シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。現在、忙しいうえブログは実験モードに移行しています。

初心者には、シャンパンよりもヴァン・ムスーのほうが美味いのでは

 


 
以上のことを予め知っている人は、以下の文章は読む必要がない。
 
 

飲み慣れてない人に飲みやすいスパークリングワインは、シャンパンではない

 
スパークリングワインといえば、真っ先に連想されるのはシャンパン(シャンパーニュ)だ。もちろんそれはわかる。祝いの席にプレステージな気分を持ち込もうと思ったら、シャンパンに勝るものはない。
 
ドンペリニョン 2010
 
たとえば宴席にこういうシャンパンがスッと出てきたら、それだけで晴れがましい気持ちになる人はいるだろう。けれどもワインを飲み慣れていない人にとって、こういう高いシャンパンってどうなんだろうか。実のところ、あまり飲みやすいスパークリングワインじゃないんじゃないか?
 
ワインを飲み慣れていなかった頃の私はそうだった。有名なシャンパンをあれこれ飲んでみたが、すぐに馴染めるものは無かった。高級なシャンパンほどそうで、たとえば以下に挙げるクリュッグなどは「漬物みたいなにおいがして、苦みもあって、わざわざ飲みたくない」ぐらいにしか思わなかった。
 
クリュッグ 箱なし
 
どうしてこんな漬物チックで苦いスパークリングワインをみんな重宝するのか? これが最高のスパークリングワインだとわかったのは私がアラフォーになってからのことで、二十代の私には、これが良いものだとはわからなかった。それよりずっと飲みやすく、親しみやすかったのはフランス産のヴァン・ムスーだ。
 
ポール・シャンブラン ヴァン・ムスー
 
たとえばこのポール・シャンブランというメーカーが作っているヴァン・ムスーは1300円ほどの値段で、フランスのスパークリングワイン界のなかでも下っ端にあたる。ところがこういう下っ端のヴァン・ムスーには、あの嫌な漬物っっぽい風味も、なんだかきつい苦みも無い。初心者をひるませ、おうちごはんとの相性を左右する酸のキツさも無いので、スパークリングワインに慣れていない人を怯ませる要素が少ない。
 
しかもヴァン・ムスーはシャンパンに比べて低いアルコール度数が低い*1ので、深く酔っぱらわずに済む。夏の暑い日に、汗をかきながらテラスで飲むヴァン・ムスーは格別だ。もちろん汗をかくからミネラルウォーターは欠かせないし、キュウリの浅漬け、種無しオリーブ、アジの南蛮漬けなどをおつまみとして用意しておいたほうがいい。そうすると汗と一緒にアルコールがたちまち吹き飛んでしまう。爽快だ。価格もお手頃、1300円でバカンス気分になれる。
 
しかもヴァン・ムスーで悪酔いすることは比較的少ない。これはフランスというお国柄のおかげなのか、下っ端のスパークリングワインでも悪酔いする危険が比較的小さいのだ。安いスパークリングワインは、しばしば悪酔いする。たとえば日本でつくられている某大手のスパークリングワインなどは、まずく、悪酔いしやすい。他の国のスパークリングワインでも、ひどい品を引くと翌日、いや、当日の夜には頭が痛くなったり気持ち悪くなったりする。ところがフランス産のヴァン・ムスーではこういう酷い思いをすることが少ない。ヴァン・ムスーに限らずだけど、予算1500円以下でスパークリングワインを選ぶ時にはフランス産は有望だ。フランスワインは、安くてもこういう部分がマトモにつくられている品が多い。ヴァン・ムスーのクオリティは、フランスワイン文化の底力を現していると思う。
 
 

ついでにほかのスパークリングワインも

 
結論は書いた。が、ついでに他のスパークリングワインについても、自分が感じていることを列記してみる。なお、初心者お勧め度の★の数はヴァン・ムスーを★★★とした採点となっているのでそのつもりで。
 
 
【カヴァ 初心者お勧め度:★】
 
カヴァはスペイン産のスパークリングワイン。コンビニに売られているフレシネはその代表格だ。安いし入手も簡単。
 
フレシネ コルドン ネグロ
 
ところがカヴァの安物には、金属っぽいキンキンした「えぐみ」の強い品が結構あって、頭痛の種になる。価格は安いし、なかには美味いものもあるのだけど、美味いカヴァを必ず当てようと思ったら結局2000円ぐらい払わないと安定しない。でもって、安いカヴァの最悪なところにぶつかってしまうと悪酔いのリスクがある。美味い銘柄を知っているならリピート、そうでない場合はバクチの要素が高い。
 
  
【スプマンテ 初心者お勧め度:★★】
 
イタリアのスプマンテは、イタリア版のヴァン・ムスーといったところか。値段も安いし、これも市場にかなりの数が出回っている。苦みや漬物風味の軽い、初心者でも飲みやすい品が結構混じっているし、安カヴァほどキンキンしないものがほとんど。以下のサンテロは無難なほうだし、赤のスパークリングワインであるランブルスコも飲みやすい。
 
