シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

FGOの最新クエストはまさにビジュアルノベルだった

 
先日、Fate Grand Order (FGO) は、2000万ダウンロード記念のキャンペーンを発表した。良くも悪くも90年代~00年代のオタクのノリがちりばめられたソーシャルゲームがこんなにヒットするとは驚きだ。そして嬉しい。ひいきの野球チームが優勝するのを見るのに近い喜びがある。
  
で、FGOのメインクエスト第二部の最新話をさきほど読み切った。
 

 
すごく良かった! これこれ、こういうの! 賛否のありそうなストーリーを描ききった制作陣には、感謝するほかない。こういうテキストを、最新作として2020年に読ませてもらえるなんて! ありがとうありがとう!
 
FGOのクエストには「90~00年代のヴィジュアルノベルらしさに満ちたメインクエストやイベントクエスト」を旅行するような趣があると、いつも感じていた。そういう、ちょっと古くさいクエストのお伴として、2010年代のキャラクターらしいマシュがついてきて、新旧の混じった雰囲気ができあがっている──それが、ヴィジュアルノベルの末裔としてのFGOに対する私の印象だった。
 

(マシュのおかげで、FGOの道中は新しくて古い、古くて新しい雰囲気になっているのだと思う)
 
メインクエストの行方はしれない。『痕』や『Air』や『ひぐらしのなく頃に』がそうであったように、FGOもまた、ストーリーが予定調和におさまらず、とんでもない方向に大風呂敷が広がっていく感じがある。予定調和を期待していた人があんぐりするような、ひょっとしたら呆れてしまうようなリスクを冒してFGOのストーリーは進んでいく。
 
最新話のロストベルト第五章・オリュンポスも、そんなメインクエストだった。FGOにはネタバレを避ける文化が強く残っているので内容には触れられないが、これまでのFateのフィールドから大きくはみ出し、天文学的スケールの物語へと風呂敷を広げていった。冬木という、日本の一都市を舞台としていたFateが、FGOとなって世界じゅうを旅するようになり、だいぶ慣れていたつもりだったが、ロストベルト第五章には今までの路線では想像していなかった描写・戦場・兵器(?)が次々に登場した。
 

 
それでいて、今までのストーリーを振り返ってみれば、第五章の展開はあり得たもの、描かれてもおかしくないものでもあった。こうなるフラグや伏線があったのに、実際に読んでみてびっくりしたのは、ヴィジュアルノベルでは嬉しい展開だ。そういう展開に出くわしたので、「やったぜ! やっぱりFGOはヴィジュアルノベルだ!」と大きな声で叫んでしまった。
 
 

FGOで広がるヴィジュアルノベル、オタク古典芸能

 
もちろん、FGOで表現されているものがヴィジュアルノベルのすべてだ、などと言いたいわけではない。言えるわけもない。
 
それでも、FGOをとおしてヴィジュアルノベルの色々が表現されているのもまた事実で、FGOが大ヒットしてくれたおかげで、そうしたカルチャーや様式が令和時代に伝播している。ヴィジュアルノベルの最盛期にオタクをやっていた身としては、このことも嬉しい。
 
FGOは、メインクエストでも平然と昔のノリを混ぜ込んでくる。
 

 
先日までアニメになっていた、第一部第七特異点バビロニアでも、シリアスなストーリーのなかに、このようにふざけた存在を平然と混ぜ込んできて、それでひとつの世界をつくりあげてしまっていた。こういう存在を混ぜ込むつくりは、たとえば私のような古いファンからは好評かもしれないが、嫌いな人は嫌いかもしれない。ところがFGOはためらわず、果敢に、ふざけた存在を平然と混ぜ込んでくる。
 
イベントクエストともなれば、二次創作のノリでやりたい放題・悪ノリし放題である。これまた、慣れている人にはご褒美だが、果たして、初見の人はあのノリをどう受け取るのか。
 
FGOで初めてFateに触れたプレイヤーは、本当のところ、あの昔ながらのノリ、ファンディスク的なノリをどのように捉えているのだろう? 本当は嫌悪している人も多いのか? それとも、他のソーシャルゲームもはっちゃけたイベントを開催している昨今だから、ごく自然に受け取っているのだろうか?
 
ともあれ、FGOはFate以前から存在していたヴィジュアルノベルのカルチャーを引き継ぎ、発展させ、大きなコンテンツとして命脈をたもっているのだから、オタク古典芸能の継承者・伝道者としてありがたいと思う。メインクエスト第二部・ロストベルトも佳境に入った感があり、この、広げまくった大風呂敷をどのように折りたたむつもりでいるのか、これからが楽しみでしようがない。
 

 
 

ガチャという難しさを伴ったゲームではあるけれども

 
FGOには「ガチャを回させるソーシャルゲーム」としての側面があり、不幸なことに「ガチャを回すというより、ガチャに回されているプレイヤー」も目につく。そういう意味ではFGOはやさしいゲームとは言えない。個人的には、もうちょっと制御しやすいゲームになって欲しいと願っている。
 
でも、そうした側面があるとはいえ、クエストで綴られる物語は貴重な何かだ。過去のオタクカルチャーを偲ばせると同時に、新境地を切り拓いていく何かでもある。ロストベルトの物語は、そのような大風呂敷として満開を迎えようとしているので、これを見届けるまでFGOはやめられそうにない。
 
なお、FGOは4月29日から2000万ダウンロード記念キャンペーンと称する豪勢なイベントを展開するという。ヴィジュアルノベル文化が嫌いでない人は、これを機会に触ってみてもいいかもしれない。いいヴィジュアルノベルだと思うけれども、ガチャには本当に気を付けて。
 
 
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