シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

結局、コミュニケーションスキル/スペックを研磨すれば事足りるんじゃないの?

 
 http://d.hatena.ne.jp/watapoco/20060723/p3(コメント欄に色々書きました。私好みのやりとりが展開されています)
 
 そりゃ興味が無いのは当然だ。“興味がない”というのは、つまりそういう事に思考を巡らせるインセンティブなりメリットなりが無さそうだという事だ。ジェンダーだの何だのを考察することによって、私個人がコミュニケーションシーンにおいて得られるものは少ない。
 
 以上のように書くと、せっかちな人はこう指摘したがるかもしれない。「デリカシーのないオッサンだ」と。はは、まぁそれも当たらずとも遠からずかもしれないが、こんな私であっても好ましくない場面でセクハラと呼ばれそうな発言を投げかけるほど阿呆ではないし、今日日そんなんじゃあ男なんてやってられるものではない。服装に言及して欲しくなさそうな異性に対して服装の話をふっかけるような事態は、全力を尽くして回避しなければならない。
 
 だが、そうした地雷回避に必要なモノは、ジェンダーやフェミの知識や討論能力ではないと思うし、少なくとも私は必要としていない。必要なのはただ、対象の価値観・好み・逆鱗・性格傾向などを出来るだけしっかり把握し、それら個別の要請に配慮しながら自分(と対象)にとって最も好ましいコミュニケーションを模索していく意志と技術だけではないだろうか。性別や年齢や所属文化圏に関係なく常に問われるのは、“コミュニケーションの対象となる人物と”“いかに好もしいコミュニケーションを構築していけるか否かだけ”なんじゃないかな?このコミュニケーション上の課題に成功するならば私は対象との関係を望ましいものに出来るし、失敗すれば“このセクハラオヤジ!”と罵倒されたり“空気読めない痛い奴”とレッテル貼りされたりすることだろう。常に必要なのは、コミュニケーションを円滑に遂行する為の諸技術と、コミュニケーションへの意志なり動機なりだけだ。他に必要なものは、果たして何だろうか?何も要らないんじゃないのかな。
 
 異性とのintimateな交際に話を限った場合にも、ジェンダー云々についてわざわざ考える必要を私は有さない(勿論、“ジェンダー的思いやり”と対象異性とのコミュニケーション適正化の結果が偶々重なることは大いにあり得るかもしれないにしても)。個人としての私が大切にしている同性&異性とのコミュニケーションにおいてクリティカルだと感じているのは、「女とはそもそも…」や「女性性とは…」といった大枠の話ではなく、「目の前にいてコミュニケーションをとるその人が今どうなのか」その一点に尽きる*1。もうちょっと現実に即した表現をするなら「コミュニケーションの対象と私と周囲の他人とが今どうなのか」といった所だろうか。私はジェンダーだのセクシャリティだのに無知&無関心にも関わらず、とにかく好みの異性との交際維持を目論み、同様に好みの同性との同盟関係を強化しようとする人間だが、その際に重視せざるを得ないのは、私自身の好みや欲望と、コミュニケーションの技術的問題だと認識する。結局、服飾や身振りも含めたコミュニケーション上の諸技術こそが、対人関係において自分自身の意図を達成する鍵ではないのか?私はとにかくソレを徹底的に研磨し、コミュニケーションシーンにおいて自分が潰れない範囲で最大限の利得を企図するだけだ。コミュニケーションがそこそこ成功裏に行われ、対象人物と好ましい関係が得られた場合には、win-winな関係を築くことも適うだろう。または、一方的に搾取する契機すら得られるかもしれない(継続的関係・社会的状況のなかでは、一方的搾取が全面的に好都合な状況は極めて発生しにくいものだろうが)。どちらにしても、私の適応を維持するにはコミュニケーションの円滑化こそがクリティカルだ。
 
 そんなわけで、私はジェンダーだの何だのに深く関わっていく個人的動機をこれからも持たないし、持たなきゃいけないとも思わないっぽい。リアル人間関係において要請される可能性も低い。その代わり、コミュニケーションに関するノウハウは常に最大限要請され、精一杯追求していくに違いない。目の前の対象異性/同性のことを知り、それに即した円滑なコミュニケーションを行って良い関係を構築するにあたって、クリティカルなのはやはりコミュニケーションスキル/スペックという名の汎用技術複合体に違いない。リアル世界の私は、そのようなドクトリンに則った適応戦略を展開し続ける。
 
 ※…ところで、この駄文を読んでいるあなたの場合どうでしょうか?私と同じく、目の前の個人が今どうであるかを精査しながらオーダーメードコミュニケーションを頑張っていきますか?それとも、もっと便利でwin-winしやすい方法をご存じですか?もし、私の個別的コミュニケーションの方法論よりも旨い方法をご存じでしたら、そっと耳打ちしてやってくださいよ。私もすぐに採用しますから。
 
