シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

本物のダライアスが帰ってきた!――ダライアスバーストAC

 
 
 ダライアスバースト アナザークロニクル オフィシャルサイト
 
 弾幕シューティングにうんざりしていた人には朗報。
 専用筐体の、本物のダライアスが帰って来た!
 
 海棲生物がボスで、横長のゲーム筐体でさえあればダライアスか?否!最高のグラフィック・最高のサウンド・びっくりさせられる攻撃・意欲的なトライアルが詰め込まれていてはじめて、ダライアスはダライアスと呼ぶに相応しい。そんな、タイトーが本気を出して創ったとしかいいようがない作品に、2010年に遭遇できるとは夢にも思わなかった。長年シューターやっててよかった!
 
 
 【良かったと感じた点】
 

  • 難易度がはっきり示されていて、Easy,Normal,Hardの看板に偽りが無いので安心して遊べる。アイテムの出現頻度が高く、弾消し効果のある攻撃が豊富なので、かなり遊びやすい。
  • 今回の新機軸である、バースト攻撃(特に設置バーストやバーストカウンター)を使いこなせるようになると、俄然、面白くなる。けれどもこれに慣れていない状態でも、Easyのルートなら概ね攻略できる。実際にゲーセンで様子を見ていると、シューティングを普段やっていないのが丸わかりのプレイヤーでも、バースト攻撃を試行錯誤しながらEasyの最終面までは到達できていた。この難易度設定はとても良いと思った。一方、NormalやHardは、それなりにバースト攻撃に習熟し、自機のショットの性質を知っていないとキツい構成。
  • 弾幕シューティングとはひと味違った攻撃が盛りだくさん。ホーミングレーザー、極太レーザー、爆雷、そのほか色々。敵のレーザーや爆雷は画面いっぱいに、轟音をあげて炸裂するので、非常に迫力があって見栄えがする。「でかいやつと戦っているんだ」感がヒシヒシ。
    • こういう大迫力の演出に、宇宙空間や艦隊戦や衛星軌道という舞台が実によく似合っている。
  • これまでのダライアスシリーズは、ボス戦でやられると挽回が非常に難しかったが、今回はバースト攻撃で弾消しが出来るうえにパワーダウンしないので、ボス戦でやられても体勢を立て直しやすい。また、次の面の序盤では必ず青アイテム(いわゆるバリア)が出るので、リカバーも容易。ありがたい。
  • 1プレイ200円という価格設定は、きわめて妥当だと思う。濃度の高い娯楽を専用筐体で提供し、家庭では絶対に体験できないシューティングゲームに仕上がっているのだから。価格設定で比較すべきは、バーチャロンやギャラクシーフォースであって、一般筐体のゲームではない
    • この点では、大音量大画面の専用筐体を導入することによって、既存のシューティングゲームとの差別化に成功しているとは思う。200円の、明確な口実というか。
  • 800円払えば、最高4人で最後までひととおり遊ばせてくれるのも素晴らしい。腕前なんて気にせず、ガヤガヤ賑やかに協力プレイする楽しみは、ソロプレイばかりが強調されがちなシューティングゲームが、じつは二人以上でも楽しいということを思い出させてくれる。往年のナムコの大型筐体『ギャラクシアン3』に近い娯楽性がある。
    • 親子やカップルで遊ぶにも向いている気がする。バースト攻撃というシステムのおかげで、このゲームは慣れたプレイヤーがビギナーを守りながら戦う“保護者プレイ”に非常に適している*1
  • シューティングゲームとしては、はっきりとダライアス系統の血を引き継いでいる。ボス戦を意識したアイテム取得・優先度の高い敵やボスパーツを狙撃する感覚・画面内を大きく使って回避する感覚などは、弾幕シューティングゲームとは娯楽性がかなり異なっている。自機の通常ショットが途切れがちなのも、初代ダライアスの懐かしいテイストに似ている。バースト攻撃も相まって、「避ける」より「撃ちこむ」ことを重視したプレイスタイルが強烈に求められる。
  • クロニクルモードが遊びきれないほどの面数で、よくわからないボスが出てきたり、初代ダライアスの音楽が流れたり。オリジナルモードに慣れきった後の楽しみもたっぷり。

 
 
