シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

「産科の整備度が出生率を律速する!」と叫ぶ妄想師を待ち望んでみる

 
 もし、産科がアロステリック(律速的)に出産をコントロールすることが出来るボトルネックとして機能するなら、アロステリック酵素が化学反応系に与える影響の如く、産科病院が出生率を決定づけることとなる。産科がいっぱい充実すれば出生率上昇、産科がすたれれば少子化進行、というわけだ。
 
 
  
 …という妄想を信じている人は思いのほか多くないようだ。やんごとない人達も、「無制限の生の肯定を!」と叫ぶ人達も、産科という存在が出生率を律速的に決定づけている、というストーリーはお好みでないようだ。産婦人科の先生方におかれても、“出生率の一要素としての産科機能”をプロパガンダ錬金術でハイパー化させて、あたかも産科が出生率の律速ファクターであるかのように喧伝するのは阿呆らしいと思っているのか、そういう物語はあまり聞いたことがない。
 
 政治やらコミュニケーションやらの空間では、「戯言もみんなでわたれば怖くない」。戯言は皆が信じてもやはり戯言だけれど、瞬間的に真実として戯言が消費されることは、ある。一流の妄想師が円陣を組んで「産科が出生率の律速ボトルネック!ボトルネック!」と護摩を焚けば、嘘もまことになるやもしれない。人がもし、科学の世界にではなく、言説空間に生きる生物なのだとしたら、「客観的真実かどうかは判らないけれどもそう見えて、御利益のある言説」を護摩壇に捧げて大音量で御真言を唱えれば、瞬間的にせよ奇跡が起こる可能性は、ある。大声で叫んでもみっともなく見えないような、一流の妄想師が産科を宣伝しないかなぁ、と妄想する今日このごろでした。