シロクマの屑籠

はてな村から引っ越してきた精神科医シロクマ(熊代亨)のブログです。

データを溜め込む事が高度に目的化したオタクとの遭遇

 
 私は色々な価値観や生活観のオタク趣味者と会うことを歓びのひとつとしている。例えばゲーム界隈ひとつ取っても、コレクター・技術者・ハイスコアラー・クソゲー鑑賞者などなどといった様々な“お付き合いの仕方”のオタク達がいるわけで、オタク達の価値観なり生活観なりには様々なバリエーションが存在する(と私は理解している)。
 
 昨日会ったBさんは、あんまり会ったことのないタイプだったので記録に残しておく。拘りどころがちょっと珍しいというか、変わった執着の仕方というか。それとも、偶々私が知らない界隈ではよくあるタイプなのか。
 

  • BさんはグラフィックやゲームBGM、同人音楽などを愛好している。コミケなどでも積極的にCG集や同人CDを買い漁るほうで、夏も冬も重い戦利品を抱えて凱旋するのだという。まあ、ここまではわかる。よくあるタイプの一つだ。
  • Bさんはそれらを“溜め込む”のである。CG集やら同人CDやらを買うと、Bさんは片端から大容量記憶媒体にまとめて保存してしまう。DVDやらAIT(Advanced Intelligent Tape)やらに、整理して保存する。
  • 勿論、自分で買ったエロゲーや洋ゲーなども「とにかくまずは記憶媒体にバックアップ保存する」。プロテクトがあろうとなかろうと、とりあえずAITの中に格納されるゲーム達。
  • 「ネット上のCGを保存する」という活動も、いつの間にか「ネット上の有象無象を保存する」に置き換わり、遂に常時大量のサイト・掲示板・ブログをローカル保存するに至った。保存はネットのローカル保存に特化したPCを使って自動的に、昼夜を問わずに実行される。「半年放っておいたらサイトとコンテンツがなくなっちゃうかもしれないから」という懸念のもと、一定の期間ごとにローカル保存が実施され、それらは逐一記憶媒体に堆積することとなる。一体どれぐらいの容量がローカル保存されているのかは、誰にも分からない。もしかしたら、あなたのサイトやブログも保存されているかもしれない。
  • winnyの類に関しては、「違法性が高い」「それって受信でしょ」という理由で使っていない。あくまでBさんだけが溜め込むことが重要なのであって、ファイルを交換するという選択肢は無いとのこと。
  • こうして、一人では絶対に消費し尽くす事の出来ないデータとコンテンツが24時間絶え間なくBさんの家に蓄積していく。大量の電力とパケットを消費して、AITに封じ込められるデータやコンテンツ達。集めたデータやコンテンツは、誰に渡されるでもなく、ただただ押し入れの奥へと堆積していく。一度も顧みられることのないデータやコンテンツも多いという。 
  • 曰く、「データやコンテンツを楽しむよりも、それらを保存すること自体が楽しいんです」と。Bさんとて、オタク趣味コンテンツをそれなりに楽しむ道を知ってはいるわけだけど、それは二次的・副次的なものであり、一番執着しているのは「データやコンテンツを溜め込むこと」にあるのだという。Bさんにおいては、“データを保存し溜め込むこと”が徹底的に目的化しているのが見て取れた。
  • 溜めたデータやコンテンツを他人に分け与えるでもなく、nyなどに流すでもなく、プロテクトを破ることに歓びを見出すでもなく。壮麗なコレクションを自慢するような自意識も感じられない。とにかく「溜めること」「保存すること」に傾倒するという在り方。こういう“溜める事自体が高度に目的化したオタク”というのは結構いるんだろうか?何か別の理由で大量のデータやコンテンツを溜め込むオタクはあちこちにいると思うんだけど、溜めること自体が高度に目的化し、溜め続けるという境地に安んじる心理は(私にとって)はじめてみかけるもので、大いに刺激を受けたと思う。

 
 “とにかく溜める、ひたすら溜める”という快楽追求の在り方は、似非フロイト流に表現すると肛門的な何かを予感させるし、その行為は肛門的固着のラインに沿っている、ようにもみえる。Bさんはその傾向が他の殆どのオタクさんと比べて際だっている。どうしてこんなにユニークな溜め込み快楽追求が生まれたんだろうか?ともあれ、人の数だけコンテンツとの付き合い方が存在するのは自明のことなわけで、それぞれのオタクはそれぞれのやり方でコンテンツを楽しめばいいんだろうな、と思った*1。Bさんの溜め込みオタク人生の益々の発展を、祈りたい。
 

*1:勿論、法的に黒っぽすぎることや、他人に迷惑をかける行為はまずいだろうけれど