 【ちょっと気になった点】
 
 ただし、初めてプレイするにあたって気をつけておかなければならない点もあったので、それも挙げておく。
 

  • モード選択や機種選択が、初めてプレイする人には分かり辛い。このゲームは、シューティングゲームのベテランだけに遊んでもらうためのものではないはずなのに、プレイ開始の導入のところで損をしていると思った。何も知らないプレイヤーが、一番扱いやすい機体で一番簡単なコースを選択するのが難しく、初見プレイヤーが上級者向けの機体を選んで酷い目に遭っているのを見かけた。
    • 初めてプレイする人は、「オリジナルモード」でeasyのコースを選び、デフォルトの機体を選択するのがオススメ
    • “コースを選んだ後に機体を選ぶ”という手順も、あまり見かけないシステムで、戸惑いやすい一因か。
  • デフォルトの状態でゲームを始めると、誰かが誤ってスタートボタンを押してしまった時に乱入として扱われてしまうという問題がある。熱心にプレイしている人の横で観戦している友達が、うっかりスタートボタンに触れてしまってゲームを台無しにするという事故を目撃することがあった。隣に友達や彼女が座っている時は要注意。
    • このような事故を防ぐには、機体選択時に「乱入禁止」を選んでスタートボタンをロックする必要がある。ただ、初めてプレイする人にはちょっとわかりにくいかもしれない。
  • みんなでガヤガヤ遊ぶための残機無制限モードには合計800円が必要で、しかもゲーム開始時にまとめて800円入れなければならない。筐体の表記を見ても、これがちょっとわかり辛い。

 
 
 これらのわかり辛い点は、ゲームそのものの問題というよりも、プレイヤーの導線に失敗しているという問題であり、今後のオンラインアップデート等での改善を期待したい。せっかく色んな人に楽しんでもらえそうなゲームなのに、オリエンテーションのわかりにくさで損をしているというのは、なんとも勿体無いことだと思った。
 
 とはいえ、無難な秀作を目指さず、多少のいびつさなど意に介さず、当代最高傑作をめざした創りには胸が熱くならざるを得ないし、実際、ゲームそのものは非常に面白く出来ている。ダライアスの名に恥じない、じつに遊び甲斐のある作品に仕上がっていると感じる。弾幕シューティングに食傷気味の人にはちょうどよさそう。
 
 
 【オリジナルモードの、各コースの印象】
 以下は、Easy,Normal,Hardの大体の印象。
 
 
 Easy(ZONE-A,D,H,I):
 比較的簡単につくられており、バースト攻撃をよくわかっていない人でも進めるので安心。もちろんバースト攻撃を使いこなせればより面白く、よりラクに攻略できるので、設置バーストの練習をするには適している。ただしZONE-Dのボスあたりから、設置バーストの向きを変えるテクニックへの習熟度しだいで難易度がかなり違うようになっている。「早くゲームシステムに慣れなよ」ということだろう。最終ゾーンはHとIだが、実はIゾーンのボス(カサゴ)のほうが弱い。特に設置バーストにまだ慣れていない人で、アドリブ避けに自信のある人なら、カサゴを先に釣ってしまったほうがいいかもしれない。ZONE-Hのボス(グソクムシ)は設置バーストに慣れれば非常に簡単だけど、まだ慣れていない人にはちょっと難しいかもしれない。
 
 Normal(ZONE-B,E,F,J,K):
 Easyとははっきり違う難易度。設置バーストにそこそこ慣れていないとZONE-Bも覚束ない。ZONE-E,Fのカメとハリセンボンは非常に強く、かなり習熟しないとノーミスでの突破は難しい。まずはどちらか一方、自分が向いていそうなほうだけを徹底的に攻略したほうがよさげ。ZONE-Jのピラニアは、あっけないほど弱い。カメやハリセンボンに比べたらオマケみたいなもの。ZONE-Kのリュウグウノツカイも、グソクムシをやや強くした程度なので、なんとかなる。全体としてみれば、normalはカメとハリセンボンを巧くこなせるかがすべて。
 
 Hard:(ZONE-C,G,L):
 ゲーム開始直後から設置バーストをきちんと使いこなしていかないと、100円玉が幾つあっても足りない。「設置バースト未熟練者お断り」といった雰囲気。このコースは「覚えていないと死ぬ」という場面が多く、ZONE-Cのボス(ゴブリンシャーク)も、ZONE-G道中も、ZONE-Gボス(デメニギス)も、初見での突破は難しい。そのかわり慣れてしまえば割と簡単なので、練習さえすれば最終面まで到達しやすい。ZONE-Lのクジラはさすがに手強い、というかとにかくタフ。致命的な攻撃は後半までは少なく、根競べ的なところがある。プレッシャーに負けない集中力が試されるあたりは、歴代のクジラ同様。
 
 
 これらをある程度こなせるようになったら、クロニクルモードで長く遊ぶも良し、どこかのコースでスコア稼ぎに精を出すも良し、全機体全コース制覇を目指すのも良し。ビギナーでも上級者でも、スコアラーでもクリアラーでも、色んな遊びかたがありそう。
 

*1:しかも、バースト攻撃を覚えなくてもそこそこ戦える機体が用意されているので、ビギナーにはそれを選んで貰って自分はバースト機体で護衛するというスタイルが成立する。面白い!