はじめに断っておくと、これは、books&appsを賛美する文章だ。2023年現在、ブログ文化の精髄として、ブロガーの書いてきたものの一番おいしいところを集めたコレクションとして、books&appsは唯一無二の発信場所になっている。
今回、そのbooks&appsを讃えるいい機会が巡ってきた。いい機会とは、books&appsの大将であり、ご自身も記事を書いていらっしゃる安達さんが新著を出したのだ。
この本にはコミュニケーションについてのノウハウがさまざまに記されていて、そのコミュニケーションが思考や人脈や仕事とも関連するさま等々が書かれている。が、そのあたりを宣伝するのは他の人に任せておくとして。
それよりbooks&appsについてだ。
books&appsとは、この本の著者である安達さんが様々なブロガーに声をかけて運営している、ブロガーを寄り集めたような発信場所、それかブログ共同体のようなメディアだ。このbooks&appsはもちろん営利企業によって運営されていて、たとえば文末に広告などが入るなど、それなり企業メディア然としている側面もある。
とはいえ、先週から今週の記事タイトルを列記してみれば、これが、よくある企業メディアとは違うさまがよくわかる。
海外で日本のやり方を押し通そうとするとどうなるか | Books&Apps
女性インフルエンサー「H」についての記事を書いたら、Googleから警告が止まらなくなった話。 | Books&Apps
「どうにも成長しないし、意欲も低い部下」をどうすべきか? | Books&Apps
思春期モラトリアムは資本主義に吸収されました。 | Books&Apps
どんなに非生産的で、バカバカしくて、無駄だとしても、誰かのプライドは地球よりも重苦しい。 | Books&Apps
なぜ「ChatGPTは、使う人次第で能力が大きく変わる」のか、使ってみてはっきりした。 | Books&Apps
いつ、だれが、天皇を「特殊な存在」にしようと目論んだのか? | Books&Apps
このように、内容がまったくバラバラだ。
いちおう、books&appsのトップページには「ビジネスパーソンを励ますwebメディア」と書いてあるし、確かにビジネスに関連した記事がやや多めかもしれない。しかし天皇制がどうこう、人生の虚しさがどうこう、反資本主義がどうこう、といった具合に全くビジネスパーソンを励ましていない記事だって少なくない。
結果、books&appsはブログ記事のビックリ箱のようなていをなしている。いや、だから面白いとも言えるし、往年の個人ブログのテイストが保存されている。
books&appsはブログ文化の守り手になっている
2023年現在、books&appsはブログ文化の守り手になっている──私がそう思う理由がいくつかある。
ひとつはbooks&appsがブログ記事のパトロンとなっている点だ。今、books&apps以上にブロガーやブログのパトロンとして機能しているメディアや場所があるだろうか。
私も含め、寄稿しているブロガーはそれなり稿料をもらっていると思う。稿料としては十分だと思うし、なにより、記事のテーマが完全に自由裁量となっている点が凄い。だから何を書いてもいいし、ブロガーそれぞれの得意技や持ち味を存分に発揮できる。ブログ記事としての面白さを表現しているなら、1980年代のゲーセンのゲームについて書いても、ラテン語入門講座を書いても、寄稿記事として掲載してくれるだろう。
その度量の深さには何度も助けられたし、変に気負わずに文章を作成できる。と同時に、自由裁量をくださっているからこそ、その思いに応えたいという気持ちが沸く。少なくとも私はそうだし、他の寄稿者にもそう思っている人はいると思う。
ふたつはbooks&appsがブロガーの記事を世に出し、読んでいただく重要な場となっている点だ。
ブログ文化がインターネットの最前線だった00年代から長い時間が経ち、ブログは、他のネットメディアに比べて目立たない存在になった。この『シロクマの屑籠』も、最盛期に比べればPV数が減少してしまった。ブロガーの文章をたくさんの読者に届ける難易度は高くなっていると言わざるを得ない。
そうしたなか、books&appsに寄稿した記事なら広く読まれる可能性がある。books&appsは複数のブロガーから成り立っていて、それぞれが記事を持ち寄っているので、毎日更新しなくてもPV数が維持されやすい。twitter、Facebook、はてなブックマーク等々、読者の流入経路もさまざまで読者層も案外広そうにみえる。
