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リンク先を読んで、「ハッハッハッ、それはお父上がいけないのだよ」と思った。
リンク先で述べられているように、『ファイナルファイト』は往年の名作だ。だが、無限コンティニューなどという、スルメイカを噛まずに呑み込むようなプレイスタイルでは面白さは伝わらない。なにより、ゲームの核にあたるエッセンスがごっそり抜け落ちてしまうじゃないか!
投げ技を駆使した立ち回り。
ここぞという時のボタン同時押し技。
体力のやりくり。
ハメパンチ。
こういった、このゲームならではの“やりかた”を通り過ぎてしまうプレイで、果たして子どもは『ファイナルファイト』の面白さを体感できるだろうか。そしてゲームを通して何かを得ることができるだろうか。
いわゆるレトロゲーム――かつてはファミコンあたりを指していたが、近年は、プレイステーションやセガサターンあたりの年代まで含む――は、グラフィック面で新しいゲームにはかなわない。「8ビット風」の『マインクラフト』のようなゲームにしても、ディスプレイへの接続端子が良くなっているので、鮮明な画質と感じる。なにより、新しいゲームは「手触り」が良い。インターフェースが機敏で、ヌルヌルとよく動く。
だから、レトロゲームがグラフィックや手触りで最新のゲームと勝負しても、まず見劣ってしまう。無限コンティニューで通すような遊び方では、そこらへんばかりが印象に残りやすく、それこそゲームの歴史博物館を巡るような気分になってしまうだろう。
今の子どもだって、レトロゲームを楽しむ余地はある
私は、一つ一つのゲームには《固有の面白さ》があると思っている。それは、攻略に際しての独特のコツだったり、そのゲームならではのフィーチャーを活かした戦法だったり、他のゲームでは絶対に出来ないことだったりする。そういったものを宿しているゲームは、総合力では最新型に敵わなくても、そのゲームならではの愉しみを体感する余地はあるし、実際、うちの子どものゲームプレイをみていると、楽しんでいるようにみえる。
うちはゲーオタ一家と言って良いほど家族ぐるみでゲームを遊ぶ。
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私も家内も『エースコンバット*1』『マインクラフト』『Skyrim』といった新しいゲームを遊び続けてきたし、子どもはそれを横目に見ながら育ってきた。というより、小さい頃からこれらのゲームをいじりながら育ってきた*2。
だがそれだけでなく、我が家には古いゲームハードとゲームソフトがたくさん残っていた。
二十代の頃の私は、「いつか、我が家の名作ゲームに価値が残ると信じて」古いゲームを捨てないように心がけてきた。そして三十代になってからは「いつか、名作のエッセンスを子どもに伝えたいと願って」古いゲームを稼働状態で保守してきた。そして遊べる状態で家のそこここに設置しておいた。当然、子どもはレトロゲームに触れながら育つことになる。
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『ダライアス外伝』は、1994年のゲーセンに設置され、格闘ゲーム全盛期にもかかわらず十分なヒットをおさめた傑作シューティングゲームだ。当時にしては遊びやすいルールで、難易度も手頃で、グラフィックやBGMが圧倒的だった。
しかし歳月とは残酷なもので、その『ダライアス外伝』ですら、21世紀のゲーム全般に比べるといろいろとキツい。当時は圧倒的だったグラフィックも、なまじ「8ビット風」ではないものだから、かえってショボく感じる。『ダライアスバーストCS』のような最新のシューティングゲームと比較すると、そのキツさは一層際立ってしまう。
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それでもうちの子どもは『ダライアス外伝』を楽しく遊んでいる。特有のパワーアップシステム*3や中ボスキャプチャーボーナスといった、このゲームならではのフィーチャーを理解し、それを踏まえて一喜一憂していることから、そのあたりがうかがえる。ゲーム攻略の要となるブラックホールボンバーも、ここぞという時に切り札的に使っている。グラフィックや手触りといった要素を抜きにしても、『ダライアス外伝』が『ダライアス外伝』であるための核となるエッセンスにしっかり触れているから、古臭くてもそれなり楽しく遊べているのだろう。
