを写経すると良い影響があると思って、写経専用のブログを運用したりもしていた*1。引用したい時にすぐに引用できるのもありがたい。
だからもし、これから文章主体で自分オリジナルの思いや考えを綴るブログを書きたい人は、
1.自分が書きたいと思う動機や関心を大切にして
2.たくさん本を読んで、気にったものを写経する
が一番近道なんじゃないかなと思う。
十年前に比べると、いまどきのインターネットは競争の烈しい世界になってしまったかもしれない。SNSや動画も存在する今という時代だからこそ、「なぜ、ブログに自分が文章を書くのか」がはっきりしていないと長続きしづらいようにも思う。これからブログを書いていきたい人は、本当に自分が書きたい関心領域のことを、自分が書きたいように書くべきだ。
でも、それだけでは心もとないから、文章を書くためのテクニックやテイストを身に付けるために、読書を大事にして、真似するに値する本を探し出すのも大切だ。なんやかんや言っても、一流作家や一流著述家の文章は素晴らしい。書いてある内容だけでなく、文体、リズム、気の利いた言い回しなども本当に凄い。真似するなら、ブログを読むより本を読んだほうが手っ取り早い。そのうえブログ記事のネタもざくざく手に入るし、写経しておけば引用用のストックまで手に入るから最高である。これから文章主体のブロガーをやる人は、読書を大切にしよう。これまでブロガーだった人達も、みんな読書を大切にしていたはずなのだ。
出先で片手間に書いたので乱文かもしれませんが、ご参考まで。
*1:※リンク先の『シロクマの物置』は2016年以降、非公開のはてなブログに移行しました