シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

悪魔がインターネットに降りて来る時間にぼやきを書く

 
 日曜は昼間から原稿や読書に取り組み続けてへとへとになってしまい、午後7時頃にうとうとしてしまった。疲れが溜まってかワインを呑む気にもなれず、そのまま夕食&就寝。しかし早くに寝れば早くに起きてしまう。七転八倒しても眠れなくなったので、やけを起こして今ブログを書いている。
 
 十年前は、私も若くて――というより若さゆえの過ちによって――深夜まで起きてブログを書いたりtwitterで叫び声をあげていたりした。昼間の仕事の質は下がるし、ブログにハチャメチャなことを書いてしまったりするおそれもある。一度、午前2時にオフ会のおしらせをブログに書きこみ、翌朝まったく覚えていないという「やらかし」を経験したことがあった。また別の時には、午前3時に一本3万円のブルゴーニュの特級ワインを購入して頭を抱えたこともある(しかも、それが不味かった!)。
 
 私以上に古くからインターネットに精通している人々は、0時をまわったインターネットには悪魔が住んでいる、といった成句をよく言っていたと思う。実際、インターネットのベテラン級のアカウントでも、0時を過ぎるとタガが外れやすくなって、きわどい書き込みが増えるように思う。それを一種の放送事故のように楽しむネットウォッチ勢もいたし、私もその一人を気取っていたこともある。だが、深夜のインターネットをウォッチしている者は、深夜のインターネットからもウォッチされているのである。ウォッチしているつもりが、たまらずtwitterのタイムラインに飛び込んで、みっともないパフォーマンスをしでかしてしまうこともあった。ま、そうやってお楽しみを増幅させても社会的ダメージには繋がりにくかったのが10年ほど前のインターネットとtwitterだった、ということでもある。
 
 さて、ここからがぼやきタイムだ。
 
 私は今、とても良い仕事をさせていただいているつもりだ。本業では本業の良い仕事をさせていただいているが、執筆という点でもなかなか良いお話を頂戴していて、どれも、それなりにスケジュールに負けないように進めてはいる。私は原稿の〆切日を過ぎてしまったことは今までに一度もないので、たぶん、そういう点では先方にご迷惑もかけてはいまい。はてなのシロクマすなわち熊代亨らしい文章をそれなり宿した文章を書かせてもらっているのはありがたい限りのことだ。
 
 それでも、そうやって複数の文章作成ミッションに携わっていると懸念が生まれてくるところもある。自分はこんなことをやっていて本当に大丈夫なのか?
 
 自分が本当にやりたいこととは、現代人の社会適応のバリエーションを知って、その背景にある社会構造や個別的なパーソナリティや精神病理もまじえながら紹介していく、さながら「現代人の社会適応の総説的な書籍、または適応大百科」をつくることだ。この200年ほどの欧米と日本の社会システムやメディア構造の変化を踏まえたうえで、現代人の社会適応とは歴史的にどう位置付けられて、現代という時代の枠組みのなかでどのような社会適応を彼らがキメているのかを詳らかにする書籍を書いてみたい。今、取り組んでいるミッションは、多かれ少なかれ、その最終ミッションの予備的考察として役に立つものだと信じてやっている。
 
 だが、そんなご大層な目標に向かって、私は本当に進めているのだろうか。進み続けるだけのバイタリティはあるのだろうか。自分の頭があとどれぐらい明晰な時間を確保し続けられるのだろうか。
 
 詳しいことは書かないが、私は、かつていじめに遭って不登校になっていたことの爪痕とおぼしき、身体に弱い部分を持っている。たいしてバイタリティが無い私が、本業をこなしつつ、子育てという名のハードコアな育成ゲームに真摯に取り組みつつ、なおかつアニメやゲームといったオタク文化圏由来のサブカルチャーにも目を通し続けるというのはなんだか無謀のようにも思えてくる。この調子でいくと、私は十年以内にモノを書けなくなってしまうのではないだろうか。
 
 今、一緒に仕事をやっている皆様の仕事は、どうにかやってみせますとも。でも、次のミッション、その次のミッションまで私はこなしきれるのだろうか。ちょっと自信が無いところもある。あるいは一年間ほど、書籍を読んだり、オフ会に出まくったり、インタビューに行きまくったりして、ちょっと違った風にやらなければならないのかもしれない。『艦これ』の甲勲章を毎回勝ち取っているのも良くないのかもしれない。
 
 こうした問題は、ある程度は良質のワインで緩和できるのだろう。しかし、ちょっとムサクサした日に、シャンパーニュを家内とがぶ飲みできる余裕は、子育てしている自分には無い。ブルゴーニュの一級は、かつては月2-3本のペースで対峙していたが、とても今はそんな気にもなれないし、そもそも疲れすぎていて立派なワインをあけようという気力が足りないことが増えている。
 
 私は単著を出してまだ5年しか経っていないひよっこだが、私が望むような社会適応の本を出すためには、あと10年はこのような活動を続けなければならないだろう。これ、うかうかしていると途中で過労死するやつじゃないだろうか。今死んだら、子どもをはじめ、家族に大変に迷惑なことになってしまうから、死にたくない。さりとて、命を重視していると文章を書くいとまも閃きも生活リズムや健康最優先の思想の前に遮られてしまうことになる。
 
 私は睡眠不足が祟ってしばしばハイテンションになってしまうことがあって、そのような時の自分は「モノ書きの神様がついている」と例えたくなるような突貫工事に成功することがある*1。反面、夜間に悪魔がインターネットに降りて来る時には、もう、目を覆いたくなるようなやらかしやご迷惑をまき散らしてカルマを下げてしまうこともあって、それが怖くて仕方がない。
 
 さて、今は午前1時11分である。
 
 悪魔は降りてきたのだろうか。面倒なので振り返ってみることはしないで投稿ボタンを押すことにする。誰かが何かを言ってきたら「むしゃくしゃしてやってしまいました。ゆうべは、モニカというサルディニア島の土着ワインを飲みながらブログにぼやきを垂れ流していたので、詳細は記憶にございません」と答えて、頭をかいてごまかそうと思う。それで許してくれない人がいるのがインターネットだが、それで許してくれる人がいるのもインターネットだ。一年間に1000回近く、いろいろな人から馬鹿にされ、問題点を指摘され、批判され、えぐるような言葉をぶつけられて、それでも一応正気を保てている自分のことを誰か褒めてくれ。褒めてくれよー! しかし、こんなことは普段は言っちゃだめだし「ブロガーは褒められねど高楊枝」なのである。
 
 あー、なんかわけのわからないものを書いてしまったがスッキリしたな。これ、明日の朝になってがっかりするやつだ。やはり0時を過ぎたインターネットには悪魔がいて、俺の自制心とか戦略的思考とか麻痺させていったようだ。しかし、昔は私がブログでサバトやったって良かったはずなのだ。twitterで地霊や妖精や魔獣とお話しても良かったはずなのだ。頼むよインターネットよ、眠れない午前1時のいら立ちと酒に曇った指先が産み出す過ちを、懐深く包んでくれ。そうして欲しいんだ、きっと今の俺は。
  
 このブログの読者にとって役に立ちそうな情報は、何一つ書けかったような気がしてきたが、少し眠くもなってきたので、これで寝ることとする。この文章の後半は意識がもうろうとしていたので馬鹿なことを書いているかもしれないが、たまには許して欲しい。
 
 午前0時を過ぎたインターネットには悪魔が憑いていて、書く人間をかどわかすのだから。
 おやすみなさい。
 

*1:そのかわり風邪をひくなど、体調を崩す