シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

「本棚をみせてごらんなさい。あなたがどんな人間か言い当ててみましょう」

 
www.houdoukyoku.jp
 
 リンク先で、読書についてのインタビューにお邪魔しました。メインテーマは「アラフォー世代の読書」ですが、私としては、後半の「本棚の話」のほうが好きだったりします。
 
 「本棚」って魔性のアイテムですよね。
 
 本棚に入っている本には、その人の執着や趣味や知性やコンプレックスやフェティシズムがびっしり詰まっています。ネット通販の購入履歴などもそうだと言えますが、ただの購入履歴と違って、本棚には入れ替わりがあって、要らない本は本棚からふるい落とされて、その人が必要としている本や執着し続けている本だけが残る、という特徴があります。
 
 だからこそ、本棚にはその人のさまざまな側面が反映されます。タイトルの、「あなたの本棚をみせてみなさい。あなたがどんな人間か言い当ててみましょう」は、ぜんぜん不可能ではありません。リンク先で喋っているとおり、本棚を他人にみせる行為は、まかり間違えば精神の裸踊りになってしまうでしょう。
 
 もちろん本棚と言っても、リビングには「他人に見せても構わない本棚」があり、寝室や書庫には「他人には見せない本棚」があります。でも、そうやってわけて本が置いてあること自体も、その人の人となりを反映しているし、後者はもちろん、前者を眺めるだけでも面白い情報を読み取ることができます。
 
 たとえば、仕事用の本と趣味の本、雑誌などが雑多に置いてある本棚があります。本に対してあけっぴろげな、それでいて本が動いているのがみてとれる本棚は活気があって好きです。その人の生活実態と、本のチョイスがぴったり一致していると、素直だなーと感じます。
 
 料理のテキストブックや、子どものための絵本の並ぶ本棚も良いものです。でも、そういった本が気持ち悪いほど整然と並んでいて、動きの感じられないケースもあります。子ども向けの絵本などは、使っていればなんとなく騒がしくなるものですから、あまりにも整然としていると、気味が悪いものですね。
 
 リビングに、小難しい本やマニアックな本がたくさん置いてある本棚もあります。それらの本は、持ち主の知識の中枢部でしょうか? それとも、自分を偉くみせるための虚栄心の中枢部だけでしょうか? このあたりは、持ち主とじかに話して、本棚の様子と照らし合わせてみると、本棚の正体がだんだん見えてくるでしょう。虚栄心といっても、他人に対して見栄を張っている場合もあれば、自分自身に対して見栄を張っている場合もあります。
 
 あと、古い家で見かけることのある、リビングの“百科事典全集”。ほこりを被っていて、版も古く、使われていないのは一目瞭然なんだけど、まるで神棚のごとく鎮座しています。「リビングに百科事典があればご利益が得られる」と言わんばかりの雰囲気は、失われた教養主義、いや、教養信仰の名残りのようで、侘しく感じます。今の若い人達は、そんな本をそんな風に本を拝んだりはしないでしょう。ああいう本棚がみられるのも、たぶん、今のうちだけです。
 
 

電子書籍が来て、我が家の本棚はますます“濃く”なった

 
 ところで、最近は電子書籍が使えるようになり、大量の本が端末ひとつに収まるようになりました。我が家の本棚も、漫画やライトノベルが電子書籍に吸収されるようになり、新書の一部も電子書籍で読むようになりました。
 
 反面、電子書籍を使いまくっても本棚は滅ばないんだな、とも思いました。
 
 愛蔵しておきたい漫画、思い出に残ったライトノベルは、電子書籍には切り替えませんでした。紙の本として保存しておく漫画やライトノベルはそれだけ特別なわけで、本棚の“濃さ”が高まる一因になったように思います。
 
 新書のたぐいも、電子書籍で買って良かったものを、紙の本で買い直すことがあります。何度も読みたい本・何度も調べたい本は、紙の本のほうが便利なんですよね。雑に扱っても痛まないし、電源もつけなくて良いし、読みたいページをすぐに引っ張り出せるし。
 
 もちろん、医学書をはじめとする専門書の多くは電子書籍になっていないので、紙の本を本棚にしまっておくしかありません。
 
 電子書籍に要らない本やたいしたことのない本が吸収された結果として、我が家の本棚はますます“濃く”なり、ますます私自身を反映した、うかうか他人に開陳できないようなものになってしまいました。電子書籍があるからといって、本棚の重要性はあまり失われていません。「本棚をみれば人間が読める」って傾向もたぶん変わっていないでしょう。
  
 

信頼している人にしか見せないほうがいい

 
 ともあれ、本棚は本当に親しい人にしか見せたくないし、また、見せるべきでもないんでしょう。 
 
 逆に考えると、本棚を大切にしている人が自分の本棚を見せてくれたとしたら、それはだいぶ信頼してくれている証拠だと思うので、ありがたく拝見して、脳裏にしまっておくのが良いのだと思います。本棚は、その人の精神、その人の執着そのものにほかならないのですから。