シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

今からプロブロガーなんて目指したら不自由になりませんか?

 
www.airdays.net
 
 自由を手に入れるためにプロブロガーを目指す、ですって?
 
 またまたご冗談を、プロブロガーが自由だなんて、一体どこでどういう風にインターネットを眺めていたらそういう発想が出てくるんでしょうか?
 
 ここ最近、プロブロガーなる、よくわからない肩書きを名乗っているインターネットアカウントを見かけますが、彼らは、本当に自由なんでしょうかね?
 
 “プロ”ブロガーと言うからには、ブログを本職とし、それで生計を立てて生きていくわけですよね。つまり金銭収入のための労働手段としてブログの執筆(や周辺活動)に勤めるのがプロブロガーということになります。
 
 プロに自由なんてあるんですかぁ?
 
 リンク先の大学生さんは、

 僕自身文章を書いたり、こうやって世に発信する事は嫌いではなく、もしもそれだけで生計を立てられるのであれば、これ程自由な生活は無いなと考えるようになりました。

 
 と書いておられます。
 
 私はそう思いません。
 
 「生計を立てる」などというスケールの小さい意識のもと、カネに汲々としながら活動するすべては不自由ですよ。それは、プロブロガーもサラリーマンも小説家もアイドルタレントもたぶん同じ。
 
 カネを稼ぐ・生計を立てる、そういう意識を持ちながら活動している限り、あなたは必ずカネの顔色をうかがいながら生きていくことになるでしょう。
 
 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、
 

そこで、一年間で「月50万円稼ぐブログ」を育てあげたいと思います。

 
 こういう事を堂々と書いて憚らない程度には、あなたは既に“プロ”ブロガーとしての宿痾に囚われているんですよ。これじゃあ、サラリーマンとどこが違うというのですか。
 
 まさか、「自由業だから」「既存のワークスタイルに比べて新しい響きがあるから」プロブロガーが自由だなんて、思っちゃあいないでしょうね?
 
 それともあなたの目には、プロブロガーを名乗っている人達の活動っぷりが、たとえばサラリーマンなどに比べて自由にみえる、というのでしょうか。
 
 私には、プロブロガーを名乗っている人達や、プロブロガーを目指して活動している人達が、あんまり自由にみえません。もし、あれで自由だというのなら、テレビタレントも、サラリーマンも、自衛隊員も、やはり自由ではないかと思いますよ。少なくともプロブロガーたるために必死な人達の、必死なあがきをみていると、およそ、自由にブログを書いている・生きているという風にはみえません。
 
 あるいは、リンク先の大学生さんは、ごく単純に「他人に指図されない生き方=自由」とお考えなのかもしれません。しかしプロブロガーとして本当に生計を立てていくためには、他人に気を遣い、カネに気を遣い、読者に気を遣うわけですから、人の間で生きていく不自由さは小さくはならないはずです。
 
 もちろん、そういう人の間で生きていく不自由さってのは、要領の良さやコミュニケーション能力や才能によって減らせなくもありません。でも、これは職業選択とはあまり関係の無い話で、その不自由さに悩まされないサラリーマンもいれば、その不自由さに苦しみぬいている自営業者だっているわけです。
 
 本末転倒を承知のうえで申し上げると、もし自由なプロブロガーになりたいっていうなら、本当に必要なのは、カネや生計のことを気にしないで済むような“境遇”ではないでしょうか。そういう“境遇”があるならカネの顔色を窺わなくて済みますし、他人に気を遣う必要性も軽くできます。
 
 でも、カネの話を繰り返しているプロブロガー志望の人達は、明らかにカネに対する執着がどぎついわけですから、きっとカネや生計を意識しなくて済む“境遇”からは遠いのでしょう。
 
 カネに繰り返し言及して、カネに対する執着を丸出しにしている人ってのは、その時点で、間違いなく不自由なんです。カネに心を奪われているということは、あなたのご主人様はカネです。カネに縛られ、カネの顔色を窺って生きていかなければならない可能性が高いと言えるでしょう。そして、そういう人は見る人が見ればすぐに見抜いてしまいますから、足元を見られて、やりたい事をやるよりもやらなければならない事をやらされてしまいます。
 
 だから、へたなサラリーマンよりもハードで覚悟の要る生き方ですよ、プロブロガーとやらは。そのようなライフスタイルの上に「自由」などという耳触りの良い言葉を据え置くのは、なかなか呑気なことだと私は思います。それと、いささか時機を逸しているのではないかと*1
 
 ここはひとつ、プロブロガーなんて目指さず名乗らず、副業ブロガー的な意識でブログに取り組まれてはいかがでしょうか。そうやって、副業的にブログを書きながら腕を磨いている人は少なくありませんし、むしろそういうブロガーのほうが、カネに束縛されず伸び伸びと才能を伸ばしているように私にはみえます。
 
 カネを欲しがり、収入の一環としてブログを運営すること自体は悪いことではありません。だからといって、カネのみに囚われて他にやりたい事も無いままプロブロガーを目指すのは危険です。ほかにすることはないのでしょうか。
 

*1:かりにプロブロガーを目指すなら、せめて二年前に旗上げすべきだった