ファミコン版の『忍者じゃじゃ丸くん』のような、もっと古いゲームにしてもそうで、各種アイテムの使い方、足場の効果的な破壊、敵を気絶させるテクニック、等々を親からよく学び、よく実行していた。うまくいかなくて泣いたり、うまくいって狂喜乱舞したりしていたのは、それだけ熱中していたってことだろう。
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『ドラゴンクエストIV』『グラディウス外伝』などにしてもそうだ。ゲームから面白さを引き出せる限りにおいて、子どもはレトロゲームに対して真剣だ。真剣だから、泣いたり笑ったりする。『ポケモン(サン&)ムーン』や『ダライアスバーストCS』を遊ぶ時となんにも変わらない。
私は冒頭で「それはお父上がいけないのだよ」と言った。
もし、子どもにレトロゲームの面白さを伝えたいなら、レトロゲームのどこが面白いのかを、やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてなければ、ちょっとわかりにくいと思う。ゲームのグラフィックや手触りやわかりやすさに丸め込まれてしまいやすい昨今では、特にそうだと思う。
逆に言うと、親がやってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてみれば、子どもがレトロゲームに親しむ余地は十分にあると思う。少なくとも、操作性がさほど悪く無くて、ゲームバランスも優れていて、名作の誉れ高いゲームに関してはそうだろう。
『マインクラフト』をはじめとする、2010年代のゲームは本当に素晴らしいし、子どもがそれに夢中になるのはわかる。でも、レトロゲームだって、面白さをゲームから汲み取れる限りにおいては、子どもはちゃんと楽しめるのだ。
ゲームをとおして、探究心や忍耐力や達成感を養って欲しい
なお、子どもがレトロゲームの面白さを理解することにどんな意味があるのか、そもそも一般論として、家庭にたくさんのゲームハードとゲームソフトが存在することが子どもにとってどこまで有益でどこまで有害なのかは、ここでは議論しないことを断っておく。
また、我が家は子どもがゲームを遊ぶことに寛容なほうだが、遊ぶ時間には制限をもうけているし、惰性で集中力を欠いたゲームプレイをしている時には「そんなにぼんやりやるなら、やらないほうがマシだ」と注意している。どんなものも、度が過ぎれば有害になる。ゲームだって、テレビだって、本だってそれは同じだ。
だが、ゲームを遊ぶこと・ゲームに熱中することには有益で有意義な側面もたくさんあるはずだ。私はゲーオタだからその事をよく知っている(つもりな)ので、ゲームから得られる最善のエッセンスを子どもにも伝えたいと願った。攻略パターンを探すことによって探究心を磨き、経験稼ぎやゴールド稼ぎをとおして忍耐力を養い、自分の力で攻略して達成感を獲得して欲しいと願った。
子どもに新旧のゲームの楽しさを伝えることによって、私の願いは叶えられたと思う。のみならず、親子の接点のひとつとして、ゲームは鎹の役割を果たすようにもなった。『ヴァンパイアハンター』の対戦プレイや『機動戦士Zガンダム エウーゴvsティターンズ』の協力プレイは、外でボール遊びもしにくいこのご時世、貴重な“親子のキャッチボール”の役割を果たしていると思う。
繰り返すが、我が家はゲーオタ一家だ。だからゲームに関しては、資産とノウハウが集積しているから、これを子育てに活かさないなんてとんでもないと思っているし、ゲーオタ一家なりに子育てをアレンジするのが適当だとも思っている。この記事は、すべての家庭に敷衍できるような代物ではない。
だとしても、新しいゲームも、古いゲームも、素晴らしいものは本当に素晴らしい。もし、子どもがレトロゲームの面白さに触れる機会があったら、古強者のお父さんがたは、うまく伝授して欲しいと思う。