読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

メルマガはどこまで議論に向いているか、を想像してみる

コミュニケーション

 
 ブロマガ - ニコニコチャンネル
 メルマガボールZ 危険なふたり! はてな村はねむれない - Togetterまとめ
 
 上記を読んでいて思ったことを。あらかじめ断っておきますが、お金儲けという次元の話ではなく、議論のしやすさ・しにくさという次元の話です。
 
 メルマガというメディアは、どこまで議論に向いているんだろうか?
 
 私は有料であることを理由に「議論に対して閉じている」とは考えない。もし、有料であることをもって「議論に対して閉じている」と言い出したら、学会誌も、学会そのものも「議論に対して閉じている」ということになる。論文を拾ってくるにあたって幾ばくかのお金が必要なことを思うにつけても、有料に値するようなエッセンスが書いてあるメルマガなら、有料であって構わない。
 
 個人的には、議論に対して閉じているか開いているか――議論しやすいか否か、と言い換えてもいいかもしれない――は、概ね以下のようなもので決まると思う。
 
 ・ある程度の文章の長さ:
 議論のしやすさ以前の問題として、短すぎる文章では議論しにくい。twitterなどが最たるもので、100字〜140字で表現できることなどたかがしれている。短歌のような圧縮にはそれはそれでおもしろみがあるけれども、複雑な問題や、細かな点についてまで言及するなら、せめてblog並みの文章量がなければ難しい。
 
 ・アーカイブの通覧性:
 数千字〜一万字程度で議論が完全に完結している場合、複数の記事を同時参照できなくても構わない。けれども議論というのは、複数の記事にまたがっていたり、関連性があったりすることも多いわけで、そういう場合には、複数記事を一目で参照できるような・過去記事をすぐ追いかけられるようなシステムがあったほうがいいと思う。特に、記述内容のテーマやフレーバーに共通性のある筆者の場合には、通覧性の高さは生命線だと思う。
 
 ・引用しやすさ:
 他人との議論に開かれているか否かの一番大切なポイントは、これだと思う。書籍や論文に関しては、引用の問題は無い。引用元を明示したうえで、批判なり評価なりを誰でもやれる。blogは、トラックバック機能によって、こうした引用を非常にやりやすくしていた。とりわけ『はてなダイアリー』は共通キーワードを使って、こうした議論を一層促進しやすい機能を実装していた。(が、現在は、このあたりの機能を多くのブロガーが軽視し、はてな自身もあまり大切に思っていなさそうにみえる)
 
 なお、「全文を読むには有料」だからといって引用しにくい、とは限らないことは断っておく。そもそも書籍は有料なんだし。ただし、書籍は書籍としてきちんと登録されているし、論文は全文有料でもアブストラクトまでは無料で読めるうえ、こちらもきちんと登録されている。この、「登録されていることによる引用しやすさ」はネットよりも既存の紙媒体のほうがずっと整備されている。本来こういうことは、技術的にはネットのほうがずっとやりやすかろうに……。ネットには、引用しやすさを軽視している人が多いのかもしれない。
 
 ・コメントしやすさ:
 ところで、コメントしやすさは議論に開かれているために必須だろうか?ある程度のコメントしやすさは、あったほうが良いと思う。せっかくネットメディアを使っているのだから、トラックバックがつけられるとか、ハイパーリンクがつけられるといった点はクリアしていないともったいない。ただし、ネットイナゴの湧きやすいコメント欄やはてなブックマークコメントのようなものが本当に必要なのか・そのような場で建設的な議論が行われる確率がどの程度なのかは、ちょっとわからない。blogのコメント欄で重要なディスカッションが起こることも、まれにはあった。けれど、その何倍何十倍もの悲惨な風景を見てきたことを思い出すにつけても、コストとベネフィットが釣り合わないように思える。
 
 ・議論に向いた雰囲気ができあがっているか
 2chのスレッドや板によって議論のレベルの高低があるように、場の雰囲気や参加者の性質によっても、議論しやすさは変わってくる。ただし、これはメディアの性質という以前にメディア利用者の性質の次元の話なので、ここでは省くことにする。
 
