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上記はシューティングゲームの学習しやすさ・遊びやすさについての記事で、medtoolzさんが『怒首領蜂大復活』をプレイしてみた時の驚きが伝わってくる。けれどもシューティングゲームが初心者フレンドリーになったのは『怒首領蜂大復活』が最初というわけではなく、かなり昔からそういう潮流はあった。この記事では、そうした初心者親和性、特に弾幕シューティングゲームにおけるソレを中心に書き残してみる。
90年代前半のゲーセンには、初心者に優しいシューティングは少なかった
90年代に入ると、『グラディウス3』『R-TYPE-II』といった激難度シューティングゲームへの反省か、ビギナーでも遊びやすいシューティングゲームがそろそろ模索されるようになっていった。90年代前半はシューティングゲームの黄金時代と言われるけれども、当時の傑作はビギナーの学習しやすさ・初心者がやられた時の納得感は殆ど考慮されておらず、「一度死んだらジ・エンド」「隠しフューチャーを知らないとクリア不能」「いつ、どういう理由で死んだのか初心者にはさっぱり分からない」なんてゲームがザラだった。
もちろん、古い時代にビギナーでも遊べるシューティングゲームが絶無だったわけではない。『エリア88』『ヴィマナ』『タスクフォースハリアー』のように、低難易度なシューティングゲームというのはポツポツと現れていたし、あのアイレムも『R-TYPE LEO』のように比較的簡単な作品を出してもいた。けれどもそれらは「ビギナーの学習しやすさ・やられた時の納得感」を追求したデザインではなく、従来のゲームのデザインのまま、ただ低難易度にしたような作品だった。そして『エリア88』にしても『ヴィマナ』にしても、あるいは『1943』にしても、「やられやすい場所でやられる理由」が初心者にとって納得のいきやすい&解決策がわかりやすいとは言えない感じだった。
シューティングゲームをやろうと思ったらファミコンの『ザナック』やPCエンジン版の『ギャラガ88』あたりから入った方が無難な時代だったと思う。
90年代中盤――初心者取り込みの戦国時代
90年代の中盤に入ってくると、高難度路線に限界を感じたのか、各メーカーが初心者でも遊びやすいデザインのシューティングゲームをリリースしていく。複雑化したパワーアップまわりを単純化し、破壊の爽快感を強調した『雷電』や、比較的低難易度でテンポ良く遊べる『ソニックウイングス』などは、今から見れば初心者向けとは言いづらいけれども、営業のサラリーマンの暇つぶしゲームとしては長く愛されていた。『ダライアス外伝』も、従来のダライアスシリーズに比べれば初心者フレンドリーな設計になっていたと言える。
けれども、この時点で「1.初心者の学習しやすさ・2.やられた時の納得感」を尊重し、なおかつ「3.撃つ快感と4.避ける快感」を初心者にも上手に提供した暫定解は、東亜プランの『BATSUGUN』だったと思う。弾幕シューティングゲームの直系先祖とも言える作品だ*1。
ただし、『BATSUGUN』が出た後も、すぐにCAVE系の弾幕シューティングがスタンダードになったわけでなかった。90年代中盤は、それぞれのメーカーが初心者取り込みに力を尽くして競争していた。セイブ開発や、彩京も、プラズマレーザーやソフト連射装置などを導入し、それぞれのメーカーなりに初心者への間口を広げようとはしていた。しかし、結局これらのメーカーは高難度路線と初心者取り込みの両立に失敗し、弾幕系シューティング以外のほとんどが淘汰されてしまった*2。『怒首領蜂』や『エスプレイド』は確かに弾幕の派手なゲームだった。しかし、その派手さの割には初心者でも4面〜5面あたりまでは遊ばせてくれる間口の広さがあったし、ゲームシステムの理解に頭を使わなくても遊べるようなわかりやすさをも兼ね備えていたと思う。
個人的に初心者に一番お勧めなのは『トリガーハート・エグゼリカ』
2000年代に入ると、アーケードシューティングゲームといえば弾幕が連想されるような、弾幕シューティングゲームの時代が到来した。CAVEは『エスプガルーダ』や『虫姫さま』といった、初心者でも遊びやすい弾幕シューティングをリリースしていたし、アルファシステムの『式神の城』も、キャラクター性が幸いしてか、初心者な人もそれなり遊んでいた。
ただし、こうした初心者にやさしい弾幕シューティングへの反動というのはやっぱりあって、トレジャーの『斑鳩』やマイルストーンの『カオスフィールド』などは、とうてい初心者が気軽に楽しめる内容ではなかった。また、この時期になると、東方シリーズをはじめ、PC向け同人シューティングゲームの動きが盛んになりはじめたので、シューティングゲームの多様性はそれなりに保たれていたと思う。
