シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

私の選ぶベストシューティングゲーム五選

 
 自分が本当に好きなシューティングゲームを五つ選ぶとしたら何を選ぶか?もし、アルファケンタウリ行きの宇宙船に乗るとしたら、どのシューティングゲームを持っていきたいと思うのか?名作と呼ばれるシューティングは数あれど、そのなかからマイベスト五本を選ぶとなると迷ってしまわずにはいられない。だがおそらく、
 
 
・強く入れ込むことの出来る世界観
・初心者でも楽しめるが、やり込めば違う世界がみえてくる難度調整
・やり込みに至るまでのプロセスが過度の苦痛になり過ぎない
・グラフィックやBGMにおいても優れている
・スコアラーの皆さんにはやりこみ無間地獄
 
 といった要素を出来る限り満たしているゲームが選ばれやすいと思われる。そこに、
 
・鮮やかに蘇る記憶
 
 という要素が加わって、一シューターが選ぶベストシューティング五選ということにになるんじゃないかと思う。私の場合は、以下のゲームを選びました。
 
 

怒首領蜂 ドドンパチ

怒首領蜂 ドドンパチ

  • エス・ピー・エス
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 現在の縦スクロールシューティングの主流たる弾幕シューティングへの流れを形作ったのは、BATSUGUN-首領蜂-怒首領蜂のラインだと思われるが、そのなかで完成度やインパクトの面で頭一つ抜けていた作品としては、怒首領蜂を思い出さずにはいられない。弾幕を掻い潜る楽しさを初心者〜初級者にもある程度提供しつつ、二周目攻略を視野に入れるならパターン・アドリブ両面においてきちんとした振る舞いを求められる。弾の数こそ最近のCAVEのシューティングより少なく感じられるものの、弾速と弾筋のバリエーションは豊富で、様々なタイプの避け・パターンを満遍なく設問してきており、しかも二周目の攻撃にも破綻の兆しが殆ど無い。弾幕シューと思われがちだが、低速弾幕以外の様々な特殊攻撃が意外と混入していて、それらを念頭に置きながら弾幕回避を組み立てていくシーンが少なくない。そして今プレイしてみても、二周目五面や火蜂などはきちんと恐ろしく、「簡単なゲームです」とは口が裂けてもいえそうにない。東亜プランの面影を残すデザインや音楽、手ごたえのある難度、そして首領、といったものが相まって、怒首領蜂がリリースされた時の印象はとにかく圧倒的で、二周目を少しづつ攻略していた頃は毎日が驚きと楽しみの連続だった。苦労の果てに2-6ボスを撃破し、初めて火蜂を突きつけられた時の深い絶望と喜びは、忘れることが無いだろう。そして、火蜂といつまでもいつまでも戦い続け、遂に撃破した時の記憶も。
 
 CAVEは新しい弾幕シューをリリースし続けていて、実際にそれらは楽しいわけだけど、その源流に存在する重要な存在にして、常にベストでもあり続ける怒首領蜂。おっさんシューターの思い出に焼きついて離れない怒首領蜂をベストシューティング五選から外すわけにはいかないだろう。
 


 シューティングゲームの楽しみ方・プレイスタイルを、緻密なパターンをパズルのように構築していくスタイルと、比較的ラフでアドリブ避けを含んだスタイルに大別するとするなら、斑鳩は前者に属し、私個人は後者に属する。よってアドリブシューターの私にとって最も不向きなゲームの筈なのだが、強烈な世界観に惹かれて筐体と戯れているうちにすっかりハマってしまってやめられなくなってしまったという経緯がある。斑鳩は、easyやnormalを選んだとしても何らかのパターンづくりが求められるうえに、属性変更という特殊な脳内処理をプレイヤーに強いるため、初心者向けのゲームとは言いにくい。また、スコア稼ぎをしなければ先の面の攻略が困難という意味においても、初心者を突き放しているところがあるかもしれない。しかし、そんな事をガタガタ言わせないだけのメッセージ*1と、創意工夫やパターン開発をすれば確実に上達するという絶妙のつくりによって、必ずしもシューティングが得意ではないプレイヤーや、私のようなアドリブシューターをも巻き込むことに成功したゲームだったと思う。斑鳩は、考えてパターンを作りさえ出来ればスコア効率はともかくとして生存率は確実に向上するゲームだった。このせいか、パターン組みシューティングにも関わらず、筐体が流通していた当時は全国どこに行っても違うパターンで戦っているプレイヤーを見かけることが出来た。パターンを重視せざるを得ないゲームというのは、誰もが比較的似たようなパターンに収斂してしまいやすい。にも関わらず、誰もがオリジナルの様々なパターンで攻略出来ていたという意味では、斑鳩は「プレイヤーの自由度の高いゲーム」であり、パターンシューティングゲームにも関わらずそれを達成した意義には特別のものがあると個人的には感じている。
 
