周回遅れで『この青空に約束を』開始。これは偶然の神のお導きであって必然ではない、のかもしれないけれども、今のところこれまで自分がプレイしてきた学園モノエロゲーとのある種の互換性なり共通点なりを持った作品というファーストインプレッション。即ち、学園モノエロゲーであり、学園モノエロゲーであって、学園モノエロゲーというフレームというか。「これは俺の見知っているジャンルだ」という地に足のついた感覚でプレイしていく。
学園モノエロゲーの描写なり表現技法なりに一定のステロタイプが存在としても、ちょうど和風懐石なりドライジンなりに形式や様式があるのと同じような、或いはジャズ音楽にはジャズ音楽なり印象派絵画に形式や様式があるのと同じようなことだろうから、何の問題ない。いやむしろ、そのジャンルがプレゼントする精神性なり時代性なりが籠もっているやもしれないし、後世誰かがそこら辺を云々する日も来るのかもしれない。ジャンルのなかにおいて個々の作品の優劣があったり意外性なりオリジナリティなりが展開される筈なわけで、そこら辺を確かめるのは大きな楽しみだ。ビジュアルノベルという形式が日々進化・洗練されている一端を、『この青空に約束を』から垣間見ることが出来ると期待しよう。
「エロゲーはどれもこれも同じ」などという理由で敬遠するなどという勿体無い選択は、これからも僕にはあり得ないだろう。たとえジャンル・様式に慣れ親しんだとて、新しいイタリアンレストランのペペロンチーニが常に可能性を秘めているが如く、あるいは運慶・快慶の仁王像に出会うたびに感動するが如く、新しく出会った学園モノエロゲーを僕は鑑賞するのだろう。幾ら毎日ウォッカを飲んでいたとしても、新しいウォッカとの出会いは嬉しいのと同じ。『この青空に約束を』も、僕がこれまでにプレイした学園モノエロゲーと共通項を持ってはいてもやはり未知の作品には違いない筈で、きっと新しい感想と新しい印象をもたらしてくれるんだろう。
旅の始まり。開栓したばかりのワイン。知らない奏者のJ.S.バッハ。インストールしたてのエロゲー。