シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

【スプラトゥーン2】サブアカを作ったらサブアカ部屋に隔離された

 

Splatoon 2 (スプラトゥーン2) - Switch

Splatoon 2 (スプラトゥーン2) - Switch

 
 
 もうすぐ発売から一周年を迎える『スプラトゥーン2』。最近、この『スプラトゥーン2』でサブアカウント(略してサブアカ)を作ってみたところ、任天堂の工夫というか、ゲームシステムにびっくりさせられた。
 
 
1.「サブアカ作って無双してやんよ」
 
 私は『スプラトゥーン2』が好きだ。とりわけ好きなのはガチマッチだ。おじさんの私が、たぶん高齢者向きの武器と思われる”もみじシューター”を手にとって、若いプレイヤーに立ち向かうのである。
 
 

 
 
 それでも10カ月の修練はゲーム慣れさせてくれるというか、だいぶいいところまで辿り着けるようになった。『スプラトゥーン2』のランキングの頂点である「X」には届かないものの、そのひとつ下の「S+」には無理なく辿り着ける。酸っぱい臭いのする加齢臭を放ちながら若い衆相手にガチマッチを挑むのは、中年ゲーマー冥利に尽きる。
 
 反面、アカウント全体のランク付けが自分の腕前ギリギリまで上がってしまったせいで、苦手な武器でガチマッチを練習しづらくなってしまった。苦手な武器で、もう少し低ランクのプレイヤーと戦ってみたい。ついでに、ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ……「C」ランクや「B」ランクのプレイヤー相手に無双してみたい。
 
 そのための一番手っ取り早い方法は、サブアカを作って一からやり直すことだ。
 
 少なくとも最初のうちは、そのように思っていた。
 
 
2.「このサブアカはおかしい」
 
 サブアカをつくり、さっそく苦手武器の練習でも始めてみるか! と意気込んでガチマッチを始めてみると、どうも様子がおかしい。
 
 一番低いランクとされる「C-」のはずなのに、初心者らしい動きをするプレイヤーが少ししかいない。右往左往している初心者は全体の3割ぐらいで、残りはガチマッチ経験者っぽい動きをしている。
 
 最初の2~3回ぐらいは、その3割くらいの初心者が足を引っ張っているチームが負けるかたちで進行していた。ところが4回目あたりからいよいよ様子がおかしくなった。初心者がいない。どこにもいない。「C-」とは名ばかりの戦場でヒイヒイ言わされるようになってきた。
 
 
 チャージャーという武器は、初心者が正確に狙撃できるものではない。
 ホコを中央に戻すための自殺は、ルールを理解している者ならではの挙動だ。
 N-ZAPの間合いも、ある程度の経験がなければ使いこなせないだろう。
 
 

 
 
 そう、ここには初心者はいないのである。十分に慣れたプレイヤーだけで構成された「C-」の戦場がそこにはあった。ひょっとして、いつも遊んでいる「A+」~「S+」ランクのプレイヤーとほとんど変わらないのではないか。
 
 この時点で、このサブアカに家族も興味を持つようになり、子どもは"スプラローラー"を、嫁さんは"スプラチャージャー"を持ち寄って遊びはじめた。家族の感想も同じだった。「このサブアカは絶対におかしい」。
 
 
3.「本アカウントよりもガチパワーが高いサブアカ」
 
 昔、私が初心者だった頃は、初心者の群れのなかに2~3人の上手いプレイヤーが混じっていて、「うわあ、サブアカが無双してやがるよ」と思わされることがよくあった。ところがこのサブアカの場合、上手いプレイヤーが混じっている……なんてレベルではなく、初心者が全くいない。ひょっとして、『スプラトゥーン2』の内部サーバのほうで「こいつらは熟練プレイヤーのサブアカ」と判定されて、初心者のいない場所に隔離されてしまっているのではないか?
 
 そのような疑問は、やがて現実のものになった。
 
 

 
 
 「C-」ランクから飛び級で「B」になってみると、なんと、ガチパワーが1820と表示されている。
 
 ガチパワーは、『スプラトゥーン2』のプレイヤースキルの目安となる数字で、これに基づいてプレイヤー同士のマッチングが行われている。初心者のガチパワーはだいたい1000~1200ぐらいで、最上級のプレイヤーでは2100以上になるとされている。ちなみに私の本アカウントのガチパワーは、だいたい1650~1800ぐらいなので、サブアカのほうが本アカウントよりもガチパワーが高いことになる。
 
 やっと理解できた。
 
 『スプラトゥーン2』のガチバトルは、「C」「B」「A」「S」「X」という表向きのランキングはそれほど重要ではなく、ガチパワーによる振り分けのほうが重要だったのだ。このゲームは、連勝し続けるとガチパワーがたちまち上がっていく。だから初心者の混じっている戦場で3連勝ほどすると、初心者のいない部屋に隔離されるようになっているわけか。
 
 ときどきネットで耳にした、「上級者がサブアカで初心者相手に無双」なんていうのは、もともと全てのランクで無双できるほどの剛の者か、途中でわざと連敗するかしない限り、まず起こらないものだと知った。
 
 

 
 その後も遊び続けているうちに、ついにガチパワーは1900を越えるようになった。『スプラトゥーン2』は、自分よりも腕前の低い相手の動きが手に取るようにわかるゲームで、自分よりも腕前の高い相手の動きがぜんぜんわからないゲームでもある。で、ここに来て、周りのプレイヤーの動きがさっぱりわからなくなってしまった。数連敗してガチパワーは1800に戻った。その間、きっと味方の足を引っ張っていたと思う。すまない。
 
 
4.想像以上に任天堂はいい仕事をしていた
 
 これまで私は、『スプラトゥーン2』の対戦マッチングには不満を持っていた。やたらと弱いメンバーとチームになるとか、どう考えても「S」クラスや「X」クラスのサブアカとしか思えないプレイヤーに無双されるだとか、そういう経験が何度もあったからだ。
 
 しかし自分でサブアカを作ってみて考えが変わった。
 
 本当は、対戦マッチングのシステムはそれなり機能していた。最初しばらくは無双できるとしても、連勝し、ガチパワーが上がれば初心者のいない部屋に隔離されて、初心者の迷惑になることはなくなる。そうやって経験者のサブアカを初心者から遠ざけて、それぞれのガチパワーごとにふるいわけることによって、そのプレイヤーの実力にみあった対戦が続けられるように設計されていたのだ。
 
 今回のサブアカの件も、「低ランクの相手に苦手武器で練習したい」「格下相手に無双したい」などというやましい欲求がいけなかっただけだと言える。「C」や「B」といったランクのうちに、事実上「A」や「S」に相当するプレイヤーと対戦させてくれるのは、マッチングシステムがよくできているからに他ならない。
 
 この一件で、『スプラトゥーン2』のマッチングシステムについて文句を言うのをやめることにした。もし、マッチングシステムに不満がある人は、サブアカを作ってみるといいかもしれない。マッチングシステムの見え方が変わると思う。