不倒城さんのところで、とても面白そうなファミコンゲームの記事を見かけた。
今まで一度も「ファミコン」を遊んだことがない人に、今だからこそ薦める10作: 不倒城
なんとも素晴らしいラインナップだ!ゲームとしての純粋な面白さとゲームの歴史的文脈を踏まえてあって、当人の好みもなんとなく匂い立ってくるからたまらない。こういうのを見ると、つい、自分も選びたくなる。
メーカー縛りやシリーズ縛り、歴史的文脈などを抜きにして、現在の手持ちのファミコンゲームから、子どものおもちゃ箱にこっそり仕掛けておきたくなるゲームを10本選んでみるとしたら?を考えると、私だったら以下のラインナップを挙げる。
1迷宮組曲
2ザナック
3バルーンファイト
4SDガンダム2カプセル戦記
5スターラスター
6ドラゴンクエスト3
7ゼルダの伝説
8スターソルジャー
9スーパーマリオブラザーズ
10女神転生2
バッテリーバックアップの怪しいものもあるけれども、これらのゲームなら、どこかで面白さに気づくんじゃないかな、と思う。
傑作を知るには、平凡ゲーやクソゲーも必要では
ここからがメイン。
こうやって傑作ゲームを10本選ぶ時に思い起こされるのは、ぎりぎりで選ばれなかった佳作と、まずまず面白いゲーム、たいして印象に残らなかった凡百のゲーム、幾つかのクソゲーだ。
あるゲームを「これは素晴らしい。他の人にも躊躇わずに推薦できるものだ」と選ぶ時、私は、素晴らしいゲームの素晴らしさだけを基準にゲームを選んでいない、と思う。素晴らしい一歩手前のゲーム、箸にも棒にもかからないゲーム、そしてクソゲーと呼んで差し支えないゲームも思い出しながら、素晴らしいゲームが絞られて来る――例えば私が『スターソルジャー』を推薦するためには、『ヘクター87』『キングスナイト』『スターフォース』『ドラゴンスピリッツ(FC版)』あたりを篩い落としているわけで。
事情はアニメでもたぶん同じ。「本物だけを知っていれば、自然に贋物との区別がつくようになる」と言う人もいるだろうし、それはある程度事実だろうけれども、山の高さを知るには、低きも知らなければならないのではないか。平凡な作品やヤシガニアニメも体験しておいたほうがためになるのではないか。趣味が日常生活に溶け込み、ピンからキリまで鑑賞していればこそ気付き得るものがあり、ありがたさに気づく瞬間もあるのではないかと思う。そしてタイムリーに傑作に出会った時の一種独特な感動も。
断っておくけれど、私は、ゲームを全部遊んでみせろとか、深夜アニメは残らず目を通せとか、そういう事が言いたいわけじゃない。それでも、自分の趣味生活のどこかの時期に――いや違うか、趣味が趣味として立ち上がってくる最盛期にこそ――味噌もクソも鑑賞せずにいられないような、手当たり次第な時期は必要じゃないかと思う。
ごく平凡なゲーム・すぐに忘れ去られるようなゲームとの出会いと別れは、あまり記憶されず、たいして感謝されるものでもない。クソゲーとの遭遇は嫌悪すらされる。けれども、それらを全部ひっくるめた体験が、趣味を趣味として立ち上がらせる時期にはメチャクチャ重要なはず。
情熱があるうちに、ピンからキリまで体験する重要性
ということは、ゲームなりアニメなりにのめり込むための、“情熱の温度”が肝心ってことだと思う。
ゲームやアニメが好きで好きでやめられない情熱が昂ぶっている時には、どんなにクソっぽいゲームやアニメでも、手の届くところにあるならひとまず触ってみずにはいられなくなる。そういう炎のような精神状態のうちに、誰しも趣味体験のコアができあがるんだろう。クソゲーやクソアニメに出会っても、なんとか面白がってみようとする時期だ。
ただ、その情熱の温度を高レベルに維持するためには体力、時間、心の余裕なども必要で、ひとつの趣味が趣味として立ち上がってくるチャンスは、一生の間に何度も無いかもしれない。だから今、ゲームが好きでしようがない・アニメが好きでたまらない人は、周囲の評価なんてそっちのけで、あれこれに体当たりすればいいんじゃないかと思う。冒頭リンク先の筆者の方も、そうやってゲームを咀嚼してきたんだろう。
情熱が高まっている瞬間は、平凡な作品・粗悪な作品もきっと財産になる。
鉄は熱いうちに打つべきで、冷めてしまってからは打ちきれない。