そんななか、2006年におそらく初心者に一番遊びやすくて、しかも学習感がメキメキ得られて、破壊の爽快感も得られる弾幕シューティングゲームが出現した。『トリガーハート・エグゼリカ』だ。
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このゲームはあまり有名ではないけれども、難易度が易しいだけではなく、レバーコントロールによる特殊攻撃の上達感を非常に体感しやすい点で優れていた。初心者シューターがゲームを上達していく、その上達プロセスを楽しむという点に限って言えば、これほどよくできた弾幕シューティングゲームはたぶん無い*3。初めて弾幕シューティングを買ってみるという人には、この作品はマジでお勧め。絵柄に欺されてはいけない。
そして『怒首領蜂最大往生』、『ダライアスバーストAC』
さて、2000年代後半に入ると、アーケードシューティングゲームの難易度はさらに低くなった。より正確に言えば「高レベルなプレイヤーには高難易度な楽しみを、初心者には低難易度な楽しみを提供するシステム」が確立した。ただし『怒首領蜂大復活』や『赤い刀』などは、せっかく難易度の敷居を下げているにもかかわらず、必ずしも初心者向きのゲームとは言い難い内容になってしまっていると思う。
というのも、これら最近のCAVEのシューティングゲームは、アイテム周りやゲームシステムが(まるで90年代前半の作品のように)奇形的に進化しすぎていて、損をしているように見えるのだ。ちゃんとアイテム周りやゲームシステムを覚えれば、難易度に比して脳汁出まくりなんだけど、システム周りがゴチャゴチャし過ぎていて、初心者にはどれがアイテムでどれが弾幕なのかすら分かりにくい&何をすれば良いのかが直感的には分からない。例えばうちの嫁さんに『デススマイルズII』を見せても、どの弾を避けていてどのアイテムを吸い取っているのか、さっぱり分からないそうだ。これじゃあ初心者フレンドリーとは言えない。
この点で言えば、東方シリーズ、例えば『東方妖々夢』などはそんなにごちゃごちゃとしたゲームシステムを覚えてかかる必要が無く、とにかく弾幕を避ける快感をシンプルに追求できる仕様で、初心者フレンドリーだったと思う。ただし、東方シリーズには避ける快感やパズル感はあっても、一気にボスのライフを削り取る快感という点ではアーケード勢に一日の長があるようには見えるが。
そして2012年現在、最新のアーケードシューティングゲームというと、縦シューであれば『怒首領蜂最大往生』、横シューであれば『ダライアスバーストAC』ということになる。
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どちらの作品も、「ライフ制」と言って差し支えないゲームシステムを採用しており、『ダライアスバーストAC』はとりわけ初心者フレンドリーにつくられていると思う。また、『怒首領蜂最大往生』は、ある部分では非常に強面にも関わらず、「いつの間にかすごく上達している感」が強い。そしてゴチャゴチャ感を削ぎ落とした割とシンプルなデザインに仕上がっていると思う。シューティングゲームらしいストイックさと、ユーザーフレンドリーなゲームシステムとを、うまく両立させている。
既にアーケードシューティングゲームは落日のゲームジャンルかもしれない。というか間違いなくそうだろう。けれども、少なくとも2012年現在にゲームセンターで稼働しているシューティングゲーム達は、長年にわたる淘汰の歴史を生き残ってきただけあって非常に洗練されていると思う。初心者に対して門戸を開きつつ、最上級のプレイヤーをも惹きつけてやまない、しかも同人シューティングゲームとは一線を画した作品が遊べるのは、幸せなことだと思う。長年付き合ってきた身としては、ゲームセンターから撤去されるその日まで(またはゲームセンターそのものが消滅するその日まで)遊び続けたいなと思う。俺はシューターなのだ。
*1:ネット上の論評などを見ていると、弾幕シューティングゲームの元祖としては『ヴイ・ファイブ(V・Ⅴ)』が挙げられることも多い。確かにそうかもしれないんだけど、上記1.2.3.4.を揃えたシューティングゲームとしては『BATSUGUN』のほうがずっと優れている。ボムシステムやその場復活システム等も含めて、後続の弾幕シューティングゲームは『ヴイ・ファイブ(V・Ⅴ)』よりも『BATSUGUN』により近いデザインになっているので、こちらこそが弾幕シューティングゲームの直系先祖だと私は思っている。ただし、『ヴイ・ファイブ(V・Ⅴ)』のテイストは『首領蜂』には意外なほど見受けられてはいる。
*2:特に、大きな当たり判定の機体で敵の高速弾をかすって点稼ぎする『ライデンファイターズシリーズ』に突き進んだセイブ開発は、ほとんど自滅に近い
*3:いや、ある面では『斑鳩』もそうなんだけど、敷居が断然違うのでこちらもお勧めする。