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シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

やるじゃないか、アメブロのブロガーも

 
 以下の書籍を、アメブロでブログを書いている菊乃さんというブロガーからご恵投いただいた。
 

あなたの「そこ」がもったいない。

あなたの「そこ」がもったいない。

 
 
 この菊乃さんとの間には、金銭的な利害関係は無い。いや、だからこそというべきか、今、私はこのような文章を書いている。彼女とはいろいろな出来事が起こったが、その全体像が、書籍を読んでようやく理解できた気がしたからだ。
 
 

1.アメブロブロガー、シロクマを無料で召喚する

 
 ことの始まりは、2015年に届いた一通のメールだった。
 
 アメブロでブログを書いている女性から、恋愛.jp向けのインタビューをさせて欲しいと依頼があった。なんでも、「真面目系クズと依存性」を読み、自己啓発やスピリチュアルへの依存について質問したいとのこと。
 
 で、やりとりしてみると「どうか無料でお願いします」とのこと。えーマジでー?
 
 当時から私はいろいろ忙しくて、無料執筆や無料インタビューのたぐいは断りまくっていた (タダで仕事をやってもらいたいという人は、案外存在するのである) 。そんな暇があったら自分のブログに書きたいことを書くか、参考文献を漁るか、オタクとしてのクンフーを積むべきである。
 
 ところがこの菊乃さんのメールには、よくわからない雰囲気があった。「無料でお願いします」系に漂っている、ケチくさい雰囲気が見当たらない。それとは違う……なんというか……能天気な雰囲気が漂っていたのである。
 
 「この菊乃さんという人、いったい何者なのか?」
 
 ある種の怖いもの見たさで、私はこのブロガーに興味が沸いてきた。しかも先方はアメブロブロガー、オフ会をやるとしたらこれが初めてだ。これで、ほとんど決まったようなものだった。
 
 

2.アメブロブロガー、熊代亨を東京駅の構内アナウンスで呼び出す

 
 そうこうしているうちに、菊乃さんとお会いする日がやってきた。
 
 その日の私は、出版社で相談事をするために上京することになっていた。そのついでにインタビューを受ければ交通費はかからない。とりあえず、私達は東京駅の丸の内中央口で落ち合うことにした。
 
 ところが、丸の内中央口に菊乃さんの姿が無い! 15分ほど待ってみたが連絡無し。携帯電話を鳴らしてみても、メールを送ってみても繋がらない。さあ困った*1
 
 やむを得ず、東京駅のほかの改札も探してみることにした。30分……40分……それでも菊乃さんは見つからない。ふざけんなコラ感が沸々とこみあげてきた時、突然、構内アナウンスが聴こえてきた。
 
 「お客様のお呼び出しを申し上げます、熊代亨さま~、熊代亨さま~、お連れ様がお待ちです。丸の内地下北口改札までお越しください~」
 
 うわっ! 東京駅にはてな村の人間がいたら恥ずかしい!!
 
 しかし、このアナウンスが私の苛立ちを吹き飛ばしてしまったのも事実で、無事に落ち合った後、私はおとなしくインタビューを受けたのだった。
 
 インタビューを受けている時の菊乃さんの印象は、それまでの出来事に比べればまったく常識的で、礼儀正しく、人間心理を追いかけている人として矛盾しないものだった。服装にも隙が無く、社会人としてまっとうな振る舞いにみえる。インタビューもそつなく終わり、その後のやりとりにも、特段におかしな点は見当たらなかった。少なくともこの時点で、私はそのように判断した。
 
 

3.今度は献本&ブログで紹介して欲しいとお手紙があった

 
 それから一年以上、私は菊乃さんのことを忘れていた。あちらはアメブロブロガー、こちらははてな村のブロガーなのだから、それは当然のことだろう。
 
 ところが先日、突然、菊乃さんから「書籍を出版します。献本してもいいでしょうか」とメールが舞い込んできた。献本? まさか、うちのブログで紹介して欲しいってことだろうか? はたして、ご恵投いただいたご著書には小さな手紙がついていて、「ブログで紹介していただけると嬉しいです」と書かれていた。なんてこったい、私はそういうの好きじゃないんだ、はてなブロガーの方からご著書をいただいた時でさえ、変な勘ぐりをされたくなくて紹介しなかったのに。こういうの困るんですけど……。
 
 しかし、そうは言っても先方はアメブロブロガー、そういう紹介が当たり前だと思っているかもしれない。はてなブログ界ですら、最近の若いブロガーは、たぶん互助会的に紹介するのが当たり前と思っていそうだ。困ったなぁ、どうしようかなぁと思いながら、いただいた本を手に取って読んでみて、驚いた。
 
 「この本、社会適応に役に立ちそうなことが書いてあるぞ!」
 
 

4.社会適応の苦労人の匂いがぷんぷんする

 
 この本は、表向き、恋愛指南本ということになっている。だが、そんな事はどうでも良い。私にとって重要なのは、この本が、読者の社会適応に寄与するような内容なのか、それともふざけた内容なのか、見極めることだ。それは、筆者の人物像を理解することにもつながる。
 
