シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

シャクティから碇ユイへ----アニメ地母神の系譜(紹介)

 
 
 シャクティから碇ユイへ----アニメ地母神の系譜を振り返る(汎適所属)
 
 
 宇野常寛さんが“母性のディストピア”を連載するというので、以前の宇野さんの文章を振り返るのも兼ねて、アニメ地母神の系譜と現代男性のメンタリティについてまとめてみたのがリンク先テキストです。
 
 『Vガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』には、理想女性のアイコンにすがらずにいられない男性と、そのような理想を引き受けつつも男性を心理的に束縛して離さない女性との、共依存的関係が繰り返し描かれています。これらの“アニメ地母神の系譜”に描かれている人間関係は、現代人の――とりわけ団塊ジュニア世代〜ロスジェネ世代の――母子関係や男女関係を考えるうえで示唆的だと思います。
 
 アニメ地母神の系譜自体は、シンジがLCLの胎内を破ってアスカと対峙することを選んだことによって決着がつきましたが、現実社会の男達はそのようにはならず、「萌え」をはじめ、今でも理想女性のアイコンを選ぶことが当世流であって、現実の異性と対峙する身振りは流行していないようにみえます。おそらく、“母性のディストピア”“地母神の束縛”といった関係性の問題は、エヴァが放送されて10年経っても克服されていないのではないか?だとすれば、『Vガンダム』『エヴァ』に描かれている諸問題は、克服された過去の問題というよりは、未だタイムリーさを失わない、私達が片付けないまま残している宿題なのではないでしょうか。
 
 リンク先のテキストが、母と子の関係、男と女の関係をそういった視点から眺めやるオリエンテーションとなれば幸いです。
 
 ※なお今回は、第二次惑星開発委員会 PLANETS Vol.2内の“ゼータ(ゼータ)の墓標 私的富野「由悠季」論”と、id:PSB1981さんの[カテジナ日記]を大いに参考にしました。2006年の宇野さんの問題提起と、2007年頃のid:PSB1981さんのテキストはどちらも非常に興味深く、読みやすくまとまっているので、お奨めです。