シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

ある種の業種では、「練兵所」なんて要らない。必要なのは「弾薬工場」と「鉄砲玉」だ!

 
「兵士としての教育」が隠蔽され、誰もが「将軍の夢」に酔っている異常 - シロクマの屑籠
 
 コメントやはてなブックマークをみているうちに、ふと気付いた。ああそうか、職種によっては、「将軍」や「参謀」にあたるほんの一握りさえいれば、もう「兵士」すら要らないんだ、と。堅実な古参兵を生み出すような「練兵所」が要らない業種があるんだな、と。
 
 例えばアニメの世界。例えばプログラムの世界。テクノロジーの進歩が早かったり、ただベテランを高給で雇ってもメリットの薄い業種なら、夢見心地の新兵を毎年雇っては使い捨てにしたほうが(雇用者側にとっては)旨味がある。若いのを大量に雇って、むしろ長続きさせず、給料があがらないうちに使い捨てる*1という手法。少なくとも自分が事業者だったらそれを考える。使い捨ての若年労働者を求める邪悪な事業主は、「夢という名の麻酔」をかけたままルーキーを輩出してくれる教育機関を、ありがたいとさえ思うだろう。もし、私が使い捨ての若者を欲している邪悪な事業者だったら、若者に夢をたんまりみせてくれるような残酷教育機関の先生方に対して(料亭かどこかで)以下のように語りかけるだろう。
 

“やっぱり、うちには「兵士」なんて要らないですね。2〜3年ぐらいでくたばってくれる若い「鉄砲玉」を、これからも宜しくお願いします。”
 
“あなたのところの「鉄砲玉」はとてもいい出来ですよ。十分麻酔が効いた状態で入ってきてくれて、せっせと仕事に励んでくれます。ちょうど一年〜二年で夢から醒めるのも素晴らしい。こちらから退職を迫るのは、良心が痛むものですからなぁガッハッハ”
 
“先生にはこれからも、『若くて使える人材の教育』を通して、『社会に貢献』して頂きたいものです。”

 
 看護師や熟練工なんかの世界なら、給料を多めに支払ってでも「ベテラン兵士」を雇う意味は、ある。ルーキーや「鉄砲玉」には出来ない仕事や出せない味わいが無視出来ないからだ。しかし、単純作業を請け負うような分野なら「ベテラン兵士」にしか出来ない仕事というのはそう多くはない。単純作業を請け負う分野では、給料が安くて若いうちに次の人材と入れ替わったほうが費用対効果はむしろ向上さえする。だとしたら、(士官候補生と一部の下士官以外は)使い捨てにしたほうが良いわけで、「ベテラン兵士」ではなく「程良く消えてくれる鉄砲玉」をどしどし生産する体制が教育機関側に求められることになる。こういう条件が整う業種・分野ならば、事業主から「お前の学校出てきた奴は夢ばっかり見ていて長続きしないヘナチョコ兵士ばかりだ!」という苦情はまず発生しない。むしろ「おたくの学校の卒業生は、SONYタイマーのように正確に挫折してくれるのでとても助かってます」と感謝すらされるかもしれない。看護学校とかじゃ考えられない話だけれど、サブカルチャー専門学校や情報分野の学校なら考えられなくもない。っていうか自分がある種の事業主だったら、そんな風に考えると思う。
 
 本当にヤバい業界・職種では、もう「兵士」すら要らないという残酷!一握りの中枢と幾らかの下士官さえいれば、後は「使い捨ての鉄砲玉」があれば良いという無情!「熟練兵」があまり必要ではない業界・分野では、「夢売り教育機関」に釣られてきた若者を、彼らが夢見ている間だけ(或いは心身が維持される間だけ)こき使った時に最高の費用対効果をみることが出来るし、事実そのようになっているように見受けられる。どんどん夢を膨らませ、どんどん現実検討能力を麻痺させて、若者を轢き潰しながら回転し続ける“恐怖の歯車”に、私は戦慄と嫌悪を抱かずにはいられない。しかも、「練兵所」へのの無骨な門に比べると、「弾薬工場」の入り口はいかにも夢や可能性に溢れてみえるんだから始末に困る*2。自己実現の芳香に誘われて潜った門が「弾薬工場」の生産ラインで、夢という名の麻酔を打たれて鉄砲玉にされたら?!
 
 ああ、なんという恐ろしさ。なんというおぞましさ。だけどそれが娑婆の現実だ。人の世だ。願望と楽観だけに釣られる若者(と親)は、鉄砲玉として労働力と可能性と人生を搾取される。こんな仕組みは現在だけではなくて、江戸時代も、明治時代も、おそらく未来においても存在するに違いない。いつの世においても、挽き潰して搾取してやろうと、あっちこっちの歯車が手ぐすね引いて待っている。少なくとも、そういう「鉄砲玉」が欲しくて欲しくて仕方がない業界・事業主は確かに存在している。果たして、私はorあなたはorあなたの子どもは、「弾薬工場」を嗅ぎ分けることが出来るだろうか?それとも、夢という名の麻酔の命ずるままに、「鉄砲玉」への道を選ぶのだろうか?あるいは「働いたら負けだと思っている」と判断するだろうか?
 

*1:そして、一万人に一人ぐらいの逸材がいたら、そいつだけ残りの九千九百九十九人とは別扱いにするわけだ。また、百人に一人ぐらいの人材がいたら、下士官として雇うのも悪くない。

*2:就職率600%!とか?!