 [関連]:gƒXƒLƒ‹h‚©‚çgƒXƒyƒbƒNh‚ց\\ƒRƒ~ƒ ƒjƒP[ƒVƒ‡ƒ“ƒXƒLƒ‹‚Æ‚¢‚¤Œêœb‚Ì–â‘è(”Ä“KŠ‘®)
 

*1:今、という言葉を敢えて挿入したのは、対象が同じでも時と場合によって正反対の声がけがコミュニケーションとして有効だからだ。すっぴん顔を褒められることを通常好む女性がいたとて、マスカラの見事さを喜んで欲しそうな顔していたら尽かさず「お、そのマスカラは!」と言及するのがコミュニケーションだからだ。リアルタイムへの追従性を十分に確保できない硬直は、コミュニケーションとして上等ではない

私は冗談でもネタでもなく利己的人間です…あなた同様。

 
はてなブックマーク - シロクマの屑籠(汎適所属) - 鏡をみてゾッとした瞬間。俺はどんな化け物にみられているんだろうか?
「偽悪者」はネットだと演じやすい - MOHI-FACT - モヒカン族

 個人の思いをふと書き留めたメモにこんなに沢山のお返事を頂き、感激してます。はてなブックマークにて御返事を下さった皆さん、本当にありがとうございました。シロクマめの事を偽悪的なネットキャラとして捉えていらっしゃる人が多いことを、改めて確認させていただきました。
 
 ところで私には“自覚的に演じているつもり”は全然ありません。この“ネット人格、と呼びたくなるもの”を操作する意志が無いばかりか、私はそういう演技の継続に向いていないと自分を評価しています。まして、アングルやらネタやら難しいことを言われてもこのケダモノ戸惑うばかりでございます(そんな事に拘ったとて、すぐ消耗して嫌になってしまうのは目に見えています)。観客さんがおひねりを投げようが白けようがドン引きしようが、私はただ涎を垂らしながら思ったことを書き綴るだけです、それも出来るだけ、自分に嘘をつかない範囲で。*1。私は偽悪しているというよりは、実際にとても自己中心的な生物だとまじめに自分のことを思っていますし、それを綴りながら娑婆について考える事を好みます。そんな私が白けられたり面白くないとしたならば、事実私は面白くないんだと思うので、諦めて“つまんねーの。やーいやーい”と言ってやってください。短期適応しか向上させないであろう“芸”を褒められるより、等身大にまだしも近い自分につまらないと声をかけて頂くほうが(私の)メリットも大きいですし。そのせいでこのはてなダイアリーが愛想を尽かされたとて、致し方ないでしょう。
 
 なお、勘ぐり深い方はお気づきかもしれませんが、私が自分自身を利己的利己的と叫んでいることは、私自身だけがそういう人間だという意味合いで言っているものではありません。人間は全員そうであろうという想定のもと叫んでいます。もしかすると、利己的さや腹黒さに対して潔癖なり防衛なりを要請される人の御心をチクチクやっているかもしれませんが、どうかご寛恕のほど宜しくお願い申し上げます。「なぁにかえって免疫力がつく」ってもんでしょうから、蝋製の焦げやすい羽をお持ちの天使モドキさんの場合、乾布摩擦と思ってご覧になるのも一興かもしれませんね。*2
 
 ああ、あと、リアルのほうでお会いした方々へ。確かに、kanoseさんほかリアルでお会いした人に対しては利他的に振舞っているとは思います。ネット上ですら、利他的行動や道徳の発露がみられるかもしれません。ですがそれらは、凡て私の利己的欲求を誘導する手段なり技術なり迂回路なりとして実施されていると私は推定しています。私が利他的行動を含めた行動を選択するのは、ゼロサムゲームではなくノンゼロサムゲームでwin-winを指向しているからであって、一方的奉仕を求めてのものではありません。仮に私が奉仕活動を選択した場合、何かノンゼロサムゲームな旨みなり適応的意義なりを私は本能的または大脳皮質レベルにおいて期待して行動を選択している筈です。時に私は、交際の長い人物に対して友情の念や「何か出来ることがあったらしよう!」的思考をautomaticに感じることがありますが、これとて情動レベルで私自身が自動的に利害を算盤勘定してwin-winゲームを指向しているものと推定する次第です。(特にリアルにおいて)私がwin-winな継続的関係を構築しようとしている事と、私が利己的な人間である事は見かけ上矛盾するかもしれませんが、個人の適応について十分吟味した場合、決して矛盾するものではありません*3
 
