シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

MSキュベレイから地母神キュベレーを連想してしまった瞬間

 
 少し気になることがあって、ここしばらくは秋葉原連続通り魔事件の、加藤容疑者について調べ直していた。今になって振り返ってみると、あまりにも様々な報道と言及がなされていて、殆ど収拾がつかないような有様だ。そのなかでは、週刊現代が6/28号〜7/26号で報じた、容疑者の弟の方の手記が非常に密度が高く、目を逸らせない迫力があったように思う。
 
 この週刊現代の記事のなかに、ほんの少し、ヘンな想像力を誘発するくだりがあったので、紹介してみる。
 

 タンスの上に載っているのは『機動戦士Zガンダム』に出てくるロボット『キュベレイ』、その下に置いてあるのはホンダのスポーツカー『NSX』のプラモデルです。
 
 (週刊現代7/26号、秋葉原通り魔【加藤智大容疑者・25歳】弟は実家【青森】へ 「父【49歳】の懺悔、母【53歳】の錯乱」より抜粋)

 
 そうか、加藤容疑者の部屋にはキュベレイが置いてあったのか。
 
 このblogをいつも読んでいる人ならご存じだろうが、キュベレイは『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ZZガンダム』に登場したモビルスーツで、ハマーン・カーンの愛用機として知られている。優美なフォルムと圧倒的な戦闘力、そして操縦者ハマーン・カーンの魅力もあいまって、多くのファンを魅了してきた。若々しくも勇ましい“ハマーン様”の愛機に相応しいモビルスーツという認識が一般的だろう。
 
 しかし、オタ諸兄ならご存じの通り、このキュベレイの語源はかなりヤバい。
 
 キュベレー(Κυβέλη)はアナトリア半島に端を発し、古代地中海世界で広く崇拝された大地母神だ。ギリシア神話にも登場し、そちらではアグディスティスと呼ばれていた。当初、この神は両性具有の神だったが、あまりに乱暴だったためにオリンポスの神々に男根を切り落とされ、女神となったという。その切り取られた男根が巡り巡ってキュベレーの息子*1を育むことになったが、このキュベレーは息子に惚れ込んでしまい、息子の婚礼会場に上がり込んだ挙げ句、息子の正気を失わせてしまい、自ら去勢をさせてしまったという。このような逸話があってか、キュベレーに仕える神官は去勢するのがデフォルト、となっていた、らしい。
 
 大地の豊穣の神であると同時に、息子を捉えて離さない嫉妬深い女神キュベレー。息子の男根を切り取り、自らもまた男根を持った母親として君臨するキュベレー。加藤容疑者が(モビルスーツの)キュベレイのプラモデルを自宅に飾っていたのは、もちろん大地母神信仰のためではなく、単にMSキュベレイやハマーン・カーンが好きだったからなのだろうが、キュベレーという言葉の語源に思いを馳せると、なんとも暗喩的な偶然にみえてきてしまう。
 
 言うまでもなく、これは明らかに考えすぎ・勘ぐりすぎの類で、過剰に意味を見いだしてしまった連想ゲームの類でしかない。ただ、週刊現代の記事に目を通した時、キュベレイのプラモデルという記述から、即座に地母神キュベレーの逸話を連想せずにはいられなかったのは確かだ。普段の僕は、キュベレイをみてもキュベレーはまず連想しない。ハマーン・カーンがシャア・アズナブルに拘りまくっていて、それをパプテマス・シロッコが面白がっている構図がなによりも第一に連想されるのが常だ*2。にも関わらず、今回は地母神キュベレーが真っ先に頭に浮かんだわけだ。そのような連想を誘発するような何かが、加藤容疑者関連の記事や報道全体に漂っている。何か、嗅いではいけないものの臭いをかいでしまったような気がした。
 

 
 

*1:アッティス

*2:詳しくは、TV版Zガンダム最終話、または小説版Zガンダム『猿芝居』参照。