シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

力量も無いのに“友達”“人脈”を膨張させれば自滅が待っている

 
 
 “友達1000人”とか“幅広い人脈を目指す”とかいった文章をみると、私はうへぇと呻いてしまうほうである。ましてやそれが、インターネットではなく日常生活の話ともなれば、他人事ながら戦慄を禁じ得ない。
 
 確かに、“友達”の定義次第では、“友達1000人”も不可能ではないかもしれない。顔見知りをつくるとか、携帯のメアドを交換する相手を増やすとか、そういうレベルまで“友達”と呼ぶのであれば、ある程度の根性と体力があれば実現できるかもしれない。
 
 しかし、本当に“友達1000人”になっちゃったらどうなるのか?
 人脈ネットワークを急速に拡張していったら何が起こるのか?
 
 先の先まで考えると、バラ色の未来とは限らないような気がする。例えば、若くて器量の良い女性が“友達1000人”を目指したら?器量さえ良ければ上手くいきそうにみえて、よほど思慮深く振舞わない限り、彼女の前途は多難ではないだろうか。
 
 以下に、例えば若くて器量の良い女性が“友達1000人”つくったら遭遇しそうな、厄介な事態を挙げてみよう。
 
 
【エネルギーの枯渇】
 
 一般に、人付き合いには幾ばくかのエネルギーが必要で、たくさん会えば会うほど消耗する。特に“実際に会ってじかに話す”という行為などは、コミュニケーションに際して相当な体力と精神力を使っている。だが世間には、このことに気づいていない人が意外と多い。特に若い人は下手にバイタリティがあるものだから、この消耗を怖がらず、軽視して突っ走る傾向が強い。
 
 「会う頻度が少なければ問題ない」。
 確かにその通り。けれども“友達”が何十人程度ならまだしも、何百人ともなってくれば、会う頻度をどれだけ抑えたとしても、人付き合いに要するエネルギーはどうしても膨らまざるを得ない。もしも携帯電話にメールがバンバン入ってくるようなら、神経が参ってしまいそうである。*1
 
 
【“コミュニケーションの剪定作業”が出来るか否か】
 
 そうなると結局は、“友達1000人”のなかでコミュニケーションをとる優先順位を決めざるを得ない。1000人に対して平等に接するなんていうのは色々な意味で狂気の沙汰に近く、そんなことをしていては誰とも親密な距離にはなれないし、しまいには自分が何の為に人付き合いしているのかを見失ってしまうだろう。だから実際は、いちばん頻繁にコンタクトをとる相手〜いちばん疎遠な相手までの差別化を進めていくしかないわけだけど、この、いわゆる“コミュニケーションの剪定作業”が意外とデリケートな作業で、摩擦やゴタゴタの原因になることがある。とりわけ急激に交際範囲が拡大している時には、難易度が高くなりそうである*2
 
 かといって、こうした“剪定作業”を避けていれば、やがては疲れ果ててパンクしてしまう。それなりの器用さと繊細さ、それなりの計算高さ*3が無ければ、こうした“剪定作業”は進めにくい。あるいは経験も重要かもしれない。一般に、若くて経験が不足しているほど、そして“友達”“人脈”の膨張速度が急激なほど、この“選定作業”は難しくなる。
 
 
【自分の力量では対処しきれない人物に引っかかる確率の増大】
 
 そして、“友達”の人数が増えれば増えるほど、自分の力量では対処しきれない人物に引っかかる確率が高くなる、という点にも注意しなければならない。単純計算して、“友達”が10人の人よりは100人のほうが10倍高い確率で、自分の力量では対処しきれない人物への遭遇確率は高くなる。1000人ともなれば100倍である。出会いが多いということは、良いめぐり合わせに出会う確率だけでなく、悪いめぐり合わせに出会う確率も高くなるということを意味している。リスク管理を考えるなら、知り合いをみだりに増やすのは得策ではない。
 
 特に、うら若い女性(それも下手に器量の良い女性!)の場合、このようなリスクに対してノーガードであれば、色々と厄介な出来事に遭遇せずにはいられまい。厄介な人物すべてが一目で識別できるほど、世の中は甘くない。本当の本当に厄介な人物は、善意や愛想の良さを装う術に長けている。そういったリスクから身を守る才知も無いのに、いたずらに“友達”を増やしていった先には、どのような状況が待っているだろうか?
 
 

力量を超えた“友達1000人”は身を滅ぼすもと

 
 結論としては、「自分自身のバイタリティや力量、才知、経験といったものを超えて“友達”“人脈”を急速に増やすのはリスクが大きすぎる」。これに尽きる。
 
 これがまだ、人数の増加が緩やかだとか、オンラインに限局した付き合いというなら、マシかもしれない。しかし実地の人間関係のなかで、しかも急激に“友達”を増やすというのは超絶難易度のはずである。特に、まだ若い女性がこれをやってのける場合などは、いったいどれぐらいのリスクを背負い込むことになるのか、正直見当がつかない。当人のバイタリティや素養にも依るが、たいていの場合、長くは保たないのではないだろうか。 
 
 まぁある意味、ここまで激しい“友達1000人”を破綻なくこなしてはじめて、「リア充の帝王」を名乗れるのかもしれない。だが、こういう処世術は殆どの人には推薦できないし、凡人がマネをすれば99%の確率で怪我をするだけだろう。やめておいたほうがいい。
 
 思うに、自分の力量や分際を弁え、もっとゆっくりとした速度で人間関係を培っていくほうが遥かに現実的で、お勧めである。“一年間に友達が十人”でも別に構わないだろうし、いっそ“一年間に友達一人”でも構わないかもしれない。本当に貴重で拘るべきは、携帯電話に登録されている“友達の頭数”ではなく、どういう相手とどういう内容の人間関係を構築していったかのほうだろう。だとしたら、様々なリスクを侵してまで“友達の頭数”を増やすよりも、安全で上手いやり方があるんじゃないかな、と思う。
 
  

*1:オンラインに限った知己であれば、こうした問題は若干軽減するかもしれない。しかし、例えばtwitterやMSNメッセンジャーあたりも、使い方を誤ると激しく神経をすり減らすツールに化けるので油断は禁物だ。

*2:相手をろくに友達などとは認識せず、一期一会で片っ端から忘れてしまうなら問題ないだろうが…。

*3:随意的なものでも、無意識のものでも構わない