先日、十六茶のさやかの携帯ストラップが売れ残っていたことについて書いたら色々なコメントが寄せられたけれど、そのなかに、とても示唆的なものがあった。
多くの人間は、自分は英雄になろうとするとさやかのようになってしまうことを自覚しているが、それを他人に口に出して言われると「うっせー、おまえに言われんでもわかっとるわ!」と言いたくなるわな。 / なんで、さやかの十六茶だけ売れ残ってる URL
これを見て、あっ!と思った。
なるほど、五人の魔法少女のなかではさやかだけ英雄っぽくない。もっと言うなら、神っぽくない。ちょっと並べてみよう。
まどか:最終話でまさしく神になった。
ほむら:世の終わりまで時を超えて戦い続ける超戦士。半分神。
杏子:魔女になったさやかに身を捧げる。最後はほとんど聖女。
マミさん:弱くても、頑張ってみんなの先輩やってる人。地獄道に現れた地蔵。
さやか:どこまでも人間らしい、普通の女子中学生。
マミさんの場合、元は普通の女の子だったけれど、能力が足りないなりに“魔法少女をやっている“感があった――迷子のまどか&さやかの眼前にBGMを伴って現れた“地獄に仏”めいた演出も手伝って、どこか地蔵菩薩っぽさが漂っている*1。こういうニュアンスは、さやかには無かった。
そんなわけで、どこか神様めいた、拝みたくなるようなニュアンスの籠もった魔法少女達のなかに、一人だけ人間臭い魔法少女が混じっているのが、さやかということになる。
人間的なさやかに、御利益を連想するのは難しい
さやかの魅力は、人間的な、あまりに人間的なところにあると思う。他の魔法少女達が、良くも悪くも人間離れしているのに対し、さやかだけ、徹頭徹尾普通の人間を地で行くような描かれ方をしている――これを愛さない手は無いと思う。
ただ、この手の人間臭い魅力は、“神様の御利益”を無意識に期待したくなるようなキャラクターコンテンツには向いていない。そういえば、さやかに関しては、以前こんなお守りが売られていた。

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……なんて御利益の無さそうな!
繋がる筈の男女の仲も、ほどけてしまいそうだ。
また、さやか関連のグッズでは、こんなツイートも見かけた。
前にイベントでさやかのパスケースが当たったけど、持ってると呪われそうだと思った。大好きなのに。そう言う意味ではヨゴレキャラというよりもケガレに近いか / なんで、さやかの十六茶だけ売れ残ってるんだろ? - シロクマの屑籠 URL
ヨゴレキャラというのは流石に言い過ぎとしても、さやかに“御利益”を期待するのは難しそうだ。まあ、このあたりは、グッズ生産者側があまり考えずにつくっている*2のかもしれないけれど。例えばマミさんのこれ↓。

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……交通事故に遭いそうなお守りだ……。マミさんには、他の御利益を期待したほうが良さそうなのに……。
で、携帯ストラップの話に戻ると、携帯ストラップも、実は“お守り”なんだと思う。上のツイートでは、 @tyokorata さんはパスケースにスピリチュアルなニュアンスを(おそらく無意識のうちに)感じている。こんな風に、正規のお守りではないものにもスピリチュアルな連想をする日本人は少なくない。ガラケーにストラップをジャラジャラつけているような人は、自称無宗教ではあっても、どこか信心深い人なのかもしれない。“アニミズムの断片をジャラジャラさせている”とでもいうか。
であれば、携帯ストラップやパスケースの類は、肌身離さず持っていて好ましそうなキャラクター・持っていて気分の良さそうなキャラクターのほうがウケが良いだろう。敢えて俗っぽい言い方をするなら、“パワー”のあるグッズじゃなければダメなのではないか。
この点、さやかには明らかに“パワー”が足りない。もちろん験担ぎという意味でも向いていない。コレクションとして所有するには問題無いが、日頃から持ち歩くには難易度が高い。それでもさやかのストラップを肌身離さず持ち歩くのがホンモノのさやかファンかもしれないが、そこまで好きでない限り、わざわざそうしようとは思うまい。
『まどか☆マギカ』の魔法少女達のなかで、一番人間臭い魅力を持ったさやか。けれども人間臭いが故に、“パワー”を無意識のうちに期待されるグッズの分野では、今後も苦戦が続くかもしれない。