現在のbooks&appsは、質的にも量的にも自前のブログとは異なった読者層にリーチする可能性を提供してくれている。ブロガーたるもの、なんやかんや言っても自分の記事がたくさんの人に読んでもらえるなら嬉しいし、それが明日のモチベーション源にもなる。また、私のような書き手にとっては、意外な縁を運んできてくれるチャンスともなる。万単位のPVをかなり高確率でつかめる可能性、さまざまな読者層にリーチする可能性を提供してくれるのはなんともありがたいことである。
みっつに、books&appsをとおして、競争意識や同朋意識のようなものが得られている点だ。
books&appsの寄稿者のブロガーとしての出自はさまざまだ。私やfujiponさんのようにはてなダイアリー出身の者もいるし、雨宮紫苑さんやマダムユキさんのように出自の異なるブロガーもいる。ときには長文をもって知られるpatoさんが記事を寄稿していることさえある。
そうしたわけで、books&appsに寄稿するとは、ブロガー選手権、ブロガーリーグに臨むような側面を兼ね備えている。安達さんからは「PV数を意識する必要はない」と告げられているけれども、とはいえ、出自もスタイルも異なるブロガーがこうも集まっている以上、競争意識が働いたり同朋意識が働いたりする側面は間違いなくある。私にとってこれも丁度良いモチベーションだ。プレッシャーというほどきつくないし、ダラけてしまうほどぬるくない。そうしたわけでPVが少なかった寄稿の後には、ちょっと残念な気持ちになる。そして他のブロガーの記事が満塁ホームランのように注目され、twitterなどで話題になっているのを見ると、適度に「おれも花火を打ち上げるぞ」と思うことができる。
こういう気持ちになれるのは、同じリングに上がらせてもらっているからであり、同じメディアに寄り集まっている者同士だからでもあると思う。そしてbooks&appsの寄稿者同士は、ブロガーとして同朋だと私は思う。スタイルも内容も違っているが、自分たちはライバルであり仲間だ。今、ブロガーとしてそのように思える場所は思うほど残っていない。
こんな「ブログコレクション」は他所にはありません
寄稿者としての私は、こうして恩恵を受けながら書いているから、もう率直に感謝している。感謝しているからbooks&appsを翼賛せずにはいられない。
と同時に、そうしてブロガーの寄稿記事を蒐集し続けることでbooks&appsは、ある種のブログコレクション、またはブロガーコレクションとでもいうべきアーカイブとして屹立している。
books&appsのブロガーの選考基準は、私にもよくわからない。
ただ、これだけは間違いなく言えると思う。books&appsは、PV至上主義というにはあまりにも色々なブロガーを寄稿者として採用している。その結果、独特の、なんともいえない雰囲気を醸し出している。たぶん、運営している安達さんなりの基準、または選好があるのだろう。
どうあれbooks&appsは「安達コレクション」とでもいうべきブログの宝石箱となっている。自分自身が寄稿しているブログメディアを宝石箱などというのは偉そうなことだが、いやしかし、books&appsに並ぶ記事とその寄稿者を見ていると、そういう比喩をしたくもなる。
不偏不党のコレクションでも、世界一のブログの宝石箱でもないかもしれないが、とにかくもbooks&appsは宝石箱と比喩したくなるようなブログ記事とブロガーのアーカイブをなしている。books&appsは安達さんが事業とリンクさせながら手塩にかけて蒐集したアーカイブであり、世界でここにしかないアーカイブだ。
もしあなたが、books&appというブログコレクションに不満があるなら、安達さんのようにブロガーとブログ記事を収集するコレクターになって欲しいと思う。そしてパトロンとなって、ブログ文化を保護し、盛り上げてほしい。個人的なセレクションとはいえ、安達さんがbooks&appsをとおしてやってらっしゃる活動は、ブログ文化の保護と発展に寄与するものだ。ここまでできる人、できたとして実行する人は滅多にいない。だから寄稿者の一人として深く感謝している。感謝以外の気持ちはあり得ない。
末永い活動を。私たちも精一杯記事をお届けしますので
真面目なことも、しょうもないことも、ビジネスなことも、ゴシップなことも詰まっているbooks&apps。そのありよう自体もブログ然としていて、往年のブログ文化の精髄がここに集まっていると思う。私は、それを素晴らしいともありがたいとも思う。主催者のセレクションがこのようなかたちでクッキリ反映されたブログメディアは日本では唯一無二だと思うので、どうか長続きして欲しいし、ますますの発展を祈らずにはいられない。
いや、私だって寄稿者の一人なのだから、お祈りするだけでなく、精一杯書いて盛り上げていきたいと思う。私はbooks&appsを応援しています。
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