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「ネットバトルに勝つためにはオーディエンスを味方につけろ!」
基本中の基本ですね。手ごわい論敵が相手でも、話が通じないアカウントが相手でも、おおむね効果のある戦術だと思います。そして、オーディエンスを味方につけるためには、hagexさんのおっしゃる四原則、
(1)誤読させない文章を書く
http://hagex.hatenadiary.jp/entry/2016/04/22/110000
(2)レッテル張りをしない
(3)レフリーに対しては感情的に接しない
(4)読み手を納得させる、驚かす、感心させる
が重要というのもよくわかる話です。
あとは、なるべく穿った読まれ方をされにくいように、常日頃から“清く正しいブログライフ”を心掛けておけば完璧でしょうか。そうやっていれば、とりあえず「負けない」ブロガーにはなれます。
オーディエンスを敵に回しても、論じるべきは論じるべき
でも、ブログって「負けない」ためにやるものじゃないですよね。
はてなブックマークだってそう。「負けないブックマーカー」「常勝のブックマーカー」って、そんなに偉いものでもないし面白いものでもないと私は思います*1。「負けないブログ」「常勝のブックマーク」は手段にはなっても目的にはなりません。そして、芯のあるブロガーならともかく、グラグラしたブロガーの場合は、オーディエンスの顔色ばかり窺っていると「オーディエンスの顔色ばかり窺っている人」という残念な称号が贈呈されてしまいます。そうなったら「負けないブックマーカー」ではあっても「付和雷同しかできないブックマーカー」ですよね。がっくし。
なにより、ブログやブックマークの世界では、オーディエンスは絶対の存在ではありません。
古参のはてなユーザーなら、“鶴の一声”ではてなブックマークのオーディエンスの空気がガラリと変わったり、ブログの論陣が形勢逆転したりする瞬間を見たことがあるのではないでしょうか。付和雷同するオーディエンス達が見落としている視点・スルーしている視点を、オーディエンスの空気に逆らって叩きつけると、しばしば劇的な変化が起こります。
勝ち馬に乗って勝鬨をあげるのも楽しいかもしれませんが、単騎で大勢に挑み、主張したいことを主張し、オーディエンスの空気をひっくり返してしまうのは楽しいものですし、そこまでいかなくても、オーディエンスとは異なる見解をリンクやブックマークコメントに載せるだけでも、かなり楽しい。「勝った負けた」を意識するのも悪くはないんだけど、とにかく、「負けない」ことばかり考えてブログをやるのは勿体ないとは思うんです。
もとより、ブックマークもブログもたくさんの人が使っているのだからたくさんの意見があるのが当然で、それが(株)はてな のサービスの良いところでもあります。だから、皆が右を向いている時に少数が左を向いていたって構わないし、それが意見の多様性を担保している部分もあるわけで、オーディエンスの大勢とは違ったことが言いたい時には、ハッキリ言ったって構わないし、言えるのが良いブログライフ・ブックマークライフではないでしょうか。
そのような、言いたいことが言える文化、賛否両論が併記されている雰囲気を許容する文化が、この、(株)はてなの提供する一連のサービスに独特の気風を与えているのだと私は理解していますし、私はそのような気風の一部でありたいと常々願っています。
手斧よ、輝け!
この視点で言うならば、先だってのskkkyさんのフミコフミオさんに対する異議申し立ては好もしいものでした。目下、はてなブロガーのプリンケプス*2と目されるフミコフミオさんに異議を申し立てて、天井桟敷でオーディエンス面をしているはてなブックマーカーに向かって手斧を投げてみせるさまは、まこと、ブロガーの鑑であり、自由な発言を愛する姿勢を示したものだったと思います。
先だって、私はskkyさんのブログ修辞術に疑問を投げかけましたが、それはあくまで修辞作法の次元・ブログ戦術の次元の話であって、ブログ大戦略・ブログ騎士道の次元ではありません。
今回、彼の投げた手斧は、オーディエンスの首を飛ばすにはいささか磨きが足りなかったというか、戦術的洗練を欠いていたようにはみえますが、空気に流されず手斧を投げた姿勢、勇気、覚悟は讃えるに値するものだと私は思います。そしていつか、怠惰な付和雷同によって「負けない」ブログ運営や「負けない」ブックマーク運営に溺れて利口ぶっている人々に、ガツンと一撃をくらわせて頂きたい。
二十代のうちから、オーディエンスに付和雷同するしか能が無く、年上や大手に媚びへつらい愛想笑いを浮かべるしかない奴なんて、無害かもしれないけれども面白くもなんともないですしね。
財貨を失ったのは―――いくらか失ったことだ!
気を取りなおして、
新たなものを得なければならない。
名誉を失ったのは―――多く失ったことだ!
名声を獲得しなければならない。
そうすれば、人々が考えなおすだろう。
勇気を失ったのは―――すべてを失ったことだ!
生まれなかったほうがよかっただろう。
新潮文庫『ゲーテ格言集』より
skkyさんに限らず、今のはてなブログには20代にして素養と勇気に恵まれたブログ戦士もそれなりいると思います。そうした、いざとなったら“大手”“歳の差”“肩書き”に物怖じせずに意見できるような知恵と勇気の揃ったブロガーには、是非大成して頂きたいものです*3。もちろん狂犬プレイに走るのでなく、勝算のある一撃を見定めるようなスタイルで。
過去のはてなブックマーク~ブログ世界においては、物怖じせず手斧を投げあう文化がありました。そこには野蛮もあったわけですが、自由な討論、多様性のある意見の併記を許容する美点もあったはずです。私は、その最も望ましい部分はこれからも継承されて欲しいと願っているし、たとえインターネットの多数派文化とはなり得ないとしても、少数でもいいから、そのような気風がネットの片隅に残って欲しいとも願っています。
ネットバトルで勝つのにギャラリーを納得させる必要があるのは確かだが、だからと言ってギャラリーを殴っちゃいけないなどというルールはないぞ! 必要とあらば、自分はノーリスクだと勘違いしてコメントを残すブックマーカーもガシガシ殴れ!
— 犬紳士 (@gentledog) April 22, 2016