シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

お前マジェスタ、俺珍走

 
 ネット珍走団のブォンブォンブォンブォンという騒音が響き渡ります - シロクマの屑籠
 
 さて、そろそろ反省会の時間です。『目くそ鼻くそを笑う』という諺もございます。そろそろ、目くそを笑う僕達鼻くそ達のいじましさについても言及しておきましょうか。
 
 確かに、ネット珍走達はこっけいかもしれません。「祝祭」「投影」「イコン」などという語彙でテキストをけばけばしく飾り立て、自意識の喇叭を大音量で吹き鳴らし、ありとあらゆる場面と手段を用いていびつなコミュニケーションを試みるネット珍走なのですから。いかにも彼らの行動は青く、拙く、みっともなく、非生産的ではあります。
 
 しかし、ネット上の走行行為に自意識を賭けている、という点に関する限り、ネット珍走達の執着を笑って済ませることは出来ません。ほら、ネット珍走達の傍らを、澄ましたマジェスタが走り去っていきます。ああ、乗っているのはPV数2000/dayのアルファブロガーみたいですよ!
 

お前マジェスタ、俺珍走

 
 安っぽい改造blogでがなり立てる、可哀想なネット珍走を、笑っている人達がいます。マジェスタblogやらベンツblogやらセルシオblogやらを乗り回して気取っている人達がいます。彼らはお上品に、お利口に、可哀想なネット珍走の目の前を通り過ぎていきます。ネット珍走に“しねばいいのに、しねばいいのに”とクラクションを鳴らされても、彼らは華麗にスルーしていくだけです。どうしても五月蠅いと思った場合も、コミュニケーションするというよりもむしろ、車体の大きさを生かして“珍走の自意識を轢いてしまう”ことが多いようです。
 
 マジェスタblogも、ベンツblogも、セルシオblogも、結局の所、お上品に澄ましているから騒音扱いされない&通行人の目を惹いてはいるものの、彼らの内から吹き上がる自意識の奔流に、本当はあなたも気付いているんじゃないでしょうか。無論、商用車blogではそんな事はあまりないかもしれません。ですが、自家用blog*1で、不必要なほど自意識を賭けてこしらえられたものを乗り回している人達は、果たして無邪気にネット珍走達の自意識の発露を笑うことが出来るでしょうか?お澄ましして、分際を弁えない高級車blogを乗り回した挙げ句*2、ネット珍走達に見下ろして優越感を備給する彼らは“ネット珍走と案外似たようなもの”ではないでしょうか?いやいや、むしろ澄ました仮面の下で蛇の舌をチロチロさせている分、業が深いと言えるのではないでしょうか?
 

まるで、地方国道における乗用車を用いた自己顕示の如く

 
 この視点でみていった時、ネット上の自意識やコミュニケーションを巡る情勢は、ちょうど地方国道における乗用車を用いた自己顕示ゲーム・ステータス呈示ゲームに喩えることが出来るかもしれません。ネット珍走はネット珍走然として眼差しをかき集め、マジェスタblogやセルシオblog、ハチロクblogなどでさりげなーくそれとなーく自意識の得点稼ぎをする人もいます。ワゴンRblogをヒマワリ畑にドレスアップしている人もいれば、リアフロントに長門有希さまを書き込んでいる痛車blogだって存在します*3。吹き上がる自意識は、ネット珍走のブォンブォンブォンブォンという騒音だけとは限りません。時に鮮やかに、時に密やかに、ブロガー達の自意識がbetされていきます。クラクションの音も絶えることがありません。ネット珍走を嗤う人は、何を嗤っているのでしょうか?技術的拙劣を笑うだけならまだしも、彼らの吹き上がる自意識を笑う時には『目くそ鼻くそ』を思い出しながら、自嘲を込めて嗤うのが良いでしょう。もちろん私シロクマも、こんな自己愛的お道化をやっているわけですから、超鼻くそというわけになります。さあ皆さんも一緒に笑いましょう、クックック……!
 
 どこもかしこも自意識でいっぱいのネット界隈ですから、ネット珍走だけを笑うのでは片手落ちというものです。お前マジェスタ、俺珍走。クリエイティビティなど午睡の夢、張り切って参りましょう。或いは、そんな所業からも文化なるものがこぼれ落ちる瞬間もあるかもしれない、と信じながら*4
 

*1:しばしば、36回ローンだったりする

*2:そして遂には高級車blogに乗り回されて

*3:個人的には、ちっちゃいちゅるやさんを僕もどこかに書き込めたらいいなとか思っています。

*4:そして文化がこぼれ落ちるのは自分トコのblogからダゼー!と自惚れながら