シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

「steamのセールだから買う」は良くない習慣だと思う

 
 
 
 我が家では、ここしばらくゲームショップの店頭でゲームを買っていない。ときどきAmazonで買うことならあるが、大半はダウンロード販売で済ませてしまっている。
 
 なかでもPCのゲームを買う時は、steamというプラットフォームに頼りきっている。
 
 store.steampowered.com
 
 PCで遊びたくなるようなゲームはだいたいここにある。しかもクリスマスをはじめ、年に何度かのセールの時は非常にお買い得な値段がついているから、つい、ゲームを買ってしまいたくなる。PCゲームには、1つのタイトルで100時間ぐらい遊びたくなる大作も多いので、セールの時に大量購入すれば10年間はゲームに困らないほど買うことだってできるだろう。
 
 steam上でゲームを買っておけば、かさばらないし、他のPCに移ってもすぐダウンロードできるし、便利なことこのうえない。
 
 

「家族みんなsteamのセールの虜」

 
 ただ、steamというプラットフォームが我が家に定着して、少し、困ったことが起こりはじめている。
 
 というのも、嫁さんや子どもがsteamのセールをあてにしてゲームを買うようになった……だけでなく、「steamのセールだから買う」という習慣を身に付けはじめているからだ。
 
 セールになっている時のsteamのゲームは安い。
 
 最新作の値引き率はあまりあてにならないけれども、数年前にリリースされたゲームなら、傑作や大作でも非常に安い価格で購入できる。追加ダウンロードコンテンツのたぐいを省いた場合は、特にそうだ。
 
 そういった、異常な安さで名作が揃い踏みしているセールを目の前にして、「セールだから買ってしまおう」という感覚で嫁さんや子どもがゲームを選んで、実際に買い求めておく(ときには「いずれ遊ぶためにと称して買っておく」)ことが、私には怖く感じられるのである。
 
 半額とかセールとか、そういう言葉にもうちょっと耐性つけてくれよー。
 
 

「値段の安さ」でゲームを選んではいけない

 
 steamのセールに限らず、いまどきは高品質なゲームを低価格で手に入れるのはそれほど難しくは無い。Nintendo Switch Onlineが提供しているファミコン時代のゲームだけでも、名作の数々を安い利用料で遊ばせてもらえる。いまどき、ゲームに大枚をはたかなければならないのは発売直後のゲームとソーシャルゲームの有料アイテムのたぐいぐらいだ。
 
 そして格安の名作たちの外側には、在野のフリーゲームがたくさん控えている。
  
 そういう時代だからこそ、ゲームは価格の安さで選んではいけないのではないだろうか。
 
 steamでは顕著だけど、いまどき、セールでお買い得だからと名作に手をつけてまわると、金額的限界を迎える前に時間的限界にぶちあたる。そして未プレイのゲームが溜まり、ゲームオタクの言葉でいうところの「積みゲー」状態になっていく。
 
 かつての「積みゲー」は、まさに「ゲームが積みあがる」ものだった。パソコンゲームの大きなパッケージをたくさん買おうものなら、たちまち本棚や押し入れを占拠し、やがて部屋の床にも積まれていく。積みあがったゲームが崩れて大変な思いをしたことのある愛好家も珍しくないはずだ。
 
 ところがダウンロード販売が普及したことによって、「積みゲー」が本棚や押し入れを占拠しなくなり、空間的限界が解決してしまった。
 
 なまじかさばらないから、いくらゲームを「積みゲー」しても平気になってしまっている。そのうえセール期間には非常に安くゲームを売ってくれるので、「セール期間に買わなければ損」といった気持ちになってしまうから性質が悪い。自分の意志できっちり歯止めをしなければ、なし崩しにゲームを買ってしまう。
 
 現在のゲーム愛好家にとって本当にボトルネックになり得るのは、金銭的限界ではなく空間的限界でもなく、時間的限界、あるいはアテンションの限界だろう。だとしたら、セール期間にやたらとゲームを買い込み、時間的限界やアテンションの限界に予約的圧力をかけるのはそれほど「コスパ」の良い習慣ではない、という風に私は思う。
 
 もちろん、それが狙いに狙った購入である限り、セール期間にゲームを買うのはあらゆる意味でお買い得と言えるだろう。それでも、価格の安さに目を奪われ、「セール期間に買わなければ損」と称してもともと買わない予定だったゲームまで積んでしまうのは、ゲームが氾濫する2019年においていかがなものだろう。
 
 steamのセールに魂を奪われる家族の姿を見ていて、そんなことをよく思う。早くセールに対する免疫をつけてもらいたい。
 
 
 補足:「積みゲー」の動機として「お布施」を挙げる人もいるかもしれない。その感覚はわかる。私だって『シュタインズ・ゲート』や『斑鳩』は複数のゲームハードで何度も買ってきたし、ケイブやタイトーのシューティングゲームも「お布施」感覚で購入してきた。「お布施」の話も、これはこれで長くなるのでまた別の機会に。