(※この文章には『けものフレンズ』のネタバレが少し含まれます。これから観る人は、まだ読まないほうが良いと思います)
- アーティスト: どうぶつビスケッツ×PPP
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2017/02/08
- メディア: CD
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『けものフレンズ』最終話まで観終わった。話題沸騰だったおかげか、早くも次回映像(二期?劇場版?)の予告も出ている。ありがたいありがたい。
予想を大きく逸脱した最終話ではなかったと思う。SF的な世界背景をチラチラと見せつつも、『けものフレンズ』というタイトルどおりの内容に踏み留まり、そこを徹底的に磨き上げていた。ヴィジュアルノベルにありがちな大どんでん返しを仕掛けず、直球勝負で挑んできたことを考えると、続編でもフレンズがかわいそうなことになる可能性はあまりないと想定される*1。
たくさんの視聴者を引き付ける作品にはありがちなことだが、本作も当初、なかなか罪作りな作品のようにみえた。ケモナー、SF愛好家、ディストピア愛好家、“考察班”、癒し系まったりアニメ愛好家、等々の人達が、それぞれの視点から、それぞれの『けものフレンズ』を楽しんでいた。同じ作品を愛好しているたくさんの人々が、違った角度から、違った言葉でこの作品を称賛していた。
よほどうまくいかない限り、いや、うまくいったとしても、この作品への評価は後半に進むにつれて割れるだろう――そんな風に私は思った。事実、作品が後半に進むにつれて、twitter越しに聞こえてくるつぶやきは、それぞれの視点からストーリー展開を固唾を呑んでみている雰囲気になってきた。自分が思い描くような結末に落着するかどうか、皆、気にしているようだった。
そのさまは、『けものフレンズ』という作品に、思い入れのチップを賭けてルーレットを回しているようにも見えた。特定の展開・特定のエンディングを期待している人が、まるでルーレットの目にチップを積み上げている博徒のようにもみえた。予想が外れても楽しそうな人もいる反面、予想が外れたらがっかりしそうな人もいて、なんだか、アニメそのものの成り行きと同じぐらい、最終回終了後の視聴者の反応が気になった。
ほとんどの視聴者を包み込んだ最終回
ところが、けものフレンズの最終話が放送されてみると、twitterのタイムラインは幸福な声に包まれていた。ごく一部、過剰な作品への思い入れと実物の齟齬に怒りの声をあげている人もいたものの、ほとんどが賛意や祝福の声で、賛否両論ではなく、諸手を挙げて歓迎しているような内容だった。
アニメに限らず、一般に、たくさんの人々の思い入れを集めた作品、特にいろいろな視聴アングルを引き受け、それら全部の依り代となった作品は、どうしたって誰かのことを、いくらかの割合で裏切らずにはいられない。
たとえば、作品にハードなSF的展開を期待している視聴者と、癒し系まったりな展開を期待している視聴者の両方を引き受けている作品は、ストーリーがどちらに転んでも、どちらかの視聴者の期待を裏切ってしまう可能性がある。かといって、へたに真ん中を行こうとすると、今度は「中途半端」という批判が飛んでくる。どこに向かってストーリーを走らせたとしても、一定程度には「裏切られた!」という声は避けがたい。
ところが、『けものフレンズ』にはそれが少なかった。心温まるストーリー展開とキャラクターの活躍を第一としつつも、SF的な考察の余地も残し、懐の大きな作品の、懐の大きさそのままに大団円を迎えた。それぞれの視聴者には、それぞれの“けものフレンズ観”“ジャパリパーク”観があるだろうに、「感想が割れる」事態に至らなかったのは驚異的としか言いようがない。ストーリーラインやキャラクターの所作の作り込みや、謎かけ/回答提示の手綱さばきが抜群だったからこその快挙だろう。かくして、『けものフレンズ』は2017年の記憶に残るアニメ作品となった。
続編を観たいような…観たくないような…でも観たい!
続きがあると言うけれども、このまま完結するのも悪くないなとも思った。TV版全12話で円満にできあがっているところに、これ以上何かを足して、蛇足になってしまったらもったいない気がするからだ。
さりとて、劇場版なり2期なりがあれば、尻尾を振って観に行かざるを得ない。かばんちゃんやサーバルちゃんが活躍するところを、やっぱり観たいからだ。それと、背景世界に不穏な空気が漂っていても明るく楽しく、お互いの長所をたたえ合いながら笑いあって過ごしているフレンズのみんなも観てみたい。
ここまで書いてみて、ああ、このアニメ本当に終わってしまったのか、毎週楽しみにしていたんだなぁと痛感した。今も、頭の中に「ようこそじゃパリパークへ」がリピートして止まらない。制作者の皆さん、ありがとう! 本当に良いものをみせていただきました。
*1:かばんちゃんが厳しい事実に直面する可能性は、十分にあるけれども