シロクマの屑籠

はてなダイアリーから引っ越してきた、はてな村の精神科医のブログです。

不器用でも「No」を言わなければ「No」の経験値がたまらない

 
 「No」と言えなかった私が試した、あえて火花を散らすコミュニケーション術 - リクナビNEXTジャーナル
 
 リンク先は、私がコミュニケーション下手で、なかなか「No」と言えなかった時代の試行錯誤の方法を書いたものです。
 
 でも、大事なことなので二度言いますが、リンク先みたいな「上司の逆鱗にピンポンダッシュ!」なんて二十代のうちしか使えない方法ですからね?私がこうやってインターネット上に手法をひけらかしているのも、私が年を取り過ぎてしまったからです。もし現役で使っていたら、こんな方法は絶対に公開しません。
 
 それはともかく、コミュニケーションってのは相手のご機嫌を取ってばかりでもダメだし、相手に合わせてばかりでもダメなのは間違いありません。だってそうでしょう?守ってばかりのコミュニケーション、相槌を打ってばかりのコミュニケーションで、一体なにほどの人間関係ができあがるでしょうか?
 
 ご機嫌取りと相槌ばかりのコミュニケーションの最も極端なかたちは、DV夫に滅私奉公するような女性や、その正反対の男性にみてとることができます。彼/彼女らが示しているように、「No」の言えないコミュニケーションは、必ずしも相手のためになるとは限りません。短期的には「都合のいい人」でも、長い目でみて、人間関係の極端な偏りは自分を蝕むだけでなく相手をも蝕んでしまいます。「No」が言えないってのは、誰も幸せにしないんですよ。
 
 だからといって手当たり次第に「No」しか言わない人は、誰ともマトモな人間関係を築けないのは言うまでもありません。たぶん、友達や恋人や同僚とのコミュニケーションで適正な「No」の混ぜ具合は5〜10%、よほどの例外でも20%を上回ることは無いのだと思います。
 
 「No」を欠いているのも「No」を使いすぎるのも拙いわけですから、難しい人には難しいと感じられるかもしれません。が、健全な人間関係は「Yes」ばかりではまともに成立せず、否定的なメッセージも取り扱えなければ成立しないので、コミュニケーション能力を向上させたいと思っている人は、この「No」の使いこなし度合いや経験蓄積を避けて通るわけにはいきません。
 
 

不器用でも「No」を言わなければ「No」の経験値がたまらない

 
 でも、「No」が言えない人が「No」を言うのは怖いこと。きちんと「No」が相手に伝わらなくて落胆したり、「No」が爆発して言い過ぎになって人間関係が微妙になったりすることもあるはずです。
 
 じゃあ、いつか「No」と言える日が来るのをただ待っていれば良いのでしょうか。
 
 もちろんそんなことはありません。
 
 「No」が言えるようになるためには、「No」を言わなければなりません。残念ながら、コミュニケーションの場面で「No」を言うことなしに「No」が上手になるための方法を、私は知りません。もしあったら、どなたか教えてくださいませんか。でも、たぶん無いと思います。
 
 小難しい心理学の理屈を持ち出すまでもなく、コミュニケーションには経験や場数が絶対に必要です。だから、たとえ今は「No」が下手でも、自分専用のコツや勘所を獲得するためには、口にしてみて、相手の反応をみて、少しずつ自分専用の正解や手段を作り出していくしかありません。
 
 誰かに好かれたり、誰かを褒めたりする時もそうですが、結局、場数を踏まない限りコミュニケーションは上手くなりません。苦手意識があるからといって避けてまわっていては、絶対に上達しない。だから、「No」が周回遅れな人達には、びくびくしながらでもいいし、自分の観察力や判断力が冴えている時に限ってもいいから「No」を言うための試行錯誤をしていくのがオススメです。
 
 リンク先では、「上司をよく観察して、逆鱗ギリギリのラインを確かめてみる」を紹介しましたが、「No」を言いやすく、また上手に言えるようにするための練習法は他にもたくさんあるでしょう。自分の性格や境遇に即した、それぞれの最適解があるはずです。しかし、まさにそのその最適解を見つけるためにも、やはり「No」を言う方法を一定程度試行錯誤するしかないのだと思いますし、そのような機会は、意識して、積極的に、模索するに値すると思います。
 
 この場合、意識してっていうのが重要なポイントです。どんなに場数を重ねているつもりでも、意識を欠いていれば、経験はあなたの脳味噌を素通りしてしまいます。逆に言うと、へたくそな「No」しか言えない人でも、自分が「No」を言った時の相手の反応の些細な違いを観察し、goodとbetterとbestをしつこく確かめていく人は、失敗からもかなりの経験を稼ぐことができます。何も考えず、何も意識しないぐらいなら、痛い目をみるリスクを負ってまで「No」をトライアンドエラーする値打ちは無いかもしれませんが、そこから何かを拾い上げる意識や意図があるなら、未来の自分のために「No」の経験稼ぎをしてみるのも割に合う話ではないでしょうか。
 
 

良い関係を築くために「No」を磨け

 
 長く付き合っていきたい相手に「No」と言うのは心苦しい部分もあるでしょう。でも、上手く付き合っていきたい相手に「No」が言えないというのも、それはそれで苦々しく、おかしなことではありませんか。今、「No」が上手く言えない人も、長い付き合いを上手に成立させるためには、この厄介なコミュニケーション技能に自分なりのかたちで慣れておく必要はあります。是非、しっかり経験を稼いで、巧みにNo」が言える人に近付いていってください。