シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

Elite Dangerous(エリデン)は、宇宙ごっこ遊びゲームとして最高

 
今年は『フォートナイト』『リングフィットアドベンチャー』『Fallout4』と、傑作級のゲームに次々に出会った。でもって、2020年の終わりにヤバい宇宙ゲームに出会ってしまった。11月からこのかた、ゲームはこればかりやっている。
 

 
この『Elite dangerous(国内通称エリデン、以下、エリデンと表記)』は銀河系を舞台にしたMMOだ。太陽系を中心とする直径数百光年の人類圏とその外側に広がる深宇宙のなかで、プレイヤーは何をやって過ごしても構わない。
 
国産のゲームに比べて、海外系のゲームは「何をやってもいい」自由度が高めのことが多いけれども、この『エリデン』も「何をやってもいい」感が高くて、プレイヤーは宇宙で貿易をやってもいいし、軍人や宇宙海賊になってもいいし、深宇宙を探索してもいい。なんならPK(プレイヤーキル)だってできる。PKにはペナルティがつくけれども、このゲームではそれほどでもない。ただし、PKされては困るというプレイヤーはソロモードを選べば他のプレイヤーにキルされずにプレイできる。ソロモードとはいうけれど、銀河系の物資の流れや政治情勢、深宇宙の探索状況などは他のプレイヤーと共有されるので、それなりMMOっぽさはある。気分や都合で両方のモードを行ったり来たりすることもできる。
 
これだけだったら、たぶん私はこのゲームにドはまりしなかったと思う。というか宇宙MMOには『EVE ONLINE』という有名タイトルがあって、しかも先月とうとう日本語化が実現したという。でも『EVE ONLINE』はあまりに大規模過ぎて、あまりに本格的過ぎて、下調べしてもプレイするための一歩が踏み出せなかった。なんというか、『EVE ONLINE』を見ていると、"現実的な"ゲームの予感がする。
 
対してこの『エリデン』は、下調べの段階から空想的・妄想的なゲームの予感があった。ちょうど4年前、星間国家シミュレーションゲーム『Stellaris』の良さとして、私は「宇宙探索や宇宙艦隊の妄想に耽りながらぼんやりできるゲーム、星間国家の“ロールプレイ”に夢中になれるゲーム」を挙げたけれども、そう、私にとって宇宙ゲームとは"現実的"であるより"妄想的"であるべきなのだった。ゲームバランスや操作性にちょっとぐらい問題があってもいいから、空想力や想像力を刺激するようなゲーム、もっと言うと、自分自身のごっこ遊びに集中できるゲームであって欲しいと(ファミコン時代の)『スターラスター』の頃から思い続けてきた。
 
で、『エリデン』はそのあたりが素晴らしい。
プレイしている間、宇宙交易ごっこや宇宙探索ごっこ遊びに完全に没入できる。
 

 
ゲームの主な舞台となる人類圏は数百光年の広さだが、銀河全体に比べればぜんぜん狭い。このゲームでは、銀河全体で4000億の星系があり、そのほとんどが今でも未踏の地になっている。人類圏に比べて深宇宙があまりにも広く、プレイヤーの数もそれほど多くないのでこの状態がずっと続くだろう。かといって無限の広さというほどでもなく、他のプレイヤーの探索の痕跡はそれなり目につくし、自分が探索した痕跡もきっと誰かが見つけてくれる。
 

 
しかも恒星系や惑星のデザインがバリエーション豊かで、それぞれの星系の星々や宇宙ステーションが公転しているおかげで景色がしばしば変わる。先日も、ガス惑星同士が衝突する出来事がゲーム内で起こったという。こういう投げやりな緻密さとバリエーションの豊かさはとても嬉しい。美しく珍しい風景を探すために宇宙を旅しても十分報われるぐらいだ。
 


