シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

ワインを理解するためにラベルを記録する方法

 

 
 先日、ワイン界を手探りで探索しはじめている年下の人に出会って、昔の自分を思い出すような気持ちになりました。十年ほど前から、私は『北極の葡萄園』にワインの記録をつけていて、今ではすっかり慣れていますが、昔は何をどう記録すればいいのかわからないことが多く、特に、ワインのラベルに書かれた情報をうまく記録できない時期もありました。
 
 もし、誰かがワインのことを知りたくなった時、なかでも「ワインという飲み物を体系的に理解したい」と思い立った時、ワインを記録する習慣と方法は意外に重要になります。たぶん、記録する習慣と方法が曖昧だと、ワインの記憶も曖昧になり、どこのワインがどうだったのかを比較しにくいように思われるのです。
 
 そこで、今回はワインを記録する時の記法について書いてみます。
 
 

私がワインの記法を教わったサイト

 
 ……と、その前に、私がワインの記法を学んだサイトを紹介しないわけにはいきません。
 
www2s.biglobe.ne.jp
 
 1997年から記録を続けている、安ワイン道場さんです。(現在では御本人がtwitterもやっています)
 
 昔、このサイトには、初心者がどういう手順でどういう風にワインと付き合っていくのか、どういう道具を揃えたらいいのか、そういったハウツーを通覧できる場所がありました。数年前にサイトデザインが現代風に変わり、過去の文章が読めなくなってしまい(追記:今でも読めます!トップページの「指南書」を押すとメニューが出ます。)ましたが、そのハウツーを読み、なにより安ワイン道場さんの記録を猿真似したところから私のワイン遍歴が始まった、と言っても過言ではありません。
 
 安ワイン道場さんは現在でもサイトの更新を続けています。これから述べるワインの記法も、基本的には安ワイン道場さんを出発点として、書籍などで補ったものだと思ってください。ワインの味や香りの表現方法を知るにも、記法を真似るにも、いいサイトだと思います。お買い得な安ワインを探している人には特におすすめです。
 
 

ワインの名前を書く時、ラベルからコピーしたいもの

 
 ここから記法の話に入ります。
 ワインノートやブログ等にワインの名前を記録しておく時に外せないのは、【①メーカー名】【②地域・畑名】【③ぶどう品種名】【④製造年(ヴィンテージ)】です。あと、【⑤そのワインの愛称】【⑥メーカー独自の格付け】がある場合は、それも併記したほうが良いかもしれません。
 
 

 
 このスクショは、南アフリカ・カリフォルニア・ニュージーランドという、いわゆる「新世界ワイン」のワイン記録リストを貼り付けたものですが、見てのとおり、最初にメーカー名を、続いてカリフォルニア産の真ん中は地域を、その後にぶどう品種を、最後に製造年(ヴィンテージ)を記してあります。
 
 「新世界ワイン」のかなりの割合、特に初心者の頃に買いそうなワインの多くは、①メーカー名③ぶどう品種名④製造年(ヴィンテージ)の三つしか記していないため、簡単です。このスクショでいえば、一番上の南アフリカ産や一番下のニュージーランド産ですね。
 
 ただ、全部が全部そうだというわけでなく、真ん中のカリフォルニア産のように、地名が入っていたり、愛称が書いてあったりする場合もあります。それと、
 

 
 たとえば、このチリワインの記録のリストでは、「リゼルヴァ・エスペシアル」だの「ビシクレタ」だのといった、メーカー独自のランク(格付け)が記されています。一番上と一番下は、ともにコノスルというチリの大手ワインメーカーのワインなのですが、このメーカーは同じぶどう品種だけで数種類のワインを作っているため、メーカー名とぶどう品種を記録しただけではワインを特定できません。面倒でも、「リゼルヴァ・エスペシアル」だの「ビシクレタ」だのといったランク名を併記しておく必要があり、これで廉価品なのか中級品なのか高級品なのかを識別しています。
 
 真ん中のコンチャイトロもチリの大手ワインメーカーなのですが、ここも同じぶどう品種で数種類のワインを作っていて、それぞれに「サンライズ」「フロンテラ」といった愛称がついています。新世界ワインや一部のイタリアワイン、日本産のワインなどは、愛称やランクを使って商品を識別させているので、そういうのも書いておいたほうがいいように思います。
 