 この本を読んでまず目に付いたのは、フォント弄りだった。
 
 あちこちフォントが大きくなっていて読みづらい。煽りっぽいフレーズがフォント特大にしてあるせいで、つい、そちらに目を奪われてしまう。
 
 この本に書かれているコミュニケーションの方法論は、どれもかなり地味で、しかしそれだけに、「婚活で役に立つ」というより社会適応全般に役に立ちそうな、まともで手堅いエッセンスが多いと私は思った。しかし、そういう大事なエッセンスは、フォントが大きくなっていない部分を読まなければ吸収できない。特大フォントは、この本の欠点と私には感じられた。
 
 で、肝心なコミュニケーションの方法論だが、
 
 「ありがとう」「手伝って」といった言葉をキチンと言うこと。
 「美形」を目指すのでなく、「笑顔」を目指すこと。
 自己紹介の角度を変えること。
 年齢に合った服を選び、そうでないものは捨てること。
 「娘」や「女の子」としてではなく、「女」として生きていくこと。
 
 どれも、当たり前といえば当たり前だが、細部に年の功が感じられて、やけに説得力があるように感じられた。どうしてだろうか? ……ああ、そうだ、以前、インタビューでお会いした時の菊乃さんは、まさにこの本に書かれているアドバイスどおりの人物像だったのだ。
 
 ということは、あの日、東京駅に私を呼び出してインタビューをしていた時の菊乃さんの隙の無さ・社会人としてのまっとうさは、成人後、苦労しながら身に付けたものではないか? そして自宅に携帯電話を置き忘れたり能天気なメールを送ってきたりした彼女のほうが、元来の性質に近かったのではないか?
 
 この想像が当たっているとしたら、菊乃さんは、私と「同族」ではないか。
 
 若い頃の彼女のエピソードを読んで推定するに、菊乃さんは、恋愛だけでなく、社会適応全般もそれほどうまくなかったように私には思われた。だが、成人後にトライアンドエラーを繰り返し、実践を重ねて、それで現在の彼女にまで辿り着いたとしたら――そう考えると、実物の菊乃さんと、書籍の内容の辻褄が合う。私がこの本に強い説得力を感じるのも、そのせいだろう。
 
 私も思春期の頃、社会適応がすぐれず、それでもトライアンドエラーを積み重ねて社会適応を追及していた。その時に身に付けたノウハウを文章にしたがっていること、年を取りながら社会適応を広げていこうとしていることも、彼女とよく似ている。私が見ず知らずの人間の無料のインタビューを引き受けたのも、今、こうやってブログを書いているのも、つまり、そういうことではないか。
 
 社会適応の苦しさを乗り越え、その方法論を書き記す人間に、私は惹かれやすいのだろう*2――一連の出来事をとおして、私はそんな自分自身を再認識した。
 
 

アメブロにも、時間を味方につけるブロガーはいる

 
 
 菊乃さんは、この本のなかで

 私が思うに、気軽に試してみるってことができないと、仕事にせよ恋愛にせようまくいかなくなる、というのが結論です。ということは、この本で「確実に結婚する方法」を探しているとしたら、確実に失敗します。確実な方法などありません。たくさん試しましょう。

 と書いている。これはそのとおりだと思うが、それでも、この本に書かれている方法の幾つかは手堅く、地に足がついている部類に入ると思う。そして抽象的な言い回しになって恐縮だが、「同族」には非常に有効だと思われる。
 
 アメブロにも、時間を味方につけて社会適応を築いていく方法を語る人がいるのは、私にとってひとつの発見だった。やるじゃないか、アメブロブロガーも! だが、ここははてなブログシティの辺境、旧はてな村のブログなので、この文章が売上に貢献するとは考えにくく、だからこそ、こうやって気楽に記事にできるってところもある。増版目指して頑張ってください。
 



 【追記】:らくからちゃさんから問いかけをいただいた。


 
 理由はたぶん、私が、旧はてな村民としての自意識を抱えているからだ。いにしえの分類によれば、旧はてなコミュニティには地獄のミサワ臭が漂っていて、この私も、このブログをいつも巡回していらっしゃるブックマーカーも、たぶんにそのような傾向を持っている。少なくとも最近まで、ここは明るい日差しの差し込む【はてなシティ】ではなく、【はてな村】だったのだ。その自意識とコミュニティ意識が、この文章に宿っているのだろう。ということは、アメブロの菊乃さんの事を書くことをとおして、私は、はてな村の私自身をも書いてしてしまっているのか!うわっ! あいすみません、ひらにご容赦ください。
 
 

*1:補足:菊乃さんは携帯電話を自宅に忘れてきていたのでした。遅刻じゃあありませんので。

*2:ということは、自己心理学の理屈からいくと、私は良くも悪くもナルシストということになる。まあそうだろう。