 
超光速航行(ワープ)の入口と出口の演出もなかなか良い。超光速航行を終えた宇宙船は、星系でいちばん大きな恒星の目の前に飛び出してくるのだけど、これがドッカンドッカンしていて毎回気持ち良い。青い巨星や中性子星の前に飛び出してきた時には、あまりの眩しさにのけぞりたくなる。エリデンはVR対応なので、VRでワープアウトを経験したらもっともっとインパクトがあるに違いない。
 

 
しかも無限にも等しいひとつひとつの星々に細かなデータが記載されている。こういうデータの羅列のおかげで、宇宙にたいする空想力や想像力に神が宿ってしようがない。しかもデータは単なる羅列ではなく、星系マップを売る際の値段にも関わってくるので、じきに星のデータを読み取るようになる。これがまた、宇宙探索者気分を盛り上げてくれる。
 

 
人類圏でのプレイも興味深い。
人類圏には複数の政治勢力があって、それぞれの政治勢力のなかにも複数の派閥があり一枚岩ではない。経済もプレイヤーの活動によって動いていて、MMOっぽさ、もとい、人類圏らしさが感じられる。小さな星系なら、一人ひとりのプレイヤーの活動でも政治状況がかなり変わってくれる。宇宙の政治バランスがひっくりかえるほどの変化はないにせよ、そういう変化を眺めていると宇宙MMOを遊んでいるという実感がある。
 
 

ただし人を選ぶゲーム。操作系と英語には苦労するかも

 
そんなわけで、宇宙が好きな人にはすごくオススメしたいのだけど、このゲームにはハードルが高いところもある。
 
まず、このゲームは日本語化されていない。英語ができなければ遊べないほどではないけれど、このゲームの世界観は英語で綴られた文章やアナウンスにも支えられているので、ある程度、英語がわかったほうが没入しやすいと思う。情報収集する際にも英語圏のお世話になることが多い。
 
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操作系も、嫌いな人には嫌いなタイプだ。自分の知っているゲームでいえば『スターラスター』や『エースコンバット』の感覚に近く、見ているだけで気持ち悪くなってしまう人もいるだろう(上掲動画を参照)。宇宙船に慣れるためのチュートリアルもところどころ不親切で、たとえばチュートリアルのコースから一度コースアウトしてしまうと困ってしまうかもしれない。また、現在の日本語版wikiの記載とは違って*1、戦闘も含めた長いチュートリアルを履修しなければゲーム本編を遊ばせてくれないので「離着陸の練習だけやって、とりあえずゲームを始める」という手軽さがない。
 
正直のところ、宇宙を妄想したい強いモチベーションがないとチュートリアルの段階で投げ出してしまうおそれがあると思う。
 
また、コンソール上のカーソル移動も直感的とは言い難い。あるものはカーソルキーで、別のものはQ・E・W・Sキーや1・2・3・4キーでカーソルを移動させる。親切なゲームに比べると、インターフェースに慣れるのにどうしてももたついてしまう。地上を探検する車両の操作も宇宙船とぜんぜん違う設定になっていて、びっくりしてしまった。
 

※宇宙船とまったく違う操作系の地上探索用車両。もうちょっとなんとかならなかったのか。
 
超光速航行-星系内でのスーパークルーズモード移動-ステーションや惑星への着陸モードの切り替えもわかりにくかった。『エリデン』の宇宙フィールドは入れ子状の構造になっていて、たとえば目当ての星系の目当てのステーションにたどり着くためには【超光速航行で星系を飛び回る銀河マップから→複数の星やステーションが配置された星系フィールドに移動し→ステーションの周回軌道や星の軌道フィールドに飛び込んで着陸】という手順を踏まなければならない。ドラクエで喩えるなら、外のフィールドから街フィールドに入って、そこから街のなかのダンジョンに入る感覚に近い。
 
ところが移動の途中で巨大惑星の重力圏に引っかかってしまうと、その星の軌道フィールドに「落ちてしまう」。このあたり、慣れてしまえばどうってことないし、星の重力圏に引っかからないように心掛けるようになってかえって宇宙を旅している実感がわいて良いのだが、はじめて星に捕まってしまった時は慌てる。twitterを見ていると、星に捕まって「落ちてしまう」感覚に戸惑ってしまったり、脱出方法がわからなくて投了してしまったりしたプレイヤーもいる様子だった。
  
