- アーティスト: どうぶつビスケッツ×PPP
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2017/02/08
- メディア: CD
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私も、飛び火のように広がる『けものフレンズ』(アニメ版)を観るようになってしまった。
丁寧でかわいらしい絵だが、ゆったりとした雰囲気のところどころに不穏な雰囲気が埋め込まれていて、続きが楽しみだ。固唾をのんで追いかけていこう。
それより、『けものフレンズ』を観ていて強く感じるのは、「すごーい!」って、気持ちの良いことなんだなぁ、ということだった。
インターネットでは、人間の欲求として承認欲求がよく挙げられる。承認欲求を充たすってのは、いわば、自分自身が「すごーい!」と言われてハッピーになったり自尊心を回復したりするような、そういう充足感だろう。
だが、このアニメでは「すごーい!」と言われる側・感心される側がハッピーになるよりも、「すごーい!」と言っている側・感心している側がハッピーにみえる。「すごーい!」と言われる側よりも、「すごーい!」と言っている側のほうが楽しげで、観ているだけで幸せで、自分もそんな風に言いたくなる。
「フレンズ」という言葉にしてもそうだ。
誰かからフレンズと呼ばれるのもハッピーだが、このアニメでは、フレンズと呼ぶ側も楽しげで、幸せそうにみえる。サーバルちゃんの魅力のかなりの部分は、彼女がお世辞でなく本心から他者に感心し、他者に驚き、他者をフレンズと呼べるところにあると思う。
この作品を眺めていると、そういう「すごーい!」や「フレンズ」な欲求のツボが刺激されて心地良い。ネット上で、彼女達のセリフを真似ている人が増えているのもわかる。承認欲求にとらわれている時は忘れがちだが、誰かに感心すること・誰かに驚くこと・誰かと仲間意識を持つことは、根源的には気持ちの良いことなのだ。
この充足感の正体は
他者から「すごーい!」と言われたがるのは承認欲求だが、じゃあ、他者に「すごーい!」と言うのはどういう欲求だろうか。
言いようはいろいろあるだろうが、自己心理学風に言うなら理想化自己対象体験、マズロー風に言うなら、一応所属欲求になるだろう。「フレンズ」と呼びたくなる欲求は、もろに所属欲求に該当する。
もちろんこの作品にも、自分に似ているところのあるキャラクターに自己投影することで、承認欲求っぽい気持ち良さを疑似体験できる仕組みはある。かばんちゃんで「○○の叡智!」などと感じるのは、その最たるものだろう。
それにしたって、長所も短所もある者同士が感心しあい、助け合い、フレンズと呼び合うことが、こんなに気持ち良いだなんて! 日頃は自分自身の承認欲求にとらわれている人でも、この作品を観ている時は「すごーい!」や「フレンズ」の充足感を思い出せるんじゃないだろうか。
所属欲求がキュンキュン音を立てるアニメは、今に始まったものではない。たとえば『けいおん!』や『ガルパン』などにもそういう要素は少なからず含まれている。でも、これほどの純度で「すごーい!」や「フレンズ」の充足感を溢れさせている作品は、あまり無いんじゃなかろうか。
今後のストーリー展開はさっぱり読めないけれども、難しい考察は他の人に任せておいて、今は「すごーい!」や「フレンズ」の充足感に酔っぱらっていたいと思う。来週も楽しみにしよう!