 以上を踏まえて、幾つかのネットメディア(と紙媒体)の議論しやすさを表にしてみる。

メディア 文字数 過去記事通覧 引用しやすさ online上でのコメント マネタイズ
SNS 小〜中 内輪で 内輪で 内輪で ×
twitter 少ない × ×
blog 小〜大
website 中〜大 ×
書籍 多い ×
論文 中程度 × ×
雑誌 中程度 ×
メルマガ 中〜大

 
 並べてみると、書籍や論文の強さが浮き彫りになるというか、単に紙媒体だからというだけでなく、引用面でもアドバンテージを持っていると改めて思った。websiteは、アーカイブ通覧性の高さのおかげで、個人単位での議論および他人からのリファレンス機能の高さは非常に優れているが、マネタイズという点では無意味に近い。blogはトラックバック機能をはじめ、online上でリアルタイムに議論を交わしていくには適しており、そこそこのアーカイブ通覧性と引用しやすさを持っている。ただし器用貧乏と言えなくも無い。twitterは文字数が少なすぎ、アーカイブ通覧性も悪いので、これは議論をするツールではなくお喋りをするツールと割り切ったほうが無難だろう。SNSは、赤の他人との議論発生可能性が最低だが、SNSのメンバー次第では内輪で議論をするのに十分な機能を備えていると思うので、どうSNSを使うのか以上に、誰とSNSを使うのかによって評価が分かれるところと思われる。
 
 じゃあ、メルマガはどうなのか?
 
 文字数という意味では、メルマガはある程度のボリュームをウリにするらしいので、それなり大きなサイズなのだろう。特に有料メルマガなどの場合は内容的にも気合いが入っているだろうから、そういう意味では議論に適しているようにみえる。通覧性という点でも、アーカイブ一覧が整備されていればそれでオーケーなので問題無い。
 
 では、記事からの引用や記事への言及、という点ではどうなんだろう。私もインターネットをそれなり長くやっているつもりだが、blogやwebsiteの文章を引用して紹介、というのは頻繁に見かけるが、有料メルマガの文章を引用して紹介(または言及)、というのはあまり見たことがない。ハイパーリンクを介して有料メルマガの記事紀要に飛ばされたという経験も少ない。もしかしたらやっている人はやっているのかもしれないが、少なくとも現時点では、そういう運用はあまりされていないようだ。
 
 特に有料のメルマガの場合、無料の文書より充実した内容が載っていると推定される筈なのだが、そういう引用が出てこないということは……システムとして引用に向いていない、ということなんだろうか?それとも有料だから皆遠慮して、引用や紹介を避けているんだろうか?それとも巷でメルマガの悪口を言う人の言うところの決まり文句「内輪のファン向けの文章」でしかないのだろうか?このあたり、(私には)まだよくわかっていない。少なくともハイパーリンクがつけられないということはなさそうので、全く引用や言及ができないわけではなさそうではあるが…。
 
 私には、現時点ではメルマガの議論しやすさは「よくわからない」。あくまで現時点では議論しやすさが表に見えていないだけで、これからニコニコチャンネルのような場が議論のフォーマットとして用いられていく可能性もあるかもしれない。というか、そうであって欲しい。昨今は、blogのトラックバック機能を介した赤の他人による引用や言及を軽視し、時代遅れとさえ言う人もいるようだが、私はトラックバックを介した相互引用&相互言及機能こそがblogの強みだと思っているので、それに相当する機能がメルマガ全般に実装されるのか否か、とても気にしている。
 
 マネタイズという観点からみれば、メルマガはblogよりもきっと優れている。しかしお金の問題はさておき、online上での議論フォーマットとしてメルマガがどの程度優れているのかはよくわからない。世のブロガーのなかには、おこずかい稼ぎではなく優れた言及者との出会いやトラックバックを求めてモノを書いている人間も一定数いる筈で、そういう人にとってメルマガというツールがどうなのか、今後も動向を観察していこうと思う。