 そういえば、斑鳩というゲームは音楽・グラフィック・演出・弾幕の組み合わせによって独自の世界観の呈示にも成功していたと思う。斑鳩を生み出したトレジャーという会社は、世界観とゲームそのものの統合とゲームとしての完成度を執拗に追求しているようにみえてとても頼もしいが、そのなかで一世を風靡した(そして同じシステムで同レベルの完成度の作品の無い)斑鳩をベストの一本に推薦したい。
 


 雷電は初代のうちからサラリーマンなどを巻き込んで十分にヒットした作品で、以後同系列のコピー作品を数多く生み出す源となったわけだが、雷電DXは同系列の縦スクロールシューティングゲームの集大成とでも言うべきクオリティをもって1994年に登場した。雷電シリーズは比較的低速で沢山の弾幕を掻い潜るタイプのいわゆる“弾幕シュー”ではなく、様々な方向から高速で飛んで来る自機狙い弾の脅威をどう回避するのかを基礎とするシューティングだ。その血筋は雷電IVにまで受け継がれているわけだが、雷電シリーズのなかで最も長い期間最も多くのシューターがプレイした作品は、この雷電DXだろう。ほとんど強迫的と言って良いほどに書き込まれたグラフィックに目を奪われてしまいがちだが、シューティングゲームそのものとしての完成度も極めて高い。難度選択システムやレーダーシステムのお陰で、初心者からスコアラーまでをカバーし*2、上級コースのエキストラステージ攻略や、練習/初級コースのレーダー破壊→上位ステージへの進出など、やりこみたい人がやりこめる要素も多種多様に揃っている。二周目五面などは実際相当に難しく、雷電名物のスナイパー戦車やザコ戦闘機への対処を僅かでも誤ればミスは避けられない。反面、練習コースを普通にプレイするだけなら初心者でも先のほうまで進める配慮が為されていたお陰で、本当に色々な人に愛好されたゲームだった。
 
 雷電タイプの、「ザコが正確かつ高速の弾で自機を殺しにかかってくるタイプのゲーム」はシューティング界隈においてはもはや主流ではなく、2007年の雷電IVも「よくリリースできたなぁ」と驚いたが、比較的低速の弾幕を掻い潜るだけがシューティングゲームの魅力ではない。ザコの一匹一匹が殺気丸出しでプレイヤーを殺しにくるという緊張感を今に伝える雷電シリーズの持っている魅力は捨てがたく、そのなかで完成度が突出している雷電DXをベスト5の一つとして満を持して推薦したい。
 

ダライアス外伝

ダライアス外伝

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 2007年に登場した最新のゲームに比べると、ダライアスのシーフード戦艦や音楽は必ずしも突出したものではないかもしれない。だが、ダライアスシリーズは常に、その時代その時代のグラフィック描画技術・サウンド技術において最高水準のものを提供し続けてきたと思う*3。そのなかでダライアス外伝はおそらく最も広い層に支持され最も多くの筐体が出回った作品と思われ、格闘ゲーム全盛期の当時であってさえ、人だかりをつくることの多いゲームだったと記憶している。ダライアスというと、忘れ難い音楽とそれにあわせてリズミカルに襲ってくるボス達の攻撃・そして群を抜いていたグラフィックetcのコラボレーションに目が向きやすいかもしれないが、純粋なシューティングとしても高い水準の完成度だったと記憶している。ゾーンごとに難度や難しさの質が様々のお陰で、ダライアス外伝は初めてシューティングを触る人にも比較的プレイしやすく仕上がっていた。特に、ウェーブが三段階になった事とボンバーを搭載するようになった事は無視できない変更点で、この変更のお陰で一度死んでも復活しやすくなった。かと言って上級者を退屈させるほど甘いゲームでもなく、すべてのボーナスを逃さず取得しようとすると、ボスの攻撃も道中の難度も激変する造りになっている。無敵バグの発覚によってゲーメスト誌上におけるスコア争いは中止となったものの、個人が自分の腕前を問うには必要十分な題材を提供していると思う。
 
 このゲームを絵柄と音楽に惹きつけられて(格ゲーなどの待ち時間に)プレイし始め、気づいたらクリア出来るようになっていた人は多かったのではないだろうか。私個人は、女性プレイヤーがあっちでもこっちでもクリアーしているシューティング作品を、ダライアス外伝以外は知らない*4。初心者から上級者までをカバーする難度とやり応えを準備し、なおかつゲーム全体の雰囲気や演出を高いレベルで呈示したダライアス外伝を無視することは出来なかった。
 


