シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

恋愛は「集団攻撃魔法」が大切だと俺は思う

 【COI開示】編集者さんをとおして著者(トイアンナさん)から献本していただきました。
 

モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門 (文庫ぎんが堂)

モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門 (文庫ぎんが堂)

 
 かつて、「脱オタ」系ウェブサイトをやっていた身として、また、私自身も「モテたいわけではないけれども彼女が欲しい」と思っていた身として、頷きすぎて顎がガクガクになるような、なんとなくムズ痒くなるような、そういう書籍だった。
 
 過去の私などもそうだけど、恋愛経験の乏しい人は、意中の女性に対して一騎打ちのような、硬直した考えかたをしがちだ。不特定多数にモテようとするのは良くない・それは誠実ではないといった考えで、みずから視野狭窄してしまう。
 
 ガツガツ女性を追いかけたいわけじゃない。意中の女性が現れたらいいなとも思っている。けれども具体的に何をすればいいのかわからないし、いざ、意中の女性が現れたとしても手の打ちようがない――たぶん、そういう男性は今も昔も多いだろう。
 
 本書はそれに対するアンサーと言えるもので、「ファッション」「メンタル」「コミュニケーション」「深い付き合い」の四単元にわけてアドバイスしている。本来、こういうことは社会のどこかで教育しなければ身に付かないはずなのだが、学校では恋愛基礎教育をしてくれないため、メソッドを記した書籍の需要は絶えることはないだろう。実際、そういったメソッドとして優れた本書は売れているらしく、早くも重版が決まったそうだ。
 
 それはさておき。本書の前半パートにかこつけて、”恋愛は「集団攻撃魔法」が大切”という与太話を書いてみる。
 
 

「集団攻撃魔法で恋愛成就する」

 
 恋愛に、男女の一騎打ちのような側面があるのは否めないとしても、それはあくまで中盤~後半の話。序盤において役に立つのは、一騎打ちのような意識ではない。
 
 ドラクエ風に言うと、恋愛は、単体攻撃魔法のメラやメラミやメラゾーマで決まる部分よりも、集団攻撃魔法のイオやイオラやイオナズン、グループ攻撃魔法のヒャダルコやヒャダインやマヒャドで決まるものではないだろうか。
 
 たとえばファッションやルックス。
 
 俗に「ただしイケメンに限る」とはいうけれども、そうしたイケメン性やファッションの無難でこざっぱりとした心証づけは、特定女性だけを狙い撃ちにしたものではない。まあ、なかには奇抜なファッションで意中の女性の心だけを撃ち抜く人もいるかもしれないが、ほとんどの場合、ある女性を惹きつけるファッションやルックスと、不特定多数の女性を惹きつけるファッションやルックスは共通している。
 
 だからファッションやルックスは「全体攻撃魔法」みたいなものだと私は思う。意中の女性だけに効果があるのではない。意中ではない女性にも、街ですれ違った見知らぬ女子高生にも、食堂のオバサンにも効く。
 
 これは、会話についてもある程度は当てはまることで、ある女性にとって望ましいコミュニケーションの態度と、女性全般にとって望ましいコミュニケーションの態度は、(全部ではないにせよ)かなりの部分まで共通している。トイアンナさんは、女性とのコミュニケーションの練習として

 Lv.1 コンビニの店員さんに道を聞く
女性へ話しかける訓練をしたいとき、いちばん簡単なのは業務上相手が絶対に対応してくれる場所を選ぶことです。コンビニの店員さん、警察官の女性などへ道を聞きましょう。最寄り駅の向かい方など、誰でも答えられそうな場所への道を教えてもらうのが王道です。
 これなら「3日間お風呂に入っていない」「パンツ一丁」などよほどの事情がなければ拒絶されません。強いて言うなら、混雑している時間帯にお願いすると嫌がられるのでレジが空いているか確認してからにしましょう。

 と書いていて、その次のステップとして飲み屋やイベントを挙げておられる。こういう経験蓄積のフィードバックはけして小さくない。業務で女性と会話する時でさえ、そのときの言動によってポジティブ~ネガティブまで、いろいろな反応が返ってくる。そういった反応の違いを検分しながらトライアンドエラーを繰り返していけば、女性全般にだいたい通用する振る舞いが少しずつわかってくる。そういうノウハウは女性全体に効果があるので、いつまでも役に立つ。
 
 また、女性は、男性全般の評価や評判を、仲間内のグループや社会関係のなかである程度シェアしていることが多い。だからコミュニティのなかの女性Aと恋仲になりたいと思った時、彼女と親しくしている女性Bや女性Cからの評価が悪ければ恋愛はなかなか上手くいかない。女性Aが信頼しているオバサンDから目の敵にされていても、仲良くなるための難易度は高くなるだろう。
 
 そういう意味でも、「一人の女性と一騎打ち」のような恋愛観は危ない。あるコミュニティ・ある場において女性と仲良くなるためには、その女性だけと仲良くなろうとメラやメラミやメラゾーマを唱えても、たぶんうまくいかないのだ。それよりは、全体攻撃魔法のイオやイオラやイオナズン、それかグループ攻撃魔法のギラやベギラマやベギラゴンを――つまり、女性全般に効果のあるようなアプローチや、グループ全体の心証を改善するようなアプローチ――を必要とするのだと思う。
 
 「将を射んとせばまず馬を射よ」という言葉がある。
 
 私は、恋愛もたぶん同じだと思っている。意中の女性と仲良くなる際には、その意中の女性と仲の良い別の女性や、その意中の女性に影響力のあるオバサン*1と仲良くなるぐらいの意識のほうがうまくいく。よしんばうまくいかなくても、そのプロセスのなかで対女性ノウハウが鍛えられるので、損をすることはない。
 
 「意中の女性と10喋るなら、その周りにいる女性たちと50以上は喋る」ぐらいの意識でだいたいOKなんじゃないだろうか。
 
 

「まだ、意中の女性なんていないんですけれど」に対する回答

 
 こう書くと、「まだ、自分には意中の女性なんていません」という答えをする人がいるだろうし、それはそれで、よくある話ではある。
 
 これに対する答えは、「いつでも意中の女性が現れても構わないように、女性とのコミュニケーションのノウハウをとりあえずで蓄積させておいてはどうですか」だ。
 
p-shirokuma.hatenadiary.com
 
 恋愛が始まってからアタフタコミュニケーションを始めても、間に合わないことが多い。それなら恋愛が始まる前から準備を整えておいたほうがいいんじゃなかろうか、という発想だ。
 
 最初から特定女性を意識する必要なんてどこにもない。後付け的に誰かのことを好きになったって構わない。むしろ、あらかじめコミュニケーションの土台ができあがったうえで後付け的に誰かのことを好きになったほうが、その恋愛の成就確率は高いはずだ。惚れるのは、仲良くなってからでも遅くはない。
 
 本書の後半パートは、そうやって一定の仲まで進んだ男性へのアドバイスへと進んでいく。でも、それは一定の成就をみた後の話であり、手前の段階では「将を射んとせばまず馬を射よ」、とどのつまり、「集団攻撃魔法」のロジックでいいんじゃないかと思う。
 
 モテたいわけではない人でも、いつか誰かと仲良くなるための橋渡し的なノウハウはあったほうがいいと思う。備えあれば憂いなし。
 
 

*1:しかも、オバサンはしばしば女性としての社会関係スキルが滅茶苦茶高いので、オバサンから学べることは無限にある。オバサンとのコミュニケーションは本当に重要。あれはコミュニケーションの技能の宝庫ですよ。