シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

ファイナルファンタジー12にときめくオッサンの記録

 
 ファイナルファンタジー12を、私は当初小馬鹿にしていた。知人宅でソレを眺めてみようと思ったのも、あくまでニヤニヤして(オタクとしての陰険な)優越感でもせしめようと思っていたのだが…ファイナルファンタジー12は、私に勝った。私は負けた…わけじゃなくて私も勝った。気づいた時、私はコントローラを握っていた。遙か昔、ファイナルファンタジー1,2,3,4を初めてプレイした時によく似た気持ちになっていた。(操作性も含めた)未知への好奇心、キャラクターを成長させるプロセスへの悦び…これらは皆、久しく忘れていた経験だった(オンラインゲーム以外では)。正直言ってびっくりしている。こんなにゲームとしてちゃんとしたオフラインRPGを創る力が、スクエアエニックスが残っていたんだ。私はファイナルファンタジーシリーズを半ば呆れながら眺めやっていたけれど、今回は出会ったその瞬間から全く違った。脳味噌が、「早くこのゲームに馴れろ、もっと先に進め、キャラクターを強くしろ!」と喚いている。A10神経からの、このうるさいほどの要請に、私は応えざるを得ないし、そうし向けたスクエアエニックスさんには大感謝だ。ああ、僕はまた、ファイナルファンタジーをプレイ出来るんだ。
 

  • オープニングの音楽と演出。「ああ、ファイナルファンタジーだ!これは、間違いなくファイナルファンタジーだ!」。遠い記憶を呼び覚ます強いメッセージに、私は完全にイカれてしまった。若いプレイヤー層にはともかく、FF4以前を経験している人間には、多分こいつは猛毒だ。私の場合、ここまでオープニングでファイナルファンタジーを意識したのはファイナルファンタジー4以来である。FF6も7も9も10も、ここまで激しい呼び覚ましは無かったと思う。

 

  • これまでのFFとは全く違うプレイアビリティや戦闘に、強烈な新鮮感を覚える(FF11とかPSOとかやってた人はそうでもないのかな?)。結果として、これがFF2,3,4の時のような、「一からプレイを覚えてやっていく感」に繋がっていて脳味噌を刺激する。新しい事を覚えるのが嫌なプレイヤーは敬遠するかもしれないが、少なくとも私はこういうのは大歓迎だ。キャラクターの成長に伴って、プレイヤーもスキルアップしていく感覚を覚えられるからだ。単にパラメータが上がっていくだけじゃなくて、プレイヤー自身のプレイスキルも上がっていく。この感覚は、長らくファイナルファンタジーでは忘れていたものだ。ディアブロやシビライゼーションの時のような新鮮感。

 

  • その帰結として、序盤の戦闘がマンネリズムに毒されずに済んでいる。序盤の戦闘は、ファイナルファンタジーのなかではいつしか「退屈な消化試合」になっていたが、今回は違う。キャラクターと一緒に、私自身も必死に戦闘に馴れようとしている。その感覚が心地よくて仕方ない(これもFF11やってた人は経験しないのかも)。キャラクターは、強くなる。プレイヤーは、巧くなる。これだ、これこそが私がRPGに求めているものだ*1。プレイヤーは最初から馴れきっていて、キャラクターの選択肢だけ貧弱な状態を、私は今回経験していない。私はFF12のビギナーとしてゲームを開始した。だから序盤から楽しすぎる。ケアルの「う゛ーん」って音に酔いしれることが出来る。

 

  • とにかく金がない。あれも無い、これも無い。やっぱりRPGは貧乏じゃないとつまらない。道中金に困らないRPGなんてクソ食らえだ。これだ、これでなくては。最近のファイナルファンタジーは、せっかちな私でも金にあまり困ることがなくて寂しい思いをしていたけれど、今回は素晴らしいほど金が無い。ポーションや毒消しすら不足する有様。ドラクエ3プレイヤーにしか分からない表現をすれば、「ダーマ神殿にたどり着いたけれど、勇者の装備は鎖鎌・鎖帷子・鉄の盾!大変だぁ!」という状態が続いている。間もなく私は、どこかで経験稼ぎや金稼ぎを余儀なくされそうな雰囲気だ。しかし、嫌々ではなく嬉々として私はソレをやるだろう。貧乏じゃなかったら、絶対そんな事はしない。ああ、貧乏って素晴らしい。ファイナルファンタジーも、飽食のつまらなさにようやく気づいてくれましたか。

 

  • 序盤にしてはボスがそこそこ強い気がする。ミミックの化け物も、レイスも、思ったよりは強かった。序盤のボスでキャラが「寝た」のは一体どれぐらいぶりだろうか?FF3以来?もっともっといじめてください。

 

  • そんなわけで、目下退屈もせずに嬉々としてプレイ中。経験稼ぎも含めて、やりたい事を大量に未消化のままイベントを進めている。どこかで立ち止まって、RPG然とした経験稼ぎを楽しみたいところだ。立ち止まりたい欲望と、広い世界を視たい願望のせめぎ合い。ガンビットシステムもまだまだ使い込みが甘く、あれこれ試験したい。今、私はとっても幸せな気分でコントローラを握っている。ファイナルファンタジー12は、果たしてあとどれぐらい夢中にさせてくれるんだろうか?贅沢を言うなら、1,2,3,4の時のような長い夢をみてみたい。歳くった私には過ぎた願いだとは思うけど、ついついそんな事を期待してしまう。

 

*1:ちなみに私が一番大好きなシューティングゲームの世界では、こういう問題は最小化されている。十数分程度待てば「消化試合」は終わるし、そうでなくてもスコア稼ぎをすれば序盤も忙しくなるからだ。