 もちろんこんな私ですから、非継続的かつゼロサムゲームな場面においては、利他行動の発生は大いに抑制されます。DQN‚Æ‚¢‚¤ŒÂl‚Ì“K‰žŒ`‘Ԃ̍ĕ]‰¿\\public space‚É‚¨‚¯‚é–\—Í‚Ì•œŒ (”Ä“KŠ‘®)に書いたような、継続的関係が対象と発生しにくくコミュニティの政治的呪縛からもフリーな状況下において、私は一定の割合でDQN的振る舞いを必要としています。優越感ゲームや社会的ステータス防備などの理由により、私が積極的にDQN的メソッドは用いることはありませんが、DQNプレイヤーによる搾取を防備する為にDQN的振る舞いが要請される場面は絶対にあると思ってます――非継続的ゼロサムゲームな状況で腑抜け面してる奴は、ただ搾取されるだけですから。同様に、win-winゲームを指向した継続的関係を構築する際に一方的搾取や攻撃を仕掛けてきた相手には、応報戦略を用意しなければならないという自覚を持っています。応報戦略は、ならず者の侵入&搾取からwin-win指向を防備するうえで必要な安全装置でしょう。搾取を旨とする者には(出来れば二倍以上の)報復を出来るだけ速やかに行うべきであり、そんな自分を宣伝しておく必要があります。また、利他的行動によってwin-winな交易関係が困難な対象に対しては、利他的行動で骨折りすることをさっさとやめてフェードアウトする事が望ましいと私は考えています――政治的に許される状況なら、ですが。
 
 確かに、オフ会において私は利他的に行動しているようにみえるかもしれません。ですが、そのような利他的行動は、相手の利害をなるべく吟味したうえでwin-winの関係を構築するための架橋づくりであったり、第三者も含んだコミュニティ内において優位な政治的立ち位置を確保しようとする企みに誘導されたものである事から目を逸らさないで下さいね。とりわけ、初回は良い顔しておいたほうがwin-win関係を誘導しやすい点にも着目を。ああ、勿論あなた自身の利他的行動についても同じように思っていますよ、私もあなたも、おそらくは凡庸で人並みの我利我利人間なんじゃないでしょうかね。
 
 だけど、別に利己的で偽悪ならぬ邪悪でも別にいいと思いますし、必ずしも仲の良い人を搾取せずにwin-winな継続的関係を構築する可能性は常にあると思います。我が侭を尽くすほうが短期的に利得を得られる場面も多いですが、コミュニケーションを通してほんのちょっと利害を調整するだけで中期的にもっと大きなメリットを互いに享受出来る場面はもっと多いことと思います。勿論、私やあなたの個人の政治的立ち位置を強化するうえでも、一定の利他性は必要不可欠と言えますし。継続的関係のある所には、win-winな関係を誘導するチャンスが潜んでいますし、継続的コミュニティのなかでは利他的行動によって有利な立ち位置を占めるチャンスがあるかもしれません*4。私がリアルにおいて運用している適応方程式はややもすると「いいひとっぽくみえる」かもしれませんし、実際にコミュニケーション対象とwin-winな結末を迎えられるかもしれませんが、そのことは私自身が利己的な適応至上主義者である事を否定する所見とはなり得ないと考えています。せいぜい適応方程式に利他的戦略を含んでいるだけの話ですよ。
 
【補足】言うまでもなく、あなたの利他的行動を私が目の当たりにしたとて、私はあなたが利己的な適応至上的な人間である事を否定することは無いでしょう。代わりに、「この人の適応方程式や処世術は、利他的行動を重視した形式をとっている」と評価することでしょう。
 

*1:もちろん読者の方におかれてましては、私のこのような物言いにも関わらず、ネタとしてアングルとして消費する自由があることは言うまでもありません。

*2:もちろん読者の方におかれてましては、私のこのような物言いにも関わらず、激怒したり苛立ったりする自由があることは言うまでもありません。

*3:個人、というホモ・サピエンスを指す場合に限らず、生物全般においてノンゼロサムゲームにおいて矛盾するものではないと私は考えています

*4:『天使の真似事ストラテジー』もまた継続的コミュニティのなかで有利なポジションを占める戦略のひとつとして数えられますが、インセンティブを見抜こうとするプレイヤーには通用しないのが玉に瑕なので私はあまり派手にやりません

「努力」→「工夫」

 
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 岩に染み入る娑婆世界。この文章は、努力なるものに関する硬直した(よくある)思考と、それに伴う停滞について、なかなか手厳しい指摘を行っている。だけど、この努力論をfromdusktildawnさんという頭の良い人が指摘する事に苛立ちを覚える人だっているに違いない。そういう人にお勧めしたいのは、件のテキスト内の「努力」という文字を全て「工夫」に変換してみることを奨めてみる。frodusktildawnさんの本意とは若干ズレるものの、誤嚥の少ない、病人でも食べられる流動食に早変わりしますよ。