シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

ボジョレーヌーボーの値段で買えるもっと美味しい赤ワイン

  
 今年もボジョレーヌーボーの季節がやってきますね。
 
 ボジョレーヌーボー。ワインとしてはイマイチな代物です。まあその、イベントアイテムだし、飲みやすくはあるし、フルーティーといえばフルーティー……でしょうかね? 果実味も微妙に足りなくて、かったるいワインという印象があるのですが。
 
 それともあのかったるさが良いのでしょうか。
 
 もし「飲みやすさ」を目当てにボジョレーヌーボーを買っているのだとしたら、もったいない! 世の中には、もっと飲みやすくて、そのうえ果実味や香りも恵まれたワインがたくさんあります。
 
 また、11月はキノコ料理やジビエ料理のおいしい季節ですがボジョレーヌーボーでは歯が立ちません。スーパーで売っているお惣菜をとにかく流し込むだけならなんでも構わないのですが。
 
 ボジョレーヌーボーは果実味も酸味も香りもかったるいので、ある意味、クセの少ないワインではありますが、クセが少なすぎて「のっぺらぼうに仕上げられたワイン」とも言えるでしょう。
 
 

同じ金額で買える「顔のある赤ワイン」を

 
 最近はボジョレーヌーボーも値段が安くなり、1000円ぐらいのものも出回るようになりました。それでも2000~3000円ぐらいの価格帯が主流ですし、製造過程や割高な運送費を考えるにつけてもお買い得とは思えません。
 
 なので、もっとちゃんとした味や香りがして、そのなかでは割と飲みやすい部類のものをツラツラ挙げてみます。
 
 

1000円台

 
 
 まるき葡萄 まるきルージュ
 
 
 こいつは日本製のワインで、ボジョレーヌーボーを売れ筋として意識しているのか、本格的な赤ワインにありそうな渋みや苦みをギリギリまで減らしてあります。それでも、ストロベリーのような果実味はそこらのボジョレーヌーボーなんて比較にならないほど強烈で、はっきりフルーティーな味が楽しめます。ボジョレーヌーボーに親しんだ日本人のためにつくられた日本人によるワイン、ではないでしょうか。すっきりとした味わいも美質のひとつかもしれません。ボジョレーヌーボー以外、ほとんど赤ワインを飲まない人には、これをお勧めします。
 
 
 
ファルネーゼ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ
 
 
 少し赤ワインを飲み慣れている人ならこちら。1000円台ボジョレーヌーボーとあまり変わらない価格帯で、まともな赤ワインで、なおかつ日本の食卓に出て来るお手軽洋食や、スーパーの総菜コーナーに売られている「オードブル」のたぐいに合わせるにはぴったりです。上の日本製ワインと同様、赤ワインに不慣れな人をひるませる重たさや渋さが少なく、香りはたっぷり。味はさっぱり。まったく難しくありません。この「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」という赤ワインのジャンルには、少し土臭いワインや汗臭いワインもありますが、このファルネーゼが作っているワインなら大丈夫。日本の「オードブル」に合わせやすい赤ワインとしてこれをお勧めします。
 
 
 
サンコム リトルジェームスバスケット
 
 「もっと濃い赤ワインでも大丈夫!」っていう人には、1000円台でも無限の選択肢がありますよね。チリ産のカベルネソーヴィニヨンあたりでもいいし、南仏のメルローでもいいし。でも今回は、こちらの滅茶苦茶濃くて風味の強いワインを挙げてみます。ジャム、鼈甲飴、お線香、それからビーフジャーキー。赤ワインに慣れていない人を怯ませる要素満点の濃いワインですが、「俺は濃い赤ワインでもいけるぜ」という人にはコスパ抜群のワインです。値段の安い特濃赤ワインは、パワー重視のあまりバランスが崩壊しているものも多いですが、こいつはぎりぎり破綻していないのも好感。
 
 
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2000円台

 
 
アッレグリーニ ヴァルポリチェッラ スペリオーレ
 
 
 2000円台になると、軽くて飲みやすい系統の赤ワインのなかにも、香りや味が華やいでいる品がぽつぽつ見つかるようになります。とはいえ、いまどきの2000円台赤ワインの主流は「パワー重視の、赤ワインを飲み慣れている人向けのワイン」なのですが、このワインのように、ボジョレー系の上位互換的な感覚で飲めて、それでいて味や香りの複雑さはケタ違いのものもあります。このワインは店頭ではあまり見かけないものですが、見かけたら買ってみて損はありません。
 