 最後に、一番面倒なフランスワインについて。
 

 
 フランスワインには、品種名が欠落しているワインが少なくありません。かわりに、地名が大抵のワインに記されています。伝統の長いフランスワインやイタリアワインは、「特定の地名でつくられているワイン=ぶどう品種が法律的にあらかじめ定められているワイン」なので、ぶどう品種の記載が省略されていることが多いのです。
 
 それと愛称。愛称は、ついていることもあれば、ついていないこともあります。ものすごく高価なワインは、えてして、メーカー名と地名しか記していないことが多く、なかにはメーカー名とヴィンテージしか記されていないことすらあります。この一覧にあるように、愛称は地名より先に書いても地名より後に書いても、たぶん構わないと思います(とりあえずgoogle検索にはこれで十分引っかかります)。統一したい人は、統一したほうがいいかもしれません。
 
 そして一番下のワインのように、わざわざ「白ワイン」「赤ワイン」を明記してあるものや、製造年(ヴィンテージ)を省略しているものもあります。ヴィンテージの省略はスパークリングワイン系にはよくあるので、書いてない時は(N.V.[ノンヴィンテージ])などと書いておくといいように思います。
 
 フランスワインの地名の表記は難解きわまりなく、ソムリエさんも覚えるのに苦労するような代物です。たとえばブルゴーニュワインは、以下のリンク先にたっぷりと書いてあるようにものすごく細分化されているのですが、
 
www.bourgogne-wines.jp
 
 
 こういうのをワインを飲む前から暗記するのは不可能です。 
 
 まあだからこそ、ボトルのラベルに書かれている情報はできるだけ全部書いてしまったほうが無難かもしれません。フランスワインは、メーカー名も地名も愛称も信じられないほど長ったらしいことが時々ありますが、もうそういうものだと思って諦めて記載してください。
 
 フランスワインのこうした地名の面倒なシステムは、いったん覚えてしまうときわめて体系的にワインを攻略できる利点になるのですが、初心者には厄介きわまりないので、最初のうちはフランスワインを主戦場にしないほうが気楽かもしれません。
 
 

「視覚」「嗅覚」「味覚」を記録しておこう

 
 もちろんラベルだけ記録しては意味がないので、そのワインがどんなワインだったのか、自分がどんな風に飲んだのかも書き記すのが一般的です。
 
 記録の仕方はいろいろですが、まず目で見て色や濁り具合などを確認し(視覚)、次に香りを確認して(嗅覚)、最後に口に運んでゆっくり味を確かめて(味覚)、それぞれを書くのが良いように思います。ワインはしばしば、ボトルを抜栓した直後の香りや味が、しばらくすると違った香りや味に変わってくるので、そういう変化も記録しておくといいように思います。ワインは、抜栓してすぐに衰弱しはじめるものもあれば、抜栓してしばらくパワーアップし続け、数日ぐらいは元気なままのものもあります。最初はあまりおいしくなかったワインも、翌日にはなかなかおいしくなっているかもしれません。あきらめずに付き合いましょう。
 
 
 なお、こうした色々が面倒な人は

app-liv.jp
app-liv.jp
 
 専用アプリを使って記録するという手もあります。スマホで全部済ませたい人は、こういうアプリを導入したほうがいいかもしれません。
 
 

迷ったら「安ワイン道場」へ行け!

 
 で、迷ったらとりあえず安ワイン道場さんへ行って、師範の記録の書き方をよーく読んで真似るといいように思います。たぶん、おすすめのお手頃ワインも見つかるでしょうし。
 
 もちろん安ワイン道場さんがワインの世界のすべてというわけではなく、いつかは自分のワインの好みを知り、自分のワイン観を持つのがいいように思いますが、スタート時点では間違いなくあのサイトは助けになるはずです。
 
 ということで、安ワイン道場さん(のなかのひとの師範さん)、どうかあまり肝臓を痛めないように気を付けながら、これからもたくさんのワイン初心者を導いてください。
 
 www2s.biglobe.ne.jp