症例15(汎適所属)
今回投稿いただいたOさんの文章をみていると、社会適応のきっかけとしてオタクコミュニティへの同族嫌悪が働いた一例、という印象は否めません。オタク趣味そのものがOさんの適応を妨げていたかというと、むしろ救いになっていた部分があったと推測されますし、Oさんが造詣深いオタク趣味愛好家という状態だったのかは必ずしも定かではありません。現時点におけるコミュニケーションと社会適応の幅も、20歳という年齢を考えるにつけても、むしろこれからが本番といったところでしょう。
しかしOさんの生活史をみる限り、どうやらこれまでの脱オタ症例検討のものとは明らかに質量の異なる、biologicalなハンディが幼少期に存在した可能性が疑われます。Oさんは、思春期の初期からというよりも、出生時からずっと、コミュニケーションと適応に関する重大なハンディに晒されていたのではないかとシロクマは考えています(家族が抑圧的だったとか、多少性格傾向に偏倚があったとか、転校したとか、そういうレベルではなかったのではないでしょうか)。この状況下において、スクールカースト的抑圧から免れることは困難だったことでしょうし、そのなかでゲームやコミックといったhobbyが果たしていた役割は少なからぬものだったと思われます。Oさんにとってのゲームは一時期は命綱となり、思春期のある時期を越えてからは同族嫌悪を投影する対象となりました。詳しいいきさつをみたい方は、リンク先のテキストをご覧下さい。生々しいテキストですが、それだけに、何とか世間と付き合っていこうというOさんの呼吸が伝わってきそうな文章だと思いました。