シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

なんで、さやかの十六茶だけ売れ残ってるんだろ?

 
 

魔法少女まどか☆マギカ ねんどろいど美樹さやか (ノンスケール ABS&PVC塗装済み可動フィギュア)

魔法少女まどか☆マギカ ねんどろいど美樹さやか (ノンスケール ABS&PVC塗装済み可動フィギュア)

 
 こないだローソンに寄った際、十六茶に『まどか☆マギカ』のストラップがついているキャンペーンを思い出した。いそいそとお茶売り場に向かい、覗いてみると、なんと、さやかのストラップが付いたお茶だけが大量に売れ残っているではないか!うわー残酷だ!
 
 ここで疑問に思った。
 さやかって、そんなに不人気なキャラクターだったっけ?
 第一話から登場し、第四話〜第八話までは主役と言って良いほどクローズアップされていたさやか。第八話の悲愴に胸を打たれた人も多かった筈だ。それなりに愛嬌もある。なのに、どうしてさやかの十六茶だけが売れ残ってしまうのか。出番の少なかった杏子のほうが売れ残るべきではなかったのか。あ、私は杏子の十六茶を買いますけど。
 
 こういう時は、キャラ人気投票を調べてみよう。グーグルで引っかかる主要なところを挙げてみる。
 
 http://anime.biglobe.ne.jp/userranking/chara/5562/
 ・こちらは人気アニメ五作に絞ったキャラ人気投票。ノミネート作品は『化物語』『Angel Beats!』『まどか☆マギカ』『けいおん!』『とある科学の超電磁砲』と、凄い面子。この人気投票は『まどか☆マギカ』最終話放送から間もない時期に行われていることもあってか、魔法少女達が猛威を振るっている。にも関わらず、さやかだけベストテンから洩れている。
 
 http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-1695.html
 こちらでは、さやか以上にまどかが不人気に見えるが、どうやら最終話が放送される前に行われた人気投票なので、まどかにハンディがある。
 
 某アニメ店の『魔法少女まどか☆マギカ』人気投票・・・一番人気ないのは
 おそらく『とらのあな』で行われた人気投票の結果と推定されるもの。ほむら、マミさん、杏子、がベスト3をおさえ、四位のさやかとの得票差は大きい。まどかはここでも人気が無く、なんと六位。
 
 【まどか☆マギカ】シンガポールの人気投票結果にファン涙 杏子は犠牲になったのだ
 シンガポールの雑誌における人気投票。こちらは、まどかが堂々の一位。ほむらとマミさんの人気は相変わらず。杏子とさやかが番外となっている。
 
 やっぱり、さやか、人気が無い……。
 
 ただし、2chの人気投票ではもう少し健闘しているっぽい*1し、まどかもまどかで得票が多かったり少なかったりまちまちなので、さやかだけが飛び抜けて不人気、というほどではなさそうだ。
 
 

さやかがオタク受けしないのは何故か

 
 なぜ、さやかは人気が無いのか?
 『けいおん!』よりは男性オタクnativeに人気が偏っているであろう本作に関しては、「さやかがオタク受けしないのは何故か」とだいたいイコールだと思う。だから、ここではさやかがオタク受けしなさそうな理由について考えてみる。
 
 
 ・自己投影が難しい
 
 まず、さやかに自己投影するのが難しい点。さやかはそれなりにユニセックスな雰囲気のキャラクターなので、一見、男性オタクの自己投影には向いているようにも見える。しかし、さやかの辿った道はそれなりに痛々しく、なにかしら似たような経験のある人間でなければ感情移入が難しそうに見える。そして、深夜アニメの主要視聴者のなかには、さやかのような勇み足・痴情のもつれ・愚かしい転落を経験したことのある人間はそれほど多くはなさそうだ。「俺、さやかに共感しちゃうよ」より「僕はもっと冷静に考えるから、さやかみたいにはならないよ」のほうが界隈の男性のナルシシズムを充たすには手っ取り早そうに見える。
  
 付言すると、さやかの「勇気に比べて思慮が足りない」点は、オタクの自己投影にあたって大きな妨げになっていると思う。なにしろ、大抵のオタクは自分のことを「勇気>思慮」ではなく「思慮>勇気」だと思っている*2。勇気は無いけど頭は良い(と思いたがっている)諸氏においては、思慮の足りない女子中学生に自己投影しても、なんにも気持ち良く無いのである。
 