落ちてしまうといえば、地表着陸もなかなか難しい。
  

(昼間の地表着陸。迫ってくる地面が怖い)

(夜の側の地表着陸。真っ暗闇で、激突しないかヒヤヒヤする。本当にここで大丈夫か心配になることも)
 
宇宙ステーションへの着陸に比べると、地表着陸はかなり難しい。陸地が見えているなら見えているなりに、真夜中の真っ暗闇なら真っ暗闇なりに、慣れないうちは怖さがある。私は、これもこれで宇宙っぽい味わいがあって好ましいと思うけれど、快適なゲームプレイを望んでいる人には不親切と感じられるかもしれない。
 
また、銀河系がとにかく広く、星系内の移動にすら長い時間がかかるので、せっかちなプレイヤーには辛いかもしれない。銀河系を横切るような移動となれば、もう一日仕事になってしまうだろう。大きな連星系のなかのスーパークルーズモードでの移動にもかなりの時間がかかる。目的地を設定して到着するまでにお茶が用意できるぐらい時間がかかることも。
 

(到着に約10分ほどかかる、二重星系の遠い側の星々。この、遠くにみえる星々が少しずつ近づいてくるさまにロマンが感じられる人は、このゲームは絶対やったほうがいい。)
 
個人的には、こうしたちょっと難しい要素のひとつひとつが『エリデン』の短所でもあり、長所でもあると思う。時間がかかり、少し操作がめんどうだからこそ、宇宙を飛んでいるというごっこ遊びに一種のリアリティが宿り、宇宙を飛び回る自由さが際立つ。もし、このゲームの宇宙船で『宇宙戦艦ヤマト』のイスカンダル星*2まで遠征するとしたら、たいへんな事業になるだろう。そういう長大な時間スケールと面倒さをポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかでこのゲームの評価は天と地ほどにも違う。
 
 

妄想や想像こそがこのゲームの真骨頂

 
こんな具合に、『エリデン』は万人受けするゲームとは到底言えない。ただ、『エリデン』には間違いなく『エリデン』ならではの魅力がある:MMOにしては短い時間でプレイを軌道に乗せられる点、初手からかなり自由度の高いプレイスタイルで遊ばせてくれるのも優れたところだ。
 
なにより、『エリデン』は「ごっこ遊びゲーム」や「宇宙妄想ゲーム」としてとにかく卓越している。
 
純粋にゲームとして評価するなら、『エリデン』より豊かなゲーム、親切なゲーム、万人受けするゲームはいくらでもあるだろう。だけど、ゲームプレイをとおして宇宙ごっこの想像力や妄想力を膨らませる触媒として、このゲームの右に出るゲームはあまり無いのではないだろか。
 
いわばこのゲームは、自分自身の宇宙ごっこ遊びに入っていくための触媒みたいな感じなのだ。長時間の移動、美しい星のグラフィック、ピカピカした戦闘、詳細な惑星データも、すべてがごっこ遊びや宇宙妄想ゲームのためのセットであると言い切ってしまいたくなる。
 
大事なことなので二度言うが、『エリデン』は、ゲームそのものの出来より、ゲームをとおして脳内補完する、その脳内補完のほうを楽しむゲームとして卓越していると思う。だから広大な宇宙を妄想したい人や宇宙船の指揮官ごっこが大好きな人、スタートレックごっこが好きな人、自分だけの宇宙ロールプレイにうつつをぬかしたい人には絶対にお勧めしたい。
 

 
『エリデン』は頻繁に値下げが行われるゲームなので、たぶん、Steamの年末セールになれば1000円以下で遊ばせてくれると思う。上に挙げた性癖に当てはまるゲーム愛好家なら、購入ボタンを押しておいて損はないと思う。
 
store.steampowered.com
 
 

*1:2020年12月時点

*2:地球から148000光年