シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

アニメ版『転スラ』が力尽きていた件

 

転生したらスライムだった件 1 (特装限定版) [Blu-ray]

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 当初予想のとおり、アニメ版『転生したらスライムになっていた件』(以下、『転スラ』)はなかなかよくできていた。
 
 『小説家になろう』版は嫁さんのお気に入りのひとつで、「必ず試してみなさい」と言われていた。はたして、展開良し、ギミック良し、キャラクターはみんな個性的。シズさんや暴風竜ヴェルドラのような大物だけでなく、細かいキャラクターの見せ場も面白く、とても良かった。
 
 第1クールはオークロード討伐の話でまとまっていて、良い意味でなろう小説のご都合主義が結実したような内容に満足した。
 
 第2クールも、魔王ミリムがひたすらかわいく、ご都合主義といえばご都合主義かもしれないが、よく磨き抜かれたご都合主義でのどごしが良かった。うんうん、こういうのでいいんだよ。
 
 ところが第2クールの終盤、なんだかよくわからなくなった。
 
 原作の尺から察するに、2クールアニメとして『転スラ』をまとめるのは容易では無かったと思われるけれども、それにしても、正規ストーリー最終話にあたる23話は、過去のカットの使い回しに満ち満ちていて、本当にこんなものを最終回にしたかったとは思えない内容だった。
 
 続く外伝24話、外伝25話。
 
 外伝24話はシズさん大活躍でそれなり楽しかったけれど、わざわざ放送しなければならない必然性がよくわからなかった。間に合わせとして挿入された外伝ではないのか?
 
 なにより外伝25話!
 
 過去のカットの使い回しをひたすら映しながら声優さんが頑張るという、シュールな内容! 二期放送の決まった人気作の最終話とはとうてい思えない暴虐っぷりで、びっくりさせられてしまった。
 
 第2クールの途中までのアニメのクオリティと『転スラ』自体のハイクオリテティを考えるに、この23話~25話はちょっとおかしい。少なくとも、放送当初からこんな23話~25話を放送したいと思っていたとは考えられない。
 
 深夜アニメでは、こういう、「放送当初からこんな話を放送したいと思っていたとは考えられない」話が混じることが時折あるけれども、『転スラ』でそれに出遭うとは予想していなかった。
 
 人気作において、このような23話~25話をオンエアーせざるを得なくなった関係各位の気持ちは、推して知るべしだろう。なんらかのトラブルがあったのかもしれない。
 
 クオリティが落ちてしまったことを嘆く気持ち以上に、『転スラ』制作陣が力尽きてしまったであろうことに思いを馳せ、念仏を唱えたい気持ちになってしまった。
 
 

がんばれ『転スラ』2期

 
 それでも『転スラ』は2期作成が決まっているという。
 
 アニメの2期は、1期に比べて台所事情が厳しくなるのかもしれない。それでも、『転スラ』はキリのいいところまで終わっていないのだから、どうにか頑張って欲しい。この、とても作り込まれたご都合主義と、なんとも魅力的なキャラクター達をもってすれば、リソース少なめでもなんとかなるかもしれない。……というか、なんとかなって欲しい。
 
 世の中には、低予算でも作品としての体裁を見事にまとめあげたものもあるけれど、一般には、そこまでのクオリティを2期アニメに期待するのは酷だろうとは思う。それでも、今回の『転スラ』23~25話のように「完走した」というよりは「棄権せざるを得なかった」ような転帰では困る。
 
 『転スラ』2期の制作に携わる方々におかれては、今は英気を養いつつ、破綻しないような構想を練っていただきたいと思った。