シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

『「毒親」の子どもたちへ』の書評を担当しました+α

 

「毒親」の子どもたちへ

「毒親」の子どもたちへ

 
 先日、斉藤学『「毒親」の子どもたちへ』の書評を担当させて頂きました。全国の新聞に掲載されはじめているようです。斉藤学先生といえば、依存症やアダルトチルドレンの大御所精神科医。私ごときが書評を引き受けて良いのか躊躇はしましたが、それでも、自分が読んで思ったところを書きました。
 
 以下、もうちょっと個人的な感想等について。
 
 私は、この本の眼目は“「毒親」ブーム”が、単なる親バッシングで終わってしまっちゃまずいよね、ってところだと思っています。いったん親を「毒親」とみなす時期は、ときに必要かもしれない。けれども親を「毒親」「不幸の源」と決めてしまい、そこで考えるのをやめてしまってはまずかろうし、その次のステップもいずれ考えていかなければならない……そのヒントがたくさん綴られているのが本書です。
 
 書かれたヒントは本当に多種多彩なので、読者がそこからエッセンスをチョイスするような読み方でも良いのかな、と私は感じました。というのも、本書はやや難しい箇所や(一見)回り道のようにみえる箇所もあるため、結論に突き進む本を専ら読んでいる人には全体把握がキツいかもしれないからです。それと、精神分析のさまざまな論者の学説をベースにした箇所もあるので、そのあたりに初めて触れる人には難易度がやや高めかもしれません。
 
 ただ、一筋縄ではいかないところがある本だけに、わかりやすい語彙だけを用いて結論まっしぐらな書籍が欠いている成分というか、なかなか治らない患者さんと長年向き合ってきた精神科医ならではのテイストが漂っていると思いますし、それは得難いものなんじゃないのかな、とも思います。
 
 

ちなみに

 
 そういえば、私が解説を担当した『毒親育ち』の筆者の方は、(ご両親が他界した影響もあってかもしれませんが)「毒親」の次の段階を模索していらっしゃると感じました。だから、いわゆる「毒親」本を書く人が考えるのをやめてしまっている事は無いだろう、と私は信じています。
 

毒親育ち

毒親育ち

 
 しかし、もし読み手の側が「毒親」本を親をバッシングするツールとして消費してしまうとしたら……それは“「毒親」ブーム”の副作用と言わざるを得ません。そうした副作用に溺れないバランス取りという意味において、本書が斉藤学先生によって著されたのは意義深いことではないかと思います。