シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

朝日新聞朝刊にて『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』をご紹介にあずかりました

 
www.asahi.com

 
今朝(7月25日)の朝日新聞朝刊の読書面のコーナー「著者に会いたい」にて、『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』に関してご紹介にあずかりました。朝日新聞を購読してらっしゃる方、是非読んでみてやっていただけたらと思います。
 
ところで今回、朝日新聞の記者さんと話していて「新聞というメディアの長所」について話題が盛り上がりました。
 
この「著者に会いたい」のコーナーのインタビューは2時間ほどにわたり、新聞記者のかたはレコーダーによる録音に加え、たくさんのメモを取り、また事前に私の著書などについて入念に下調べをしていらっしゃいました。他の新聞社さんの取材もそうですが、新聞記者のかたは非常にたくさんの情報をインプットするように見受けられます。
 
その記者さんに「新聞というメディアの極意のひとつは、"情報の取捨選択を経た圧縮"ではないでしょうか」と訊ねたところ、「新聞の長所のひとつは間違いなく"情報の取捨選択を経た圧縮"ですね」と答えていらっしゃいました。あるいは"編集"とか"まとめ"と言ってもいいのかもしれませんが。
 
かつて新聞の長所の第一の点は速報性にありました。しかしテレビが出現し、さらにSNSなどが出現したことによって速報性は新聞のアドバンテージではなくなってしまいました。それでも新聞に残されている(そして雑誌などにも残されている)アドバンテージは、一枚のページ、または紙面の一行一行に圧縮された情報です。
 
「著者に会いたい」のコーナーにしてもそうですし、三面記事や政治欄の記事にしてもそうですが、新聞というメディアは限られた紙面を用いて余計なことを伝えず、必要なことだけを伝えることに非常に長けている──少なくとも私の目にはそのように新聞はうつります。世界じゅうのニュースや情報を圧縮することにかけて、新聞、そして雑誌は高いスキルとノウハウを持っていて、読者に提供する情報の質と量という点ではネットメディアの追随をいまだに許していません。
 
ヤフーニュースなどにしても新聞社自身が配信するデジタル記事にしてもそうですが、ネットメディアは、速報性と情報量では新聞を圧倒しているものの、だからこそ、読者が3分間に摂取できる情報の質と量という点では新聞に勝てているとは思えないのです。ヤフーニュースや朝日新聞デジタルを3分間読んだとしても、その日の新聞を3分間読むほどの質・量の情報をインプットするのは難しいでしょう。
 
先月私は「テレビがまとめサイトみたいにみえる」というブログ記事を書きました。
 
テレビがまとめサイトに見える - シロクマの屑籠
 
テレビも新聞もそうですが、ネットメディアが登場したことで失ったアドバンテージはいろいろあったことでしょう。しかし、今でもテレビにはテレビのアドバンテージがあり、新聞には新聞のアドバンテージがあります。テレビと新聞には、制限時間や限られた紙面で必要なことを伝えなければならない制約を負っているからこそ鍛えられた一面があり、速報性に優れたネットメディアに全面的に負けているわけではありません。。
 
ネットメディアが躍進する今日この頃ではありますが、テレビ、雑誌、書籍といった旧来のメディアにもそれはそれで長所があり、使い分けの余地が残っています。新聞記者の方とお話をし、そのことも再確認したので雑感として書いておきます。