 
 
ルイ・ジャド ボジョレーヴィラージュ クーヴァン・デ・ジャコバン
 
 
 いや、もっと単純に、丁寧につくられたボジョレーを飲むってのも手です。ボジョレーヌーボーの時期だからって、ヌーボーじゃないボジョレーを飲まなければならない理由なんてどこにもありません。ひとことでボジョレーと言っても、ピンからキリまでいろいろありますが、最上級のクリュ・ボジョレーは風味が強すぎることがあるので、中の上のボジョレーヴィラージュをお勧めします。飲み始めはヌーボーよりも少し酸味が強いと感じるかもしれませんが、酸味が苦手でなければこっちのほうがいけると思います。
 
 
 
ゴラン・ハイツ・ワイナリー マウント・ヘルモン インディゴ
 
 
 濃い赤ワイン上等な人には、こいつをオススメします。イスラエル産の赤ワインですが、香りが派手なのに口当たりはソフトタッチ、ちょっとだけ甘味もあるせいか、人当たりの良いワインと感じます。それでいて、飲み進める肉付きの良さ・ワインの複雑さみたいなものがジワジワこみあげてくるので、濃い赤ワインが好きな人なら喜んでもらえるんじゃないかと。なお、このワイン、ネット通販では2000円を切っていることもあるので、値段が安い今のうちに飲んでおきましょう。じきに値上がりする可能性が高いワインだと思っています.
 
 
 

3000円台

 
 
 世の中には、3000円台のボジョレーヌーボーが売られています。信じられません! 3000円もあったら、どれだけでも美味い赤ワインが買えるじゃないですか。
 
 
ミシェエル・ラファルジュ ブルゴーニュ・ルージュ(2014)
 
 
 3000円台になってくると、ボジョレーヌーボーによって作柄が占われるところの本命、「ブルゴーニュ産の赤ワイン」が射程に入ってきます。このワインなどは、赤ワインとしては異様な軽さの品ですが、それでいてチョコやバニラやローソクの匂いがたっぷりで、少し時間が経つと味わいがグッと濃くなってきます。「重たくて酸味の少ない赤ワインでなければイヤ」という人でなければオススメです。もっとも、そういう人はとっくの昔にボジョレーヌーボーに見切りをつけていそうですが。
 
 
 
トルブレック キュヴェ ジョブナイルズ (2016)
 
 
 濃い赤ワインをお望みなら、3000円もあれば結構なものが買えます。このワイン、とにかく濃くて風味強烈ですが、風味のバリエーションは豊かで、渋みもあまり攻撃的でなく、赤ワインの複雑な風味を楽しむには十分です。ただし、なにせ濃い赤ワインなので、一日で飲み切ってしまうのは大変ですし、和食などに合わせると食事を蹴散らしてしまいます。濃い赤ワインが苦手ではなく、しっかりした肉料理がお供という条件付きなら、赤ワインの可能性が垣間見えていいんじゃないでしょうか。
 
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どうしても旬のものが飲みたいなら

 
 
 「品質は二の次、ヌーボーのお祭り感がいい!」という人には以下のワインをオススメします。
 
 
ファルネーゼ ノヴェッロ 2018
 
 
 はい。イタリア産のノヴェッロですね(ノヴェッロとは、イタリア語でヌーボーの意味)。
 
 イタリア産のノヴェッロにも、なんというか、便乗商売をしているメーカーが無いわけではありません。それでもこのノヴェッロはまだマトモです。葡萄酒の味がちゃんとします。果実っぽさを前面に出したつくりで、飲んでいて苦しくなるようなつくりではありません。とりあえず試してみたいだけなら、4割以上お値段の安い船便版を買い求めるのも手です。どうしても新酒でお祭りしたい人は航空便版をどうぞ。
 
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何を買って、何を飲むかは自由ですが

 
 
 まあ、どんなワインをいくらで買ってどう飲むかなんて個人の自由なんですが、ボジョレーヌーボーを毎年買っている人には、値段にみあった内実のワインに触れてみて貰いたいなーと思います。あの、クセの少ない赤ワインにもいいところはあるかもしれない。でも、もう少し個性があって、風味も豊かな赤ワインが、世の中にはたくさんあるように思えるのです。