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「新型うつ」は若者のわがままか? / 井出草平 / 社会学 | SYNODOS -シノドス-
『SYNODOS』というウェブメディアがある。
「アカデミックジャーナリズム」を名乗り、実際、信頼性の高い筆者と記事を擁している。このSYNODOSに、社会学者の井出草平さんが「新型うつ」批判する記事を投稿していたのを、先日見つけて読んだ。きちんと知りたい人はリンク先を読んでいただくとして、私なりに要点を箇条書きにしてみると、
・「新型うつ」は2007年頃から精神科医の香山リカさんがメディア上で使いはじめ、正式な病名ではないにもかかわらず広まっていった。
・うつ病の一般的言説では、従来型のうつ病は生真面目な人がなりやすいもの、「新型うつ」はわがままで不真面目な人がなりやすいもの、と語られやすい。
・だが、「新型うつ」でみられる特徴、たとえば気分反応性などはうつ病でよくみられるもので、「新型うつ」もれっきとしたうつ病である。
・「新型うつ」は、若者叩きの道具としてしばしば用いられる。都合の悪い社員の首を切る道具になってしまいやすい。
・「新型うつ」には科学的根拠はないが、専門家のお墨付きを与えられて一人歩きしている。
・「新型うつ」を口にしているのは、科学的エビデンスを考慮しない専門家、古い精神医学を修めている専門家、英語を読めない専門家である。
・DSM*1が登場したにもかかわらず、それについていけない精神科医が、古い考え方のうつ病概念と照らし合わせて「新型うつ」という言葉を作り出した。
・「「従来型うつ」は治りやすくて「新型うつ」は治りにくい」はウソである。むしろ「従来型うつ」の予後は良いと言えない。
・うつ病の長期予後は楽観できるものではない。この数十年で研究が飛躍的に進歩しているのだから、専門家はもっと勉強しろ!
・「新型うつ」を解雇の材料にしている産業医は、そんなことやめろ。
といったものになる。
論旨としては、最新の診断技法を学ばず「新型うつ」という言葉を一人歩きさせている精神科医は態度を改めろ、そして「新型うつ」という言葉を一人歩きさせるな、となるだろうか。
*1:アメリカ精神医学会が統計的根拠にもとづいて編纂している診断と統計のマニュアル。おおむね最新のマニュアルと考えて構わない。