 で、振り返ってみれば、そこには暁美ほむらという、「身体の弱い、とても頭の良さそうな、一途で、なけなしの勇気を奮うユニセックス女子」という、よだれの出るようなライバルキャラクターが控えている。この分野で、さやかがほむらに勝てるとは思えない。
 
 
 ・オタクの保護欲や所有欲をくすぐりにくい
 
 自己投影に向いてなくても、オタの保護欲や所有欲をくすぐればいいじゃないか。
 
 ところがさやかはオタクの保護欲や所有欲をくすぐらない。保護欲や所有欲をくすぐるなら、それ相応に幼女っぽかったり、受動的だったり、かわいくデレてみせたりするのがよさげだが、さやかは幼女っぽくも無いし、受動的でもなく、あまりデレない。デレたシーンが無いわけではないが、印象に残りにくい前半パートでしかも相手が上条くんと来ている。
 
 この「デレた相手は上条くん」というのも曲者だ。片思いとはいえ、要は男がいるのである。ディスプレイの前で一生懸命『まどか☆マギカ』を見ている男性諸氏に向かって媚びるのでなく、上条くんに媚びるのである。これでは保護欲や所有欲をくすぐれない!しかも、上条くんのために貞操魂まで差し出し、ゾンビになって街を徘徊しているのである。そんなさやかに保護欲や所有欲を感じるのは、よっぽどの“好事家”だ。上級者向きと言える。
 
 しかも、作中、さやかを保護する役割を杏子が引き受けてしまっているため、さやかに保護欲を見出すのはますます難しい。「さやかを助けるのはあたしだ!」と頑張っている杏子の存在をスルーできなければ、さやかに保護欲や所有欲を丸投げしにくいし、そこまでしてさやかに保護欲や所有欲を投げかけるのは、これまた相当の上級者だけだろう。
 
 
 ・母性が無い
 
 さやかには母性も無い。『まどか☆マギカ』の母性担当といえばマミさんが連想されるが、彼女は見事なほど「年下の母親」「年下のお姉さん」の役割を引き受けている。もちろんマミさんの魅力は母性だけに留まらず、一万字を費やしても讃えきれないが、ここでは多くを語るまい。
 
 ともかくも、さやかが母性という魅力に恵まれていないのは確かで、そっち方面が大好きなお客さんの票はマミさんが独占しているのが現状だろう。
 
 
 ・エロくない
 
 男性向けキャラクターを考えるにあたり、エロティシズムの問題は避けて通れない。奥深いストーリーや練られたギャグを、エロはしばしば凌駕する。“お色気担当”のアニメやキャラクターを侮ってはいけない。
 
 しかし『まどか☆マギカ』はセックスアピールにはさほど熱心な作品ではなかった*3。一応、同作品内ではマミさんだけがそこそこ色気を持っていたし、[まどか×ほむら][ほむら×まどか][杏子×さやか]といった百合的カップリングはそれなりに流行ったけれども、さやかの人気上昇にエロが役立ったとは思えない。
 
 
 ・一途さが無い
 
 また、ほむら・杏子・まどかに認められる「一途」「純真」「一貫性」といった魅力もさやかは欠いている。さやかは状況にたやすく左右され、変節し、汚れながらグダグダになって堕ちていった。まさにそこがさやかの魅力だとも思うけれども、携帯ストラップとして所持していたい魅力では無いのかもしれない。
 
 



 
 こうやって点検してみると、やっぱりさやかでは人気投票に勝てなそうな気がしてきた。少なくとも“ウケる”タイプでは無いと思うし、“ウケる”ために創られたわけでもないのだろう。さやかは悲劇的な役回りで、第八話のラストシーンは見ていて震えが来るほどだったけれども、じゃあキャラクターとしてさやかが一番好きですかと言われると、それはそれこれはこれ、なのかもしれない。
 
 [関連:]http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-7165.html
 

*1:注:結果だけを抽出した綺麗な数字が見つけられなかったので、「っぽい」としておきました。

*2:思慮より勇気のあるような人間は、ヤンキーだとさえ思っているかもしれない。この点において、さやかというキャラクターはヤンキー寄りで、どこからどう見てもオタクの自己投影に好適なほむらとは対照的だ。

*3:放送当時のエロ担当アニメといえば『インフィニット・ストラトス』などを思い出す。ブヒー