シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

はてなブックマークは安全な観客席じゃない。“戦場”なんですよ?

 
 先日、何気なくはてなブックマークを眺めていたら以下のようなコメントを発見しました。
 

 id:hi_kmd こういうの見ていると体験型演劇の観客になっているかのような感じがする。すぐ隣でブコメ書いていた人が次のシーンのスポットを浴びていたりするような……。

 はじめまして。シロクマと申します。
 あなたのはてなブックマークコメントにピン!と来たので言及します。
 
 「体験型演劇の観客」とhi_kmdさんは仰いました。そのとおりですね。はてなダイアリーやはてなブログを中心として周囲をtwitterやはてなブックマークで取り囲んだインターネット桟敷には、本当に安全な観客席は存在しません。
 
 ほら、こうやって私はブックマーカーたるあなたのご見解をブログに引っ張り込んできているわけですよ。
 
 たぶんあなたは、この何気ないブックマークコメントがブログで言及されるとは思っていなかったのではないでしょうか。誰かからの言及を期待していたとしても、せいぜい「はてなスターが何個つくのかな?」ぐらいで。
 
 でも違うんです。何気ない一言・あまり考えていなかった一言が、狂熱的な季節風に運ばれて壇上に舞い上がったり、轟轟と燃える竈にくべられたりするのが、インターネットの観客席なのです。
 
 twitterだって同じですよね。そこに何かを書き残している時点で、そのtwitterユーザーは「観客」であると同時にアクター(俳優)でもあります。「自分はあまりフォローされていないから」「炎上ブログじゃないから」的な感覚でやっていると、自分は気軽な観客席にいるものだと錯覚してしまいますが、そういう錯覚は危ないですよね。はてなブックマーク同様、twitterには防弾ガラスに囲まれた安全空間なんて存在しません。壇上のアクターに言及する限り、ステージと観客席はいつでもシームレスです*1
 
 そのうえtwitterの場合、剣闘試合にヤジを飛ばしていたら、そのヤジに隣からクソリプが飛んで来たりもするので、いよいよもって阿鼻叫喚と言わざるを得ません。
 
 だから、どんなに小さくてメタを気取ったアカウントでも油断は禁物だし、ある日突然、自分自身がアクターになってしまうかもしれない覚悟は持っておかなければならないのでしょう。自分としてはありふれた事を書いているつもりが、ワラワラ人が集まってきて火の手があがり、はてなブックマーク・リツイート・シェアのターゲットとなってしまう……なんてのはよくある話です。
 
 はてなブックマーク歴の長い諸先輩達は、さすが、そのあたり心得ていらっしゃるようで、自分がスポットライトを浴びても構わない時にはダミ声全開でコメントを書き、スポットライトを避けたい時には無味無臭なブックマークコメントをつけています。たまに筆が滑ってトラブることはあるにせよ、長生きしているはてなブックマークユーザーは皆、唐突に観客席を照らすスポットライトの存在を意識した振る舞いを心がけているものです。頼んでもいない剣闘試合に拉致られたり、ファイヤーレジストポーションを呑む前に地獄の竈にくべられたりしては、たまりませんからね。
 
 はてなブックマークコメントの常連衆は、パッと見ただけだと「あいつら、カリカリモフモフおやつを食べながら、気軽に囀ってやがる」とみえるかもしれませんが、そうじゃないんですよ。
 
 逆に言うと、はてなブックマークやtwitterの観客席に適応しきっている連中ってのは、鳩のような面構えをしていてもそれなりしたたかなんでしょう。そしてブログやtogetterで剣闘試合が行われている最中も、はてなブックマークやtwitterの観客席では、観客同士の間で密やかな争いが行われています。もし、観客席に迂闊なアカウントがいようものなら、ザリガニの共食いのようにバリバリやっちゃうんですよ。
 
 怖ろしいですね、はてなブックマーク。
 恐ろしいですね、twitter、そしてインターネット。
 
 でも、インターネットとは万人が万人をまなざすメディアであり、万人が万人に対してアクターであるわけですから、このような構図は不可避と言わざるを得ません。揉め事を覚悟しているブロガーやtwitter芸人だけが剣闘士だと思ってはいけません。オープンなインターネットには安全な観客席など存在しない!それがおっかないというのなら、ネットにモノを書くときは完全武装を心がけ、普段は草葉の陰からROM*2っているのが良いのではないでしょうか。
  

*1:もし、防弾ガラスで守られた場所を想定するとしたら、「鍵付きアカウント(非公開アカウント)」でしょうが、そのかわり、鍵付きアカウントは壇上のアクターに向かって空き缶や座布団を投げることはできないわけです。さしづめ、現場から離れてテレビをみているようなものでしょうか。でも、鍵付きアカウントといえども情報漏えいの危険は残存しているので、ここでも油断は禁物です

*2:read only member