 スコアを稼ぎ、残機を消耗して難度を調整するというスタイルのとっつきにくさ・オプション操作の面倒臭さ・針弾のみづらさ等等の欠点の数々にも関わらず、現在に至るまで多くのシューターに愛され、名作と呼ばれ続けるバトルガレッガ。奇跡のシューティングゲームとさえ言われた本作は、スコア稼ぎの度合いと難度の上下のマッチングが絶妙で、かなり広いプレイヤーをカバーし得るゲームバランスとして仕上がっていた。だが意外と簡単に攻略できる手法が編み出されたのは発売されてかなり経ってからのことで、一般的には、高い難度のゲームとみなされている。このゲームの攻略には、残機減らしによる難度下げ・スコアによるエクステンド・一部ボスの仕掛けてくるランダム性の混じった攻撃への対応などがどのみち不可避だが、逆にこれらを通してシューティングゲームの攻略についての様々な手法を学び取るにあたって、このゲームは最適の教材だったとも言える。ランク下げやスコア稼ぎを繰り返すことによって確実に上達する感触を与えてくれるという意味では、バトルガレッガは必ずしも厳しい教師の顔をしたゲームではなかったと思う*5。とはいえ、ブラックハートのワインダー攻撃・六面道中・ブラックハート2の攻撃は、このゲームが登場した当時においては常軌を逸した代物で、世界観の整った演出や音楽も相まって、往時のプレイヤーに忘れ難いインパクトを刻み込んだと思う。21世紀のゲームで慣らしたプレイヤーといえど、難度が高い状況下のブラックハート2の発狂攻撃を生き残るのは容易なことでは無い筈だ。
 
 魔法大作戦から続くライジングの血筋は、CAVEの保護のもと、鋳薔薇やむちむちポークという形で継承されており、それらはちゃんと面白く出来ているが、未だバトルガレッガを凌ぐ傑作としての説得力を持った作品は出現していないと私は感じる。計画的な残機調整とスコア稼ぎの調整というプレイスタイルを、スコアラーにはよりストイックに、クリアラーにはよりイージーに体験出来させてくれる本作を、五選の最後に選んでみた。
 
 

多少、懐古の念も込めながら

 
 以上、私が選ぶベストシューティング五選を選んでみた。当然かもしれないが、私が一番シューティングをやりこんだ時期の作品が多い。ただ、今回選んだ五作品はシューティングゲームのサブカテゴリのなかではそれぞれ金字塔を樹立した作品ばかりであり、それぞれのサブカテゴリのなかにおいては他作品より説得力・牽引力の強い作品をピックアップしたつもりではある。もし、私のシューターとしての盛りや好みがほんの少しズレていたら、五選のなかにはグラディウスIIやR-TYPEなどが入っていたかもしれない。その他にも、レイフォース・東方シリーズ・エアーコンバット22・スーパースターソルジャー・エスプガルーダ2など、頭をよぎったゲームは沢山あったけれども、自分にとってのベスト五選であり、且つ他のシューターにも推薦できるゲームということになると、これら五作品がベストという結論に落ち着いた。
 
 今回こうやって振り返ってみるなかで、シューティングというジャンルには思ったよりもたくさんの、方向性も面白みも様々な名作があったんだなと再確認することが出来た。「シューティングゲームは作品数が少ない」とはよく言われるけれど、傑作や名作の類が年に1、2本は大体リリースされている。2007年も、幾つもの会社が精度の高い作品を送り出してきたし、アーケード以外の分野でも東方を筆頭として様々な作品が制作されている。より若い世代がマイベスト5として選ぶようなゲームが、そのなかにはきっと含まれているのだろう。
 
 

*1:特に、誰にでも安楽のうちにクリアーできてしまうゲームばかりが氾濫している状況への疑問符や、努力や創意工夫を乗り越えてゲームが上達していく際にみえてくる風景についてのメッセージ、など

*2:ただし、アイテム取得形式には古くて融通の利かないところは感じられ、最近のゲームから入っていった人には不親切なシステムと感じられるかもしれない。だが、アイテム取得を巡る駆け引きとパターンづくりが極めて重要なのも雷電シリーズでもあるので、それはそれで魅力の一つかもしれない。納豆の粘りのようなものだと私は認識している

*3:なお、コナミのグラディウスもそうだと推測されるが、不幸なことに私はグラディウスシリーズに何故か縁が無く、STG5選の有力候補になるであろうグラディウスIIについての思い出が無かったりする。

*4:除:東方シリーズ

*5:そういう努力を怠るプレイヤーには、六面七面で鬼の形相をみせるのだが...