シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

エヴァやガンダムの昔話で盛り上がる中年の心理

 
anond.hatelabo.jp
 
 数日前、はてな匿名ダイアリーに上のような文章がアップロードされたところ、はてなブックマークには沢山のはてなユーザーが集まり、昔話に花が咲きました。楽しそうですね。
 
 その少し前、ガンダムがいつからブームになっていたのかを問う文章にもはてなユーザーが集まり、これも賑わっていました。
 
 10代~20代には、おじさんおばさんがアニメの昔話に耽るのを、みっともなく思っている人もいるかもしれません。それにしても、どうして彼らは、いや、私達は、昔のアニメの話で盛り上がってしまうのでしょうか。
 
 

コンテンツの昔話は、アイデンティティの指差し確認

 
 ちょうど、新R25さんのインタビューでも触れたのですが、心理学でいうアイデンティティの概念に沿って考えると、おじさんおばさんが昔のアニメやゲームの話で盛り上がるのは妥当でコスパの良い行動であるようにみえます。
 
 アイデンティティとは、大雑把に言ってしまうと「自分を自分たらしめている、必要不可欠なもの」のことです。【自分にとってかけがえなく感じられるもの・代わりの効かないもの・自分自身の成立基盤や構成要素になっているもの=アイデンティティ】と考えていただいて差し支えありません。
 
 この定義にあてはまるなら、仕事も、友達関係も、地域も、宗教も、趣味も、個人のアイデンティティたり得ます。また、忘れがたいインパクトを受けた作品、たくさんの思い出を残してくれたコンテンツも、その人のアイデンティティの一部分、と言えるでしょう。
 
 たとえば私は、以下に貼りつけたコンテンツから強いインパクトを受けましたが、
 

機動戦士ガンダム F91 [DVD]

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銀河英雄伝説 Blu-ray BOX スタンダードエディション 1

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AIR - PS Vita

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CLANNAD メモリアルエディション 全年齢対象版

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 コンテンツそのものから影響を受けただけでなく、オタク仲間と語り合うことによって沢山の思い出も作りました。私の人生や価値観を左右したこれらのコンテンツは、私のルーツとも、アイデンティティの一部とも言えます。
 
 これらについて、当時の仲間と昔話をすると、私は自分のルーツを思い出し、趣味領域のアイデンティティのなんたるかを再確認することができます。たぶん、集まった仲間たちも同じでしょう。ガンダムやエヴァンゲリオンの話をして、当時のエピソードなども語りあうことによって、私達は「アイデンティティの指さし点検」をして、自分自身の輪郭をメンテナンスしている、のだと思います。
 
 [関連]:“ガンダム念仏会” - シロクマの屑籠
 
 こうした昔話によるアイデンティティの指さし確認は、流行を追いかけるのに夢中だった頃に比べればローコストで済みます。なにせ、春夏秋冬の新作アニメにべったり張り付いていなくても、話題になった時だけ皆と思い出せば良いのです! それこそ冒頭で紹介した、エヴァンゲリオンの話題で盛り上がるはてなユーザー達のように、話題が出た時だけ語り合うのも良し。『宇宙戦艦ヤマト2199』のようなリバイバル作品が作られた時だけ復帰するのも良し。
  
 若者に比べてアイデンティティが確立しているはずの中年も、変化や不安は人生につきもので、アイデンティティがぐらつきかける時もあります。そういう時には、こういう昔話のたぐいが案外救いになったりするのです。若者からみればみっともないかもしれないけれども、中年が自分を見失わずに生きていくための、立派な一材料ではないでしょうか。
 
 

「昔話もできる新しいコンテンツ」

 
 余談ですが、最近のヒットコンテンツのなかには、新しい作品でありながら、中年に昔話のネタを提供しているものも少なくありません。
 
 ちょっと前の『這いよれ! ニャル子さん』にしても、今期の『ポプテピピック』にしても、昔話のネタをしこたま仕込んで、中年オタク同窓会をやりやすいつくりになっていました。『Fate』シリーズなども、昔話をしたくなる場面ってありますよね。
 
 アニメ視聴者のボリュームゾーンとしてアラフォー世代も無視できなくなり、かといって、新しい視聴者も開拓しなければならない事情を踏まえて、それらの作品は狙って作られているのでしょう。
 
 ともあれ、エヴァネタやガンダムネタで喜んでいるおじさんやおばさんをtwitterや居酒屋で見かけたら、「ああ、あの人はアイデンティティの自己メンテナンス中なんだな」と思って生暖かく見守ってやってください。私も来期は、『シュタインズ・ゲート ゼロ』や『銀河英雄伝説 Die Neue These』を観て、存分に自己メンテナンスしたいと思います。
 

「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

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