サンテロ ピノシャルドネ スプマンテ
 
ところがスプマンテにはときどき大地雷が混じっている。頭が痛くなったり悪酔いしたり、妙に苦みが強かったりするヤバい品だ。逆に、味が薄すぎて水っぽい品に出くわすこともある。しかもイタリア産のスパークリングワインには「フリザンテ(フリツァンテ)」という微発砲のスパークリングワインがあり、これも賛否両論。微発泡だから良いという人もいれば、微発泡だから飲めたものじゃないという人もいる。カヴァ同様、知らない銘柄の品を買う場合はバクチの要素がある。
 
フェッラーリ ブリュット
 
このフェッラーリまで行くとほぼ完全無欠のスプマンテなのだけど、この10年で値上がりしてしまい、今では3000円以上払わないと手に入らない。価格を気にしない人はどうぞ。
 
 
【新世界のスパークリングワイン 初心者お勧め度:★★(初心者じゃないなら★★★)】
 
チリ産や南アフリカ産のスパークリングワインは、全体的に値段の割にクオリティが高く、特に1100円~2000円の価格帯のスパークリングワインは三級品のシャンパンを打ち負かす。たとえばチリの有名メーカーであるコノ・スルのスパークリングワインは同社の隠れた傑作だと思う。桜の香りの豊かなロゼも、割り切った構成で好感が持てる。
 
コノ・スル スパークリング ブリュット 白
コノ・スル スパークリング ロゼ
 
新世界のスパークリングワインに難があるとしたら、良くも悪くもシャンパンを真似ていること、それと味や香りが強いことだろうか*2
 
新世界のスパークリングワインは、苦みや酸味の点でシャンパンによく似ている。このせいで、スパークリングワインに慣れていない人には味や風味がキツいと感じられるおそれがある。関連して、新世界のスパークリングワインは味や香りが全体的に太く、おうちごはんと一緒にいただく際に出しゃばってしまうおそれがあり、飲み疲れやすいというデメリットがある。スパークリングワインを飲み慣れている人には高品質と感じられても、飲み慣れていない人には威圧的と感じられるかもしれない。
 
  
【初心者でも飲みやすいシャンパン 初心者お勧め度:★(お金を積めるなら★★★)】
 
シャンパンじゃなきゃヤダ!という初心者にオススメしやすいシャンパンってなんだろうか。シャンパンなので全体的に値段が高いのだけど、以下はオススメかもしれない。
 
マム コルドン ルージュ ブリュット
 
マムはシャンパンのなかでは軽いところでバランスがとれているので、スパークリングワイン慣れしていない人でも飲みやすく、人を怯ませるところが少ない。それでいて華やかさがあってシャンパンらしくもある。お金の心配をしなくていいなら、スパークリングワインの入門はこのマムをひたすらリピートでいいと思う。マムに十分に慣れた頃には、他のスパークリングワインを、ひいては他のワインを比較・賞味する体勢が整っていると思う。
 
 
ローランペリエ ラ キュベ
 
酸味が弱いほうが好きとか、口当たりが滑らかなほうが好きって人は、ローランペリエから入るといいかもしれない。クリーミーな舌ざわりと出しゃばりすぎない酸味ならこれだ。逆に、酸味があったほうがいい人にはあまり向かないかも。でも舌ざわりや口当たりの良さは下位のスパークリングワインには真似できないところがある。
 
 
【プロセッコ 初心者お勧め度:★★(夏みかんみたいな酸っぱさがお望みなら★★★)】
 
イタリア北東部でつくられるプロセッコは、値段が安い割に品質が良く、地雷遭遇率も比較的少ないスパークリングワインだ。
 
プロセッコ トレヴィーゾ ザルデット
 
ただ、プロセッコは甘味が少なく、酸味が強い。果物にたとえるならオレンジや伊予柑ではなく、ハッサクや夏みかんのようだ。非常にドライなスパークリングワインともいえる。プロセッコが良いと思うかどうかは、このドライさを肯定するか否定するかにかかっている。夏みかんの酸味のようなスパークリングワインがお望みなら、プロセッコは掘ってみる値打ちのあるジャンルだと思う。
 
 

とはいえ、ワインなので無制限に飲むでなく、節度あってのもの

 
こんな感じで、シャンパン以外にも良いスパークリングワインは色々あり、最近はシャンパンの価格もだいぶ上がっているので、自分の好みにあったスパークリングワインを買い抜けたいところだ。ヴァン・ムスーのような安めのスパークリングワインでも、夏の暑い日に野点で飲めば気分は最高だ。
 
とはいえ、スパークリングワインといえどもワインのはしくれなので、節度なく飲むのはご法度というもの。適量をわきまえ、ワインと自分自身をいたわるように飲むのがいいと思う。
 
※ワインもアルコールが入っているので20歳になってから。妊娠中の人は飲んではいけません。アルコールに対して節度が保てない人は飲むべきではありません。また、暑い季節のワインは痛みやすいので、ネット通販で購入する際はかならずクール便にしましょう。
 
 

*1:10-12度

*2:ヴァン・ムスーやスプマンテは、自国のより高級なスパークリングワインとの差別化の意識が感じられ、日常酒としての枠をはみ出さないつくりになっていると感じる。この感覚が、新世界のスパークリングワインにはあまり無い。