シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

甘口ワインを選ぶなら

 
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 甘いってさぁ、ジュースみたいなのを想像してんだけど、苦いじゃんかアレ。なんだよ、詐欺かよ。飲みやすいってなんだよ。飲みにくいじゃんか。
っていう話をすると、「それはお前、今までいいお酒を飲んだことがないからだよ」という反論をよく受けるのだけれど、いいお酒ってなんだ?一本何万もするやつのことを言っているのか?

 いやいや、ワインは高いからといって甘いとは限らないし、まして、ジュースに近いとも限りません。むしろ逆で、高いワインの大半はあんまり甘くないし、甘かったとしても風味が強くてガブガブ飲めたものじゃありません。
 
 そういえば、性質のぜんぜん違うワインが一括りに「甘いワイン」ってことになっていますよね。
 
 ものすごく渋くて重くて、苦みたっぷりの赤ワインが「このワインは甘めだね」と言われていたり、かと思えば、有機化合物みたいな匂いのする水飴みたいなワインが「このワインは高級甘口ワインです」と言われたり。そういったワインにジュースに近い甘さを期待したら、がっかりしてしまうでしょう。
 
 ワインショップの店員さんに「甘口ワインをください」とお願いする場合も、自分が欲しがっている味の性質をきちんと伝えないと、好みにあわないワインをお勧めされてしまうかもしれません。
 
 だから、「甘口ワインが欲しい、でも好みじゃないやつは買いたくない!」って、簡単そうで簡単じゃないと私は思うんですよ。「甘口ワインなんて、ワイン初心者の飲むものだ」なんて言う人も多いけれども、なにげに初心者には選びにくいって厄介なところです。
 
 

「好みの甘口ワイン」を選ぶための簡単なリスト

 
 インターネットで検索しても、甘口ワインを味わい別にセレクトするための記事や特集はあまり見つかりません。なので、自分でつくってみることにしました。
 
 
 【お手ごろ価格でジュースに近いワインが欲しい】
 


 
 安くてジュースに近いワインといったら、まずはこれでしょう。イタリアのアスティは、適度に甘くて安いワインの王様。どこでも手に入るし、味が大ハズレすることもありません。「ちょっとだけ生姜っぽい」「ジュースと同じぐらい飲み飽きやすい」と言われたらそうかもしれませんが、お手頃なジュースっぽいワインを狙うなら、まずこちらを。
 
 ほかにも、イタリアにはお手頃価格帯の「ジュースのようなワイン」があります。例えばキリエラとか。気になる人はいろいろ調べてみてください。
 
 
 【高くてもいい!ジュースの上位互換なワインが欲しい】
 

 
 ある程度お金をかけても構わないなら、ジュースを超越した素晴らしいワインが選び放題。ドイツワインの「シュペートレーゼ」クラスは、甘さはジュースと同じぐらいだけど、飲み心地・飽きにくさ・味の複雑さでは別世界。ドイツワインは高級すぎると甘すぎてしんどくなり、廉価すぎると酸っぱすぎてしんどくなるので、ジュースぐらいの甘さを期待するなら「シュペートレーゼ」と書かれた品を選ぶのが安全だと思います。もっと酸味が強めのものがお望みなら「カビネット」と書かれた品を、もっと甘味が強くて一層風味の複雑なものが欲しいなら「アウスレーゼ」と書かれた品をどうぞ。
 
 
 
 あと、ちょっとお値段高めだけど、シャンパンの、ヴーヴクリコのホワイトラベル。こいつはくどくない上品な甘さで、それでいてシャンパンにあって欲しいエッセンスもちゃんと含まれています。ジュースに近い甘さのワインをご所望なら、是非一度は口にしていただきたい。こいつを飲むと「甘口ワインは、安いほうが飲みやすい」なんて言えなくなります。
 
 
 【ものすごく甘くて、香りの複雑なワインが欲しい】
 
 
 ジュースよりもずっと甘くて構わなければ、ソーテルヌに逝くしかないんじゃないでしょうか。お値段は張りますが、グラスからたちのぼる香りは七色のようで、いつまでも飽きません。「偉大な甘口ワイン」をお求めなら、このクラスをどうぞ。
 
 
 ハンガリーのトカイワイン、という手もあります。でも、トカイワインもある程度お金を払わないと凄みのある品に出会いにくく、中途半端な価格のものでは感動しづらいかも。アイスワインやポートワインも似たり寄ったりで、安く済ませようとしてもなかなかうまくいかないように思います。
 
 
 【赤ワインのなかで、なるべくジュースに近いワインが欲しい】
 
 
 赤ワインでジュースに近いお手頃品といえば、「ランブルスコのドルチェ味」。普通のスパークリングワインに比べて、どこか生葡萄っぽい生臭さを伴っていることがあるけれども、そのあたりも含めて葡萄ジュースっぽいワインです。
 
 
 
 ランブルスコよりもマイナーだけど、こいつは「赤ワイン用の葡萄でスパークリングワインをつくったらたぶんこんな感じ」「子どもがイメージするような葡萄酒」な雰囲気です。たいていの赤ワインより甘酸っぱく、これ単体でも充分デザートになりそうですが、赤ワイン特有の苦みと渋みがいくらか混じっているので、「ジュースみたいな甘さと赤ワインっぽさを兼ね備えたワイン」が欲しいなら良いと思います。
 
 
 【ワイン好きの言う「甘めの白ワイン」が欲しい】
 
 
 ワインを呑み慣れている人が言う「甘めの白ワイン」が知りたいなら、これなどはどうでしょうか。普通の白ワインよりもはっきりと甘い反面、甘口ワインを欲しがっている人からは「言うほど甘くないなー」と言われるかもしれないレベルです。このワインを「かなり甘い!」と感じるようなら、もっと普通のワインの甘みの多い/少ないもわかるはず。
 
 
 
 お手頃価格で似たような甘さを体験するなら、チリ産やアルザス産のゲヴュルツトラミネール種の白ワインも。ただし、ときどき酸味が強くて甘みの少ない品に出会うことがあります。ライチやパイナップルに胡椒をかけたような風味があるので、甘みが多くても少なくても私は大好きですが。
 
 
 【ワイン好きの言う「甘めの赤ワイン」が欲しい】
  
 
 
 本格的な赤ワインのなかで「甘みが強い」とみなされるワインの代表例は、カリフォルニア産のジンファンデルでしょう。有名どころのカベルネやメルローに比べて甘みが強いので、「濃い赤ワインがもう少し甘ければいいのに!」と感じる人はジンファンデルで満足できるはず。よく探せば、安くておいしい品も見つかります。
 
 

好みにあわせた選択を

 
 こんな風に、ひとことで「甘口ワイン」と言っても性質や甘さの程度はまちまちです。求める味の方向性をきちんと意識し、好みに合った品を買い求めたいところ。*1
 
 

*1:注意:アルコールは20歳になってから。飲みすぎ、買いすぎにご注意を。夏期に購入